思い出した技能
よく異世界転生とか転位で出てくる女騎士。
腰に剣を吊るしてる、ああいう人達に実際あったとき「わあ、綺麗だ」とか思うのって実はすげえ図太いんだなって思った。
特に日本人にとって。
目の前に実際そういうのが居る。
多分めっちゃ美人なんだけど、そんなことどうでも良いくらい胡散臭い。
だって剣持ってるんだよ?
全身血まみれだし。
誰か殺ってきたのかもしれん
銃持って言うのも何だけど。
持ってるって事は使う気があるって事だ。
或いは使う仕事をしていて、使うことに抵抗を感じない人。
警戒心しか湧いてこない。
そんな女が突如現れ「生命の実!!」とか言うから、思わず銃口を向けてしまったが、相手はまるでひるみもしない。
つか、今の日本語?
「・・・あー、誰?」
我ながら間抜けな問いだった気がするが、女は気にもせず淡々と応えた。
「これは失礼、私はプロテスト公家奴隷侍女のジャンヌと申します。」
育ちが良いんだぞと言わんばかりの、スカート持ち上げ&45°お辞儀。
通じる日本語。
堂々と奴隷といっちゃう女。
言葉が通じるのは分かったが、言ってることが頭に入ってこない。
僕ちゃんどうしましょ。
「それで・・・。」
黙ってたら女から話しかけてきた。
「アナタは・・・?」
聞かれちゃった。
どうしよう。
「あー、道に迷ったどこぞの小市民です。」
なんとなく個人情報を晒すのが嫌で名前は隠した。
「・・・そうですか。」
「・・・。」
「・・・。」
会話が繋がらない。
というか会話しなければダメかな・・・?
「・・・あの。」
と思ったら何とか会話を投げてくるこの人。
「私は・・・生命の実が必要でここに来ました。」
・・・で?
そして何それ?
「アナタの持つその実が必要です。」
・・・なるほど、これが欲しくてここに来たのね。
てことは俺はそれを邪魔するどこぞの馬の骨って感じかな。
うん、命の危機。
「それを私に譲って頂きたい、御礼なら何・・・何してるんですか!?」
恐る恐る地面にリンゴを置く俺に女が聞いてきた。
こっちから言わせれば何?ぢゃねえって話だよ。
剣持ち危険人物とはすぐさまサヨナラしたい。
「動くな!!コイツが欲しいんだろ?」
「え?・・・あ、はい。」
「ここに置いてやる・・・さがれ。」
「え?・・・あの・・・」
「さがれっつってんだろ!!」
「は?・・・はい。」
素直に後退る女をみてちょっと怒鳴っちゃったことに罪悪感を感じたが、しょうがない。
いや、冷静に考えて?
普通に危ねえから。
「ここに置く。妙な真似したら、撃つぞ。」
「撃つ?」
これが武器だと思われていないパターンね。
「いいか、これは恐竜すら殺す武器だ。アンタが俺に危害を加えようとするなら俺はアンタをこれで殺す。」
「恐竜?というか危害って・・・あ、いえ。余り時間がないわね。」
急にぼそぼそって話すのは辞めて欲しい。
「私はアナタに何もしません。・・・それで・・・その・・・生命の実は頂けるので?」
「ああ、やるからさがれ。」
「・・・わかりました。」
何かスゲー戸惑ったような女を警戒しながらリンゴを地面に置く。
「これが欲しいんだろ。取っていけ。妙な真似はするなよ?」
「分かりました。感謝致します。」
再度スカート持ち上げ&45°。
リンゴを女が披露のを見届けていると、再度女が話しかけてきた。
「あの、何もしませんので・・・。その・・・ご存じかもしれませんがここはドラゴンの巣です。アナタがここに迷い込んだ理由は分かりませんが、早く非難された方が良いかと。」
「ドラゴン・・・?」
なんかまたアブねえ単語が出てきた。
「ええ・・・ご存じないので?」
「いや、あー、知識としては知っているというか・・・。」
「であれば・・・まずは早くここから離れた方が良いかと。」
女がそう言いながら洞窟の入り口をみてそわそわしている。
ドラゴンね・・・。
日本なら厨二扱いされて終わる話だが、こっちなら・・・どうだろう。
そーいえば昔流行った漫画にドラゴンが願いを叶えてくれるとかいうのがあったね。
(出でよドラゴン!!なんつってぇえええええ!?)
俺がそう思った瞬間、俺の前にティラノサウルスの死体が現れ、
「ドラゴン!!?」
女は叫びながら気絶した。
・・・とりあえず縛っとくか。
「くっ、私をどうするつもりですか?」
惜しい。
もうちょっとでクッコロだったのに。
そうじゃない。
今のはワイヤーで丁寧に簀巻きにした女が目覚めて最初に発した一言だ。
俺が言うのも何だが気持ちは分かる。
ちなみに剣は奪っておいた。
言われた事が全て分からなかったわけではない。
どうやら俺が射殺したティラノサウルスは、こちらの世界でドラゴンになるらしい。
因みに突如現れたティラノの亡骸のおかげで流石に思い出した。
昔やっちまったアレ。
「ステータスオープン。」
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名前 = 三鍵 愛詩 (ミカギ マナウタ)
所属 = 日本
爵位 = なし
天職 = 狩人
先天技能 = 狙撃 矢作り 弓矢格納 素材格納
後天技能 = 異世界語 精神異常耐性
罪状 = なし
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並んでるよね、格納スキル。
そして地味に何か増えてない?
ええ、消してたの俺でした。
そういえば頭の中で妙にレジみたいな音が聞こえると思ってたけど、あれスキル使用の音なのね。
因みに女が気絶してる間にティラノで実験済み。
で、そういえば銃弾も消えたなって試したら・・・うん、格納できたよ。
銃もボウガンも矢もフレアガンもその弾も水中銃もスピアも・・・なんで?
多分弓矢格納のおかげだと思うんだけど・・・弓矢の定義とは?
「アナタ!!聞いてるんですか!?これを解きなさい!!」
「解くか!!危険人物がッ!!」
「!?」
ホワイジャパニーズピーポー的な顔でこっちを見てる女をスルー・・・したいんだけど。
こうなると貴重な情報源だ。
「おい、銃刀法違反の犯罪者さん。」
「犯罪者!?なんですか?急激なその侮辱!?」
「いいから聞けって。ひとまず天職と技能ってのが何なのか答えろ。」
「な、何言って・・・?」
「俺は・・・あー、そう。記憶喪失だ。うん、記憶喪失。」
「嘘くささが凄い。」
「シャラップ。いいから、ちゃんと話したらこれやるから。」
「・・・信じられませんね。」
「ああ、逆に早く話さないと、食うぞ?」
「待って!!・・・分かりました。」
ドラゴンの巣で何やってんだ?って話だが、ドラゴンの巣にわざわざ近づく獣はいないそうだし。
つまり主の死んだここは安全地帯だ。
今のうちに出来ることは把握した方が良い。
そうして始まった女の講義は2時間ほど続いた。
途中ちょっと寝た。