視線の先に
王国を出て2週間。
カタリナとかいう女の人に会った。
ふらふらで声が枯れていた。
二日酔いかな?
ヴェロキちゃんが襲ってきてたのにフラフラしながら剣抜いて構えてた。
余りの足取りの危うさに援護したんだけど・・・エラい目に遭った。
身体が痛いから、はじめまして的な挨拶はジャンヌに丸投げ。
「聖剣ヴィーナス・・・ノースガブリの聖剣士、カタリナ王女様?」
何か偉そうな人っぽい。
そんな人が何をこんなところを浮浪者みたいにウロウロしてるんだろう。
「社長、彼女を・・・どうか・・・。」
セシリアさん知り合い?
カタリナ王女さんを座らせ、食事をつくる。
二日酔いじゃなく、結構ガチ目に衰弱してたらしい。
セシリアさんの知り合いってんじゃ放っとくわけにもいかんしね。
今日はちと早いが場所を見つけてさっさと野営しよう。
色々聞き取りした方が良いんだろうけど、飯食わせて寝せる方が先だ。
飯は消化にいいものが良いかな。
うーん・・・雑炊でいっか。
他のメンバーの分別につくるのも面倒くさいし。
醤油ベースの鳥と卵と野菜入り雑炊。
美味いよね。
たき火で鍋を温める。
こっちじゃ木炭は通常燃料だが、流石にここで七輪を持ち出すのはもったいない。
折角早めに野営にしたので、風呂に入りたい。
幸い水場があるので汲んで沸かせばいける。
外周はセシリアさんとレアさんの天幕を借りよればOK。
よし、入ろう。
洗面用具は持って来ている。
垢擦りタオルは、なくしたくなかったので持ってこなかったが。
使い捨てに出来る程度に垢擦りが売っていれば良いのだが・・・。
ついでに使っていないバケツサイズの手回し洗濯機で服も洗おう。
今日夜間吊るして、明日馬車に吊り下げて走らせれば乾くでしょ。
埃付くかもしれんけど。
洗濯も普段屋敷の裁縫職人の洗浄便りになっているけど、こうなるとやっぱり洗剤って欲しいよね。
つくっておいて良かった。
風呂上がりに涼んでいると、飯を泣きながら掻き込んだ後、倒れるように寝てたカタリナさんが起きてきた。
セシリアさんと何かゴネゴネ話している。
友達同士の話を邪魔するのは野暮だ。
聞き取りは明日でいっかと思ったらセシリアさんに手招きされた。
「社長、宜しいでしょうか?」
はいはい。
「こちらノースガブリ聖国王女にしてⅠの聖剣士カタリナ殿下で御座います。」
「ご紹介に預かりましたカタリナと申します。以後お見知り置きを。」
「ども・・・じゃなくて、これは私のような者にご丁寧に。お会いできて光栄ですカタリナ殿下。申し遅れましたがワタクシ、マナウタと申します。」
「マナウタの侍女、ジャンヌと申します。」
「聖剣士が侍女?」
「カタリナ様!」
「あー、いえ・・・こちら危うきところを助けて頂いた身。・・・どうか、顔を上げて下さい。」
「ジャンヌ様は私の今お世話になっていますミカギ産業の副社長でもあります。」
「えー・・・どういう?」
確かにそう言われれば、どういう肩書きなのだろうジャンヌって?
色々てんこ盛りで身近な俺にもわからねえ。
やたらと時間のかかった自己紹介の後、カタリナ王女になんであんな所にいたのかを訊いた。
話を聞くに、結構ノースガブリやっべーぞ、オラワクワクしない。
主戦力全滅て。
ドラゴンもバッチリいるっぽい。
それも1頭といわず。
そこにセシリアさんが補足してくれた。
なぜか徒党を組むモンスター達に砦もモンスターに襲われ陥落寸前。
この国ヤバいって逃げてきた人らしい。
「私が生き恥をさらしている間、国はそんなことに・・・。」
カタリナ王女が落ち込む。
俺も落ち込む。
そんなとこ向ってんの俺。
「マナ、投石機は?」
「奥様に言われて新しいの持って来たけど、花火打てるのは材料都合で1発だけだね。」
弾丸バラして使う手もあるけど。
まあ恐竜が群れて一カ所にいない限り、銃撃ってた方が効率良いからな・・・。
「確かに。では、マナが基本倒す。抜けて近づいてきたら私が斬るということで。」
「その作戦で行こう。」
「いや、ちょっと待ってくれ!!敵はドラゴンだぞ!!」
カタリナ王女が話に割り込んで来た。
そんな分かりきったこと言われても、何と返せば良いのか困る。
「マナ、普通はドラゴンは聖剣士しか倒せないのですよ。」
・・・そうでした。
散々撃ち殺して来たから忘れてたよ。
カタリナ王女に俺がドラゴンスレイヤーだと、ジャンヌとセシリアさんが説得しているのを見ながら、もう決まってはいるが夜番の確認をレアとする。
「これまで通りで良いでしょう。」
「そだね。」
俺とジャンヌが前半。
セシリアさんとレアさんが後半。
といっても見張りという名目で、星空の下で搾り続けられてその後テントで寝るだけだ。
場所以外、家でやってることとそんな変わんないっていうね。
「ところで・・・セシリアさんなんだけど。」
「どうか御勘弁を。・・・そういう御年頃なのです。」
その・・・最初はジャンヌが事の最中に急激ハッスルするから何かと思ってたんだけど。
ある日気がついちゃったのよ・・・影からのコソコソ視線に。
「ええ、おぉお、そんな、そんなことまで・・・。」とか、耳を澄ませば僅かに聞こえるその声は間違いなくセシリアさんだった。
ジャンヌに知ってたのか訊いたら、勿論と胸張って言われた。
おかしくない?
そしてもう一つおかしい点。
「レアさん、なんで知ってるの?」
「え?いや、えー・・・それは・・・その。」
この人も見てたっぽい。
というわけで、今日の夜番は普通に見張りした方が良いと思うんだジャンヌ。
「寧ろ燃えますね。」
何でだよ!?
同性に見られる分には恥ずかしさよりも優越感の方が勝つと。
なるほど、わからん。
つーか俺、羞恥しかないやん。
結局その夜も搾り取られた。
ちなみ視線は3つに増えてた。
馬車の操縦代わって寝れるからね。
徹夜なんて怖くないよね、チクショウッ。
その後カタリナ王女が見張りに混ざってくれたので、夜番は3交代になったが、さしたる変化は特に感じなかった。
睡眠時間伸びてちょっと楽になったかなぁって感じ。
新たな境地にジャンヌが目覚め、他の3人が自業自得の寝不足を交代で解消しながら馬車を転がす道中。
元気になったカタリナ王女が流石の活躍。
それを見てジャンヌが負けじと活躍。
うーん、やっぱりジャンヌのスピードおかしい。
カタリナ王女も遅いわけじゃないけども、目にとまらないって程じゃない。
カタリナ王女も驚いてたし。
まあ、いいや。
なんだかんだ出る幕なしで16体程モンスターの死骸を回収しつつ、俺達はノースガブリ聖国に辿り着いた。
「以外と・・・普通?」
もっとボロボロに荒らされた壁とか想像してたわ。
「いえ、ここはノーズガブリ最東端。戦線は最南端で行われましたから。」
なるほどね。
「おそらく聖国の南の領地を防衛戦に残存戦力で抵抗しているのでしょう。いえ・・・しているはずです。」
してなきゃ国家滅亡だしね。
モンスターが飽きて帰って暮れれば別だろうけど。
「行きましょう・・・。」
「はい。そして取り返すのです。」
「我等が祖国を。」
この壁の向こう側。
疑うことのなかった幸せを壊されて、地獄と化したる北の大地。
きっとこの3人の女性達は各々が心を蝕もうとする不安と懸念を押し殺し、信じて前を向いたのだろう。
壁に阻まれまだ見えぬ故郷を思い、見上げるその視線の先には、それでも抱かれずにはいられぬ希望があるのだろう。
彼女達の決然たる表情は、言葉少なくもそう思わせるだけの決意に満ちていた。
・・・つい数時間前、人のこと覗きながらハアハア言ってたくせに。




