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セラフィム

足痛え・・・あー、足痛え・・・。


セラフィム侯爵領に辿り着いた2日目の夕暮れ。


今なら24時間走って泣く人の気持ちが分かる。


テレビを見る度、「なんで泣いてるんだ?」とか思っててごめんなさい。


これは泣ける。


まじで痛えもん。


あれから恐竜・・・じゃなくてドラゴンに10体ほど出会ったがぶっちゃけ歩く方がキツイ。


つか誰だ?ドラゴン10体とか言った奴?


確かに少なくともとは言ってたが。


おかげで弾丸も大分減ってしまった。


残り80発。


多くない?とか思うなかれ。


99個格納できるなら99個ないと不安な気持ち・・・君なら分かるだろ?フッ・・・。


「マナ、何を気持ち悪い一人語りをしてるのですか?」


ただの現実逃避です。




隠密行動、何ソレ美味しいの?と言わんばかりに銃で轟音ならしながら突き進み、辿り着いたセラフィム侯爵家。


「あれは・・・。」


エヴァラールさんの顔が絶望に歪む。


誰かが指揮を摂っているというのはあながち本当かもしれない。


それ位セラフィム侯爵家は万全の防衛で固められていた。


皆みたいに目が良くない俺もボウガンのスコープで覗き見たが、まあ、どうしましょ。


屋敷内を首長竜。


屋敷の外を鰐顔とティラノちゃん。


更に上空をケツドラゴンが遠慮なく飛んでいる。


もうすぐ夜だ。


眠ってくれないだろうか・・・。


「期待すべきではないですね。」


・・・ですよね。


「それで如何致します?マナウタ殿?」


「考えますので少々お待ちを、セラ・・・じゃなくてエヴェラールさん。」


何故かここに来るまでに言葉遣いがどんどん変わっていったエヴェラールさん。


途中からやたらと言うこと聞くようになって今では立派な指示待ち人間だ。


ちょっとは働いて欲しい。


一応最初は礼儀を考えてセラフィム卿と呼んだら、エヴェラールと呼んで欲しいと言われた。


心の中ではそう呼んでいたので楽でいいが、最初の高慢ちきなキャラが薄れて逆にどう扱って良いのか分からない。


まあ、聞かれた以上なんか考えなきゃ。


あ、これ親父が言ってた日本人の悪いクセかも。


お願いされると得もないのにやらなきゃって思っちゃう。


こう考える人ほど、能力があっても金運から見放されるんだと言われたことがあった。


俺も望んだかは別として、社長である。


気をつけなければ。


おっと、脱線した。


とはいえ、今は思考放棄するときではないだろう。


ひとまず・・・。


「エヴェラールさん、あの家って大事?」


「え?」




投石機。


狩人の唯一の戦闘技能と言ってもいい狙撃スキルをガッチリ無視してくれるアバズレ大砲である。


狙撃の技能は無意識に風や矢の奇跡を計算し、狙いに対して補正をかけてくれる技能なのだが。


それは「矢を放つ瞬間」に発動する。


よって投石機のように発射の為にレバーを倒した後、テコがグイーンと石を投げる間に風の向きや強さが変わると、狙いが外れるのである。


バルバラはそのおかげでめっちゃ右に花火をぶっ放した。


とはいえ、今は無風。


放つ前の狙いが逸れる要素があんまりない。


エヴェラールさんへの質問の意図はお分かりであろう。


つまり、侯爵家に花火撃っちゃおうぜってわけである。


ちなみに矢作りに現れた花火の名前は「インフェルノ」。


なんか恥ずかしくて言葉に出来ない。


思春期の少年のようなことを言っている場合ではない。


ここまで15体のドラゴンを撃ち殺した。


・ティラノドラゴンの死体 ✕7

・ケツァコアトロスの死体 ✕4

・スピノドラゴンの死体  ✕4


以上が戦果だ。


過去の実績で考えるならスピノはよくわからんが725個は手に入りそう。


もう素材より安全策をとりたい。


つか冷静に考えて、なぜ優先順位最下位のドラゴン素材集めに俺は命をかけてるのか。


途中で疑問に思ってしまった。


というわけで、ドカンと行きます。


まあ、前回おもくそぶっ飛ばしたせいでどの程度の威力があるのか分かっちゃいないが。


あの防衛網の一角に穴開けて、できればドラゴンの何体かが逃げ出してくれたら嬉しい。


「マナ、準備は?」


「ばっちりだ。」


設置良し、高度よし、風向き・・・ないからよし。


「撃ったら逃げるぞー。」


「分かりました。」


「分散作戦ですか・・・確かに、この場合最も有効な手段ですね。」


「神の雷と称される貴殿の力、是非見せて頂きたい。」


神の雷・・・インフェルノの方がまだマシだと思う。


ま、いいや。


いっきまーす。


・・・


放った樽爆弾は狙い通り侯爵家中央へ。


ドゴーーーーーーーーン!!と景気よく爆破し、吹き上がる赤い火柱が天まで衝き上げる。


「え?」


「これ程の威力があったとは・・・。」


「セウスモドラゴンが・・・壊滅・・・。」


「これが神の雷・・・。」


炎が一瞬で収まり、スコープを覗くと、侯爵家があった場所には何もなく、代わりにでっかいクレーターがあった。


驚きの声を上げる聖剣士3人を構ってられない。


・・・うっそ。


前に撃ったときは距離が遠くてわからんかったが・・・。


てゆーか、俺がいつも撃ってる銃のたかだか30倍の火薬ですが?


計算合わなくない?


計算の仕方知らなんけど。


屋敷の庭に陣取ってた首長竜全滅しましたよ?


ま、異世界だからいいのかな?ハハハ・・・。


・・・落ち着こう。


これ封印。


絶対封印。


「へえ、めっちゃ綺麗に火が上がるじゃん」とか思っていた過去の俺を殴りたい。


流石に分かる。


これアカン奴だ。


・・・いや、そうじゃない。


今はそれどころではない。


まだ終わったわけではない。


屋敷の周りや上空にはまだまだ恐竜が・・・あ、逃げた。


恐竜達が我に帰ったように皆逃げ出した。


これは・・・終わったということでいいのだろうか?


ふむ・・・。


どうして良いか分からない。


考えてたらクレーター・・・じゃなくて侯爵領から何か飛んで来た。


人間?


飛ぶ人間・・・うんラスボスっぽい。


「キサマ・・・キサマは・・・!!なぜキサマがここにいる!?」


超怒ってる。


超怖い。


「ナズウェ!?」


まだ何か喋ってたけどひとまず撃つ。


だって怖いもん。


ラスボスっぽいもん。


これも親父の教えのたまものだ。


子供のころお化けが怖くてトイレに行けなかった俺に、


「相手が何であれ自分を害する者なら逃げろ。逃げられないなら必死に拳を振れ」って。


あ、拳じゃなくて銃だった。


良いのだろうか?


一応、人型なので殺すのに躊躇して右肩に当てたけど。


右肩から先が吹き飛んで、結構な高さから落ちたから死んだかもしんない。


やべえ。


「マナ、今のは?」


「マナウタ殿?」


「一体何者だ?」


知らんがな。


・・・撃っちゃったもの。




作戦はよくわからん内に終了した。


撃ったあとで怖くなって、夜通し一応飛んでた男を捜したんだけど見つからず。


見つからないなら生きてんじゃね?って自分を慰めてるところに、自分の家の様子を見に行ったエヴェラールさんが戻って来て合流。


そのタイミングを見計らったように手紙を持った鳥が飛んで来た。


郵便屋の操鳥だ。


「モンスターが撤退した・・・。」


カタリナ王女が手紙の内容を読んだ途端、エヴェラールさん号泣。


泣いてる理由がモンスターが撤退したからか、屋敷がクレーターに変わったからかは訊けなかった。

明後日の更新はお休みを頂きます。

スイマセン。

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