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真なる王

魔峰セントルシフの頂上に登ると、真下に続く空洞と螺旋階段が見える。


イントゥヘル草原、ラウンドベルの森の魔物を打ち倒し、セントルシフのドラゴン達を突破して誰が建設したのか。


そしてその階段を降りた先。


この大陸でもっとも高き魔峰セントルシフより、最も低き場所に下ったそこに、それはあった。


「もうすぐね・・・」


そしてそれを見守る者も。


「今まで只暴れることしか出来なかった哀れなる者よ・・・その束縛より放たれるときが来ましたわ。」


彼女の名はトゥーリア。


古代人を名乗り、リチャードと共にエンシェントに在った者。


「さあ、産声を上げなさい・・・」


その声に従うかのようにそれは動き始めた。


始めは少し揺れただけだった。


そしてその揺れは少しずつ大きくなり、そして・・・ひび割れた。


そう、それは卵だった。


黒く大きく、人よりも大きな卵。


「そして飛び立つのよ・・・大魔竜・・・。」


欠片が落ちた。


その屋には赤く輝く瞳があった。


「あと2,3ヶ月というところかしら・・・それまでにあと一つの鍵を手に入れるとしましょう・・・」


そう言葉を残し、トゥーリアは姿を消した。


◇◆◇◆◇


「それで、要件はなんだ?」


殺気すら感じるその言葉に肩をすくめる。


イサギリ工業CEOであり三鍵道薙の友人でもある伊佐霧は、それでも臆することない。


この男はいつもそうだと知っているから。


何かに集中すると途端に周りが見えなくなる。


その頭脳を認めながら、その手腕を評しながら、主任などと言う地位に置いているのはその為だ。


「友人と飲みたくなったから誘った。それだけだ」


「俺にそんな暇は・・・」


「あるだろ?」


「な!?」


「いや、時間を作らなきゃならない。お前の息子を迎えに行く前に、お前の身体が壊れることを防ぐ時間を」


「だが!!」


「休め、道薙・・・そのときは必ず来るんだ。・・・働いているのはお前だけじゃない。お前が1日2日休んだところで会社は廻る」


「・・・」


「気持ちが分かるとは言わんよ。だが、それでもお前が間違えているのはわかる」


「俺が何を間違えている!?」


「息子を想う余り、また周りが見えていない」


「俺に何を見ろと言うんだ!!」


「いつものお前なら気付く。だが、お前は今気にすらしていない」


「だから何を・・・」


「裏がとれた」


「裏?」


「ああ・・・抗体拘束による世界再編実証」


「・・・おい・・・それは・・・」


「流石に少しは冷静になったな。」


「ああ・・・」


暫く無言で飲み交わす2人の男。


だがそれは只酒を楽しむ時間ではない。


雁字搦めに固まった道薙の思考を解きほぐす時間だ。


「・・・誰だ?」


「お前はそうやって考えれば、直ぐ応えに辿り着く」


「茶化すなよ」


「怒るな・・・まだ分かっていないさ・・・そこまではな」


「そうか・・・しかしよくわかったな」


「また周りを見ていない・・・重傷だな」


そう言われて酒をあおる道薙。


自分でもわかっていると言わんばかりだ。


「フッ・・・証明はお前の息子だ。道薙・・・あの母子がそのキーだった」


「・・・そうか・・・」


「驚かないのか?」


「言われればその通りだからな・・・」


「やっぱりお前は頭が良い」


「茶化すなと言っている」


「わかったよ・・・で、お前は?」


「わかっているさ・・・それでも行くんだ。」


「そうか・・・ならば止めはせんが・・・ただし」


「休むさ」


「フッ・・・やっぱりお前は頭が良い」


「うるせ」


「そして気が短い・・・まあいい。矛盾するようだが、だったら急げよ。気付かれぬように、静かに急げ。おそらく奴等は・・・」


「ああ、俺達を見ている」


◇◆◇◆◇


「何故貴様がここに来た!?」


天帝ネロの悲痛な叫びに、しかし応える者はいない。


まるでいつぞやの再現の如く部下達は気を失い、天帝を護る者はいなかった。


その状況を作り出したのはトゥーリア。


突如として現れ、城内にいる天帝以外の全ての者の意識を奪った。


「貴様の望むとおり兵なら退かせたであろう!!」


「実は・・・恥ずかしながら失敗を致しまして」


「失敗だと!?」


「ええ、目をかけていた者が思いの他無能でしてね・・・ノースガブリの攻略には失敗しました」


その言葉にしかし天帝はあざけることなど出来なかった。


では、この女はなぜここに来たのか。


それが分かってしまったからだ。


帝国を治めるべく英才教育を受けてきた天帝は、不幸にも優秀であるが故に、この先に怒ることを予見し、しかしそこから逃れる術を持ち得なかった。


王の「威圧」が効かぬ者。


その者にとって王など只、威張り散らしているだけの滑稽な存在に過ぎないと分かってしまったが故に。


「そこで・・・僭越ながら天帝ネロ様。貴方にはもう一つご協力頂きたいことが・・・」


「それは・・・それは何だ!?」


分かっていないわけではない。


時間稼ぎにならぬことも知っている。


それでも叫ばずにはいられなかった。


「ワタクシめに・・・この国をお譲り頂きたく」


「ふざけるな!!」


その言葉の瞬間に、床に伏せる一人の男に何かが衝き立った。


例えるなら闇の槍。


そんな実体のない何かが。


「貴様!!何を!?」


男の手から飛んでいく聖剣。


それは、男が生を終えたことを意味する。


「元々国家の聖剣は3振り。構いはしないでしょう?」


死んだ男の名はアモン。


柳葉刀型のⅦの聖剣、ギャラクシーを持ち出し、帝国に亡命したサウスラファの聖剣士だ。


帝国の聖剣士を狙わなかったのは偶然か、何かメッセージがあるのか。


今の天帝にはわかり得なかったし、それどころでもなかった。


「そのときが来たら・・・またお会いしましょう。」


またも薄れる意識の中、天帝は最後の気力を振り絞り言葉を発した。


「・・・そのとき・・・とは?」


「我が真なる王の降り立つとき・・・」


意識を失った天帝の前で、トゥーリアは独り天を仰ぐ。


まるで待ち人が来るのを待つ乙女のように。


「貴方様のいらっしゃる時を、ワタクシは只お待ちしております・・・」


そして前を見据えたトゥーリアの輝く瞳には、リチャードすら見たことのない強烈な意思が宿っていた。


「さて、貴方はどう動くのかしら・・・ねえ、ロビン?」


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名前   = トゥーリア

所属   = 日本

爵位   = なし

天職   = 監視者

先天技能 = 操影 幻影 転影

後天技能 = なし

罪状   = なし

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3章完。

次回更新は来週を予定しています。

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