表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/100

だから俺はここに居る

衝撃の事実を打ち明けられた次の日。


何でステータスとか見えるのかな?って心の整理をつけた、というか開き直った。


別に俺が異世界人だろうがエイリアンであろうが、日本で生きる以上金は要る。


今日は午後から異世界ゲートを開く実験だそうだ。


開いてどうすんだ?とおもったが、親父曰く資源確保だそうだ。


資源ナシナシの日本。


じゃあ日本以外の場所から取ってきちゃおうぜ、って言う感じらしい。


ぶっちゃけ当初目指したエネルギー開発には、その後大きな問題点が発覚し、使えないってなったらしい。


ただ大きな予算をつかったプロジェクト、収穫が無かったわけではない。


さあ、異世界に行って色々ぶんどってこようぜ!!


「まあ、乱暴に言えばそうだな。実際あのとき現れた恐竜や荷台に入っていた物から開発された物もある。その実用性からこのプロジェクトは長い時間をかけて見直し、研究を続け、今に至っているんだからな。」


「恐竜から開発って?」


「例えば車にあった銃。日本の法律上アレしか準備できなかったが、実際行く場所が恐竜が住まうような場所なら心許ないだろう?」


「確かに・・・。」


「そこでこれだ。」


そう言って親父は銃弾を手に取る。


「確かサボットスラグとかいうんだっけ?」


「よく知っているな。」


「日本男児ですから。」


「理由になってるのかどうかよく分からんが。ともかくこれ、恐竜の素材で作っている。」


「というと?」


「薬莢は鱗から、弾丸を覆う樹脂は恐竜の脂肪から、火薬は恐竜の血から。」


「はあ・・・。」


血から火薬って・・・何?


「例えばこの鱗は通常の状態では只の鉱物だが、異世界とこの世界を繋ぐと妙な力を発揮することが分かった。」


「鱗が鉱物って辺りでアレなんだけど・・・ふん、妙な力ねえ。」


突っ込みどころがありすぎて聞き手に回ることしか出来ない。


「少し見せよう。」


そう言って親父が倉庫内の機会を弄ると小さな黒い渦が生じた。


「異世界への入り口ならぬ、窓とでも言おうかね。」


強化ガラスの中で渦を巻く円形のゲートは10cmにも満たないが・・・。


と、突然弾丸が発光しはじめた。


といっても周りを照らすほどではないが、七色の虹の様な輝きを纏った弾丸は、親父が装置を弄り、異世界の窓を閉じると、その輝きを失った。


「親父・・・今のって?」


「実験ではゲートを開いている時に限り、この弾丸は戦車の装甲同等の鋼鉄を簡単に貫いたそうだ。」


「それって・・・違法じゃね?」


「ゲートを開いてなければ、法律上問題ない弾丸だ。ちなみに理論上はあのティラノサウルスを仕留められるらしい。」


「こえーなこの会社。つか、銃もあれだが、そもそもここにゲートの発生装置とか置いてて良いの?」


なんか誰でも入ってこれそうな倉庫だけど。


それをいうなら銃もヤバそうだが。


「仕事が終わったら厳重に倉庫に鍵をかけるし、見回りもいるから問題はないさ。」


「そうですか・・・つか、恐竜よく倒せたね。」


「恐竜が暴れて装置が壊れたのが幸いだったな。当初パニクった職員が重機でひき殺したそうだ。」


「そう・・・つか、ゲートそもそも開けんのに、今日の実験は何をするんだ?」


「この装置はあの事故から装置を改良し、安定してゲートを開く事を優先した。代わりに小型の窓しか開かない。」


「てことは・・・。」


「ああ、今日は大型のゲートを安定して開く装置の稼働実験だ。」


「つまり今日の実験が成功すると・・・異世界侵攻がマジになるって事?」


「侵攻とかいうな。あくまで偵察だよ。最初はな。」


「最初は、て。」


「後はお偉いさん次第さ。」


「まあ、そうなんだろうけど。」


「で、その偵察試作機がこの車って訳だ。」


「この軽が?」


「馬車が出てきた辺り、あっちの世界はこっちほど道路が整備されてないだろうし、ガソスタなんぞ期待できんだろう?道が狭けりゃ大型車じゃそれだけで詰むからな。諸々考えてこれしかなかったんだよ。一応これでもあらゆる状況を考えて、一週間程度なら大人二人がそれなりに過ごせる設備を詰めてある。」


「へー。」


「さて、話してたら昼の時間だ。」


「色々突っ込みたかったが、まあいいや。とりあえず俺も腹減ったよ。」


そして昼飯を食った後のこの倉庫で、あの事故は起きた。




午後倉庫に行くと、親父が実験に立ち会ってくるので暫く席を外すと出ていった。


俺に与えられた仕事は掃除。


「あの端っこを片付けて、車をそっちに動かしておいてくれ。」


そう言って鍵を投げ渡す親父。


一応貴重品だよ?


「もう分かってると思うが、」


「車の中の物には触らないよ。安心して行ってきてくれ。


「ん。」


満足そうに頷いた親父。


あれが最後の別れになるとは思っていなかった。




倉庫の端の謎物質を指定の場所に運ぶ。


思ったより時間を食った。


後は車を動かすだけ。


車に乗り込み、エンジンを始動。


なんとなく時間を見ると午後2時。


実験開始の時間だ。


車のエンジンをかけ、動かそうとすると大きな声が聞こえた。


何だろうと思って声のした方を見ると、倉庫の窓から人が慌てて走っているのが見える。


よく分からないがめっちゃ混乱してるっぽい。


実験で何かあったのだろうか?


少し心配になりながら、とにかく仕事を済ませようとすると、この会社の作業着をきた人が倉庫に走り込んできた。


尋常じゃない慌て振り。


声を聞くため車の窓を開けて、聞こえた第一声は「逃げろ!!」。


はい?


「今すぐここから避難するんだ!!装置が暴走した!!そこの装置も暴走を同時に始めている!!何が起きるか分からん!!」


その人が指を指す方向に目を向けると、確かにあのゲートが開いていて。


そのゲートが急に大きくなって、


「ウソだろ!?」


俺の方に飛んできた。


◇◆◇◆◇


気を失ったらしい。


目が覚めて辺りを見回す。


車の中、周りは鬱蒼と茂る森。


「あー、どういうこと?」


ひとまず定番通り頬をつねる。


痛い。


というか予感はあるのだが・・・そうだ、運転席に備え付けられたあの弾丸を取ってみる。


七色に光っている。


周りにゲートの発生装置はない。


つまり・・・「俺、異世界に飛ばされた?」


いい歳してこんなことを言いたくなかったが、状況的に疑いようがない。


ひとまず弾丸をしまおうと思ったら、手から弾丸が消えた。


「え?」


落したのかと思い、探すもどこにもない。


暴発されたりしたら大変だ。


出てこい!!と思ったら手に重み。


弾丸が手にあった。


袖にでも潜り込んだのだろうか?


ひとまず「ふー」と安堵ため息をつきながらどうしようか考える。


状況を飲み込むにつれ慌て混乱していく精神を必死に抑えて、とにかくどうしようかを考えようとするが、パニクって考えがまとまらない。


『GYAAAAAA!!!』


そして聞こえる謎の雄叫び。


「何だよ!?」


いきなり放り出された森の中、最初に見た生命体は・・・。


「ティラノサウルス・・・。」


ズシンズシンと血を響かせソイツは間違いなくこっちに向っていて。


冷静なら即行で逃げるべきだった気がする。


慌てていた俺は何を思ったのか、天井の銃を引っ張りだした。


変な部分で冷静だった。


小説で知ったリロードのやり方を震える手で見事に実行し、弾の入った猟銃を抱える。


ふと窓を開けていたことに気付いたが今音を立てる気にはなれなかった。


足音が止まる。


『GYAAAAAA!!!』


威嚇する様に吠えるティラノは得体の知れない物を警戒したのか、それとも昔地球にいたそれと同じで動く物しか認識できないのか?


ギュッと目をつぶる


臭いを嗅ぎながら車の横まで来たソイツは俺に顔を近づけ


『GYAAAAAAA!!!』


とまた吠える。


気付かれている?


窓から感じるソイツの吐息。


一か八か。


俺は銃口を向け、引き金を引いた。


◇◆◇◆◇


親父の言っていた理論上の威力は不本意ながら証明できた。


眉間を打ち抜かれ、地響きを立てて倒れたそれを今俺は見ている。


車を降りて、何故か、なんとなく。


罪悪感かなんなのか。


途方に暮れた俺は暫くの間、そこに立ち尽くした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ