聖剣イベント
砦と呼ばれるミカエスト王国最西端。
モンスターの侵入を防ぐ、それは文字通りミカエスト王国に住む者達にとっての砦だ。
常にモンスターの驚異に晒される王国でもっとも危険な場所。
誰も好んで近づく者はいない。
だが、今日は違った。
新たなる年を刻む今日、このとき。
いや、正確に言えば明日の零時・・・今日の十二時・・・どっちでもいいや。
とにかう砦の屋上で輝く聖剣をその目に焼き付けんと国民達が集まっている。
俺もちょっとドキドキしている。
どうせならネタバレなしで見たかった。
アベル王子のバイナリスター。
見た目はハンドガードの付いた片手剣。
ブロードソードっぽい感じ。
ジャンヌのクレッセント。
ピンクの日本刀。
レメクさんのサザンクロス。
よく漫画で騎士が持ってそうな両手剣。
その3本が砦の上でピカーンて光る様を皆見に来ているわけである。
「へい、焼きそば一丁!!ほら、安いよ安いよ!!今日は特別な日だ!!」
「皆大好き唐揚げ串だよー!!」
「そこのボウヤ、美味しそうだろう?これはオムレツっていってね・・・。」
国民の皆様は現在屋台に夢中であるが。
この節操なき屋台陣、悲しいかなミカギ産業の傘下の皆様です。
どうせお祭りならとウチも屋台だそうかと、酒のノリで言ったのがいけなかったのか。
傘下の料理店8軒が全て屋台を引いて砦までやってきやがった。
「大盛況ですわね!!オーホッホッホ!!マナウタ様、宜しければワタクシの卒業式でもミカギ産業の出店をお願いいたしますわ!!」
お嬢様が何故かない胸を張ってらっしゃる。
確かに一大イベント、客に困りはしないのだが。
屋台8台に行列が出来ているこの状況。
他の屋台の視線が怖い。
いや、俺が社長だってバレている訳じゃない・・・はず。
大丈夫。
気のせい、気のせい。
「ウプ・・・。」
どうしたジャンヌ、顔色が青いぞ。
「8店舗制覇・・・フッ・・・。」
なぜ笑ったのか分からんが、良いのだろうか?
これから舞台に上がる役者が腹をぽっこりさせていて。
「鎧で隠すから大丈夫じゃないか?」
レメクさん、ラーメン片手に変な賛同をしないで。
「もぐもぐ・・・ゴクン。・・・ウム。」
アベル王子も何してんの?
そろそろ出番でしょ。
ほれ、行った行った。
砦。
元の世界で言うなら万里の長城・・・はいいすぎか?
実物見たことないけど。
国を覆うように囲う分厚い壁。
その最西端にそびえる塔。
その頂上で輝く光をエール片手に見上げる。
清浄なる蒼、高貴なる純白、そしてピンク・・・うん。
まあトータルすれば神々しさを感じなくもない。
「国民よ、我等が王国に神より与えられたもう3振りの聖剣が揃った!!あの光こそ我等が希望!!」
国王の横で誰かが声を張り上げている。
めっちゃ響く声。
多分音楽家が声量拡張とか使ってるんだろう。
「我等ミカエスト王国は生まれ変わる!!新生されし王国は、今日この時、新しき年の始まりと共に!!新たな歴史を刻むのだ!!」
なんだろ・・・。
スゲー大袈裟なこと言ってるけど、今まで聖剣なかった方が問題だったんだよね・・・。
実情を知ってると、変に冷める。
周りは・・・沸いてるな・・・。
やっぱりネタバレなしで見たかった。
「さあ、見よ!!聖剣の光を!!そして、この国の力を!!」
お、バルバラの出番か。
飛んでく樽爆弾が轟音を響かせる。
上がる火柱に熱狂するミカエスト国民の皆様。
花火みたいなノリかな?
なんにせよ、今度はまっすぐ飛んだっぽい。
バルバラも上手くなったものだ。
「ミカエストの国民達よ!!我等が新たなる門出に!!」
「おかげさまで大成功だよ。」
いつの間にか湧いて出たイケスカヨシュア氏。
なんなの、本当に?
まあ、確かに大成功だったのかもしれないが。
色々物足りなかった部分はある。
「へえ?例えば?」
例えばと言われると・・・演説とか?
「というと?」
そういわれると・・・そうね・・・。
折角年の変わり目にやったのだからその辺りをもっとピックアップして欲しかった。
あとどうせなら落して上げた方が盛り上がったのではないだろうか?
「なるほど・・・因みに君ならどんな風に?」
うーん・・・。
「ミカエスト王国・・・聖剣なき国家と罵られ、笑いものですらあった弱小国家。・・・今まで民の貢献に支えられ、苦労を強いながら耐える日々を過ごして来た。家族の不幸に泣いた者達よ、未来への不安に泣いた子供達よ。すまなかった・・・そして、涙を拭いて聞いて欲しい。なぜなら、その苦痛の日々が今、終わりを告げるのだから。・・・他国の視線に劣等感を抱え、怯えて生きる日々。今日この日、その屈辱の日々が幕を閉じる!!今後、この国に犠牲はない!!あるのは勝利と栄誉のみ!!・・・今、奇しくも新たな年を迎えるこの瞬間。我等はその変革を目にする!!・・・見よ、あの塔に輝ける光を!!神より与えられし祝福が闇夜を照らすこの時を!!さあ、刮目するがいい!!歴史が変わるこの時を!!我等が王国がその名を轟かせる、反撃の狼煙を!!」
で、花火ドーン、からの
「さあ、飲んで騒げ!!そして共に祝おう!!・・・新たなる日の出と共に、生まれ変わった王国を!!」
とか?
駄目だな・・・俺に演説の才能はない。
つか、酔った勢いとはいえ、俺は何をやっているのだろう?
とある映画のマルパクリです。
うん、答えは出た。
・・・酔ってるな・・・ちとクールダウンすべきか?
あれ?
・・・あのイケメンどこ行った?
あ、いた
人に恥ずかしいことやらして奥様とヒソヒソ話とか・・・。
物足りなかったといえば花火もだ。
元の世界の花火を知っているとな・・・
一発ドカンで終わりはショボすぎる。
といっても、花火の材料がね。
ドラゴンだからね。
一応あの樽爆弾は矢作りに登録したが、結構なコストである。
ドラゴンの血✕30個にドラゴンの鱗✕10個。
フィグスの木材は直ぐに手に入るとして、ドラゴンの素材はちょっとね。
正面に出て来てくれれば負けはないが、流石に住処の森に言って横からパックンチョされたら終わりだし。
うーん。
いや、花火に命かける気はない。
悩む必要はないな。
「であれば、森以外でドラゴンを見つければよいのですわ。」
奥様、急にどしたの?
「開けた場所で出会う分には、マナウタ様であれば問題もないでしょう?」
そうだけども。
「実は丁度今、北の国にドラゴンが目撃されていましてよ?」
へー。
「前に別の国からの輸入も考えたいとマナウタさんも仰っていたではありませんか。」
そういえば、言ってたけども。
「ここでドラゴンを倒し、恩を売れば、いくらでも欲しいものが手に入りますわよ?」
・・・ふむ。
「丁度ミカギ産業2号店の社長代理に就任したセシリア様、あの方ノースガブリに詳しいそうで・・・。」
へえ・・・。
であれば、アリかもしれない。
北の国の名物とか興味あるし。
因みに俺は蟹が大好きだ。
折角だし計画してみようかな・・・。
ん、どうしたイケスカヨシュア氏。
チョロい?
何が?




