再会
深夜いつも通りジャンヌにこってり絞られた後にそれに気付いた。
脱ぎ捨てたジャージのベルトが薄ら光っている。
今までこんなことあったようななかったような?
あんまりマジマジ見たことがなかったから今までどうだったか覚えていない。
発信器が点滅を繰り返すのをウトウトしながら見ているウチに眠りに就いた。
身体を揺すられ起きたのは早朝だった。
「マナ、当主がお呼びです」
急げよって感じのそこそこ緊迫した表情のジャンヌを見て急ぎ屋敷に向う。
顔洗って、歯は磨いたけどね。
屋敷に着くなり慌てた当主が詰め寄ってきた。
「すまぬ、マナウタ殿!緊急事態だ」
ここまで慌てた当主を見たのは初めてな気がする。
「何があったのですか?」
「西の砦で正体不明の何者かが観測された」
「何者か・・・ってモンスターでは?」
「いや、それが今まで見たこともないようなものでな」
「といいますと?」
「人間の様に腕を持ち、身体は金属のような光沢を放っているという。襲ってきたモンスター達をその・・・マナウタ殿のあの武器のような轟音を立て蹂躙しているとか」
何ソレ怖い。
「当主!!」
「なんだね。すまんが今大事な話が・・・」
走ってきたメイドさんに顔をしかめながら押しとどめようとするも、メイドさんは構わず話を続けた。
「砦から電報です!!」
「何!?すまんマナウタ殿、少し待ってくれ」
「・・・ええ」
急激に緊迫する空気。
手紙を速読する当主をなんとなしにボへーっと見ていると当主がこっちをカッと見た。
「マナウタ殿・・・ミチナギという名を知っているかね?」
「へ!?」
「知っているのか?」
「いや、知っていますが・・・何でその名前が」
出てくるんだ?
「先ほどの正体不明の何者かだが・・・あぁ、よく分からんがそのまま読む。金属の身体が上に開くように開き、男が一人出て来た。男は砦の前で“ミカギマナウタという名を知らないか!?私はミチナギ!!彼を探している!!”と叫んだそうだ。混乱した衛兵はひとまずその男の身柄を抑えたそうだが・・・どうした、マナウタ殿」
「親父・・・」
「なに?」
「それ・・・俺の親父です」
愛馬バイアリータークに跨がり、砦に向って馬をかっ飛ばす。
ジャンヌもマレンゴに騎乗して後ろを着いて来ている。
馬車でゆったり走れば2日かかる道のりも、飛ばせば1日で着く。
夕方頃には到着するだろう。
何でこの場所が分かったのかと間抜けなことが一瞬頭をよぎった。
ヒントは昨日の夜にあったよね。
手抜きの昼飯を馬の上で胃に放り込み、馬を進める。
ジャンヌも空気を読んだのか不満は言わない。
結局食わずにいくつか残っていたカロリーバーのチョコ味だったからかもしれないが。
息切れする馬に申し訳なさを感じながら砦に辿り着いたのは日も沈んだ時刻だった。
「お待ちしておりました。こちらへ」
当主が電報を飛ばしてくれていたので連絡は先に着いていたらしい。
迎えに来てくれた衛兵に導かれるまま足早に向った先。
開かれた扉の先にいたのは、間違いなく親父だった。
「・・・親父」
「愛詩!!」
荒々しい抱擁が身を包む。
その感触が、これは夢じゃないって教えてくれて、気がつくと涙が頬を流れた。
「よく・・・よく無事で・・・」
「ああ・・・親父・・・」
傍から見るとこの光景はどうなんだろう。
ムサイ男が2人泣きながら抱き合ってる。
ま、いいや。
今はこのままでいい。
互いに落ち着いて用意された部屋で改めて対面する。
「それで・・・そちらの女性は?」
「彼女はジャンヌ。簡単に言うと未来の俺の嫁」
「ほお・・・」
立ち上がって頭をジャンヌに下げる親父。
「息子がお世話になっております」
「いえ、こちらこそ・・・」
挨拶って大事だ。
「しかし、こっちで嫁さんつくるとは・・・」
「色々考えることはあるけど、戻るときは連れて行くから」
「あー、俺は構わんが・・・良いのか?その、親御さんとか」
「その辺りはあんまり明るい話じゃないから触れないでくれ。いや、ちゃんと筋は通すよ」
「ふむ・・・まあ、いいさ。相談くらいには乗ってやる。」
「ありがと。それで親父・・・そういえば親父がここに来たときエラい騒ぎになってたんだが、何したんだ?」
「ああ・・・それがな」
見せた方が早いというので、衛兵の許可を貰い外に出る。
「なんか、妙にお前気を使われてないか?」
「一応この国ではそれなりの重要人物なんだよ、俺」
「ん?なんか実は高貴な血筋だったりしたのか?」
「いや、そう言うんじゃなくて・・・あー、それも見て貰えば分かるよ」
「???」
釈然としてない気持ちは分かるが、今の状況を口で説明するのは難しい。
「時間があるなら明日にでも案内するさ。直ぐに戻って帰らなきゃって訳じゃないだろ?」
「ああ・・・ってよく分かったな?」
「折角ゲートを開けたなら、当初の目的も果たしていくだろうからね」
「お前、なんか大人になったか?」
「なんじゃそりゃ?」
たわいもない話をしながら外に出て、直ぐに騒ぎになっていた理由に察しが付いた。
「なんだこれ・・・」
「コンパクトトラックローダーを改造してアームを武装したアームローダーだ」
「いやアームローダーだ、じゃねえよ!・・・よくこんなもんつくったな」
「開発には大分苦労したよ」
「いや、そっちじゃなくて・・・よく許可が通ったなと」
「・・・」
「おい、親父・・・なんで目を逸らした?」
「愛詩、大人になると時に大きな選択肢を迫られることがある」
「分かった。許可通ってねえんだな?」
「いや、お前を助けに行くのにそれなりの武装は必要でだ・・・」
「OK。うん大丈夫」
まあ、実際生身で来られたら来られたで心配ではあるし。
「これでここまで乗り込んだらそりゃ騒ぎになるわな・・・寧ろよく攻撃されなかったな」
「扉開けて白旗振って近づいたからな。話が分かる兵隊さんで助かった」
「そーいう問題かな・・・つかこの赤いの返り血か?」
「ああ、来るときデカいトカゲやら熊やらに襲われてな。撃ちながら来たから大分汚れたみたいだな」
「トカゲってあの恐竜擬きか」
「擬きって言うかまんま恐竜だろあれは?」
「つか、どの辺りにゲート開けたんだよ?」
想像が付かんわけではないが・・・恐竜のいるところなんぞ限られてるし。
「あの山の麓ら辺だな」
親父は予想通り大陸中央のデカい山を指さす。
魔峰セントルシフ。
そして親父が指を指した直後、魔峰は天を衝かんばかりに炎を吹き上げた。
「な、なんだ!?」
「セントルシフが火を!?」
「何が起きている!?こんなこと今まで見たこともないぞ!!」
「落ち着け!!王都に連絡を!!」
慌てふためき混乱する兵隊達。
慌ただしく動く周囲を見ながらとりあえず聞かなきゃいけないことを聞いた。
「なあ、親父・・・本当に何しやがった?」




