違法@日本
ヘンリーさんの仕事小屋兼家を出る。
作戦を伝えるためだ。
家で俺はのんびりしていようかと思ったがジャンヌに引きずり出された。
何故?
お嬢様が皆を集める。
この人は出てきて良いのだろうか?
「皆さん、作戦をお伝えしますわ!!」
仁王立ちを決める公爵家のお嬢様。
いや、いいけど。。
「作戦の詳細はジャンヌから話して貰いますわ。」
「奴等がいつ降りてくるか分かりません!!総員納屋の中へ!!」
やっぱりお嬢様は出て来んでよかった。
納屋へ向う途中、如何にもやんちゃな兄ちゃんに絡まれた。
「おい、お前。」
当然無視で。
「俺の名はユダ・・・って待て、・・・いや、待てって!!」
さっさと納屋へ向えよ。
「ちっ、テメエ。俺を舐めると痛い目見るぜ!!」
うぜー。
「何をしたかしらねえが、公爵家に上手いこと取り入った馬の骨が!!見てろ、いずれ今日の態度を後悔させてやる!!」
がんばって。
「何をしてるんです?」
「向こうに訊いてくれよ。」
気を取り直して。
網をつかった超大型害鳥捕獲。
検索で出てきたトップバッター「かすみ網」。
尚、違法の模様。
日本ではね。
見えない位細くてフニャフニャの網をかけておき鳥がそこを飛ぶとぶつかった際条件反射で掴む。
鳥は飛ぼうとするんだが、その際、飛ぶ前に地面を蹴る、というのがこの罠のキモだ。
縄が柔らかくて蹴れない、つまり飛べない。
ただ、コレは理屈の上では罠がピンと張るような状況では成立しない。
蹴れちゃうから。
ここでの問題、それは重量だ。
アルゲンタヴィスはデカい。
つまり重い。
じゃあ、どうするか?
蹴らせなければ良いなら手はある。
作戦開始。
飼い葉を運ぶ荷車に材料を入れる。
納屋や家畜小屋のカーテン代わりのデカいぼろ布を引っぺがす。
補修用の木材を立て、その上に布をかければ簡易テントのできあがり。
そこで作業をする。
どうよ、見えまい。
『アホーーーーー!!』
・・・・ぜってー引っかけてやる。
俺作業してないけど。
問題は奴等の足の長さだが、ジャンヌが見たことがあるらしく事前情報はバッチリ。
皆さん頑張って。
別にサボってるわけじゃない。
狩人は見張りと決まったのだ。
役割分担、とても大事。
「ヤロー、狩人だったのかよ・・・社会の底辺が。」
さっきのヤツの声がする。
本当にウゼーな。
ジャンヌ、これ以上騒ぐようならアイツ放り出して。
牧場だけあって農具が豊富。
人数もそれなりにいるから作業はガンガン進むが、罠の性質上時間がかかる。
奴等の降りてくる気配はなし。
鳥の考えることなんぞ分からん。
降りてこないならその方が良い。
「奴等は狡猾です。こちらの油断を待っているのでしょうね。」
ジャンヌさん真面目すぎ。
時刻は3時。
罠は大方できた。
後は最後の仕上げ。
そして待ち時間。
今日は早くても帰れるのは深夜だな・・・はぁ。
テントの下で牛肉を焼き、罠の上に肉を置く。
更に同じ場所で松明で肉をあぶる。
農場にスコップがあったので鍋代わりに借りた。
脂の焦げる良い匂いが伝わってくる。
さて、どうだろう?
飛び方が変わった気がする。
、
「頃合いかなー。」
「分かりました。総員、撤収です!!」
テントを外し、撤収。
そこには肉の置いてある飼い葉でできた小山が在る。
一応4つ作った。
「来ますかね?」
「ま、ダメなら別の手を探せばいい。自慢の剣も奴等が降りなきゃどうにもならんし。」
因みに、ジャンヌは今日は完全武装だ。
普段お嬢様に言われて伸ばしている銀髪を後ろでがっちり縛っている。
金属鎧とお腰につけたロングソードが、どことなくゲームとかに出てきそうな西洋風侍を彷彿とさせる。
いや、まあコイツの感想はいいや。
ネクストトライの際、できれば俺は帰して欲しい。
「そうですね。」
「まあ、降りて来るかもだから、油断はしない様にねっと。」
「そのときはワタクシの魔法が奴等を仕留めてみせますわ!!」
お嬢様どっから湧いてきた?
納屋からのぞき見る。
奴等からすれば人間は格下だ。
武装した人間が多数いれば、一応の警戒はするだろうが、奥に引っ込んだ状況下、その気になれば飛んで逃げられる奴等が焼けた肉の臭いに吊られない訳がない。
毒を警戒されたら終わりだが、降りてくる位するんじゃないかな。
つか実際駆除士が眠り薬とかしびれ薬を作れれば苦労しなかったんだが。
作れる毒にあんな制限があるとは・・・。
「来た!!」
緊迫したジャンヌの声。
「っしゃぁああ!!」
猛るお嬢様。
舞い降りるはデカいカラス。
ヤツは飼い葉の小山に降り立ち、肉をくちばしで突く。
どうだ?
奴が肉を警戒し飼い葉の山の上で突いてる時間が長いほど、それは確実に奴等を蝕んでいく。
あの重さなら一撃かもしれんが。
肉を啄みしっかり胃に収めたデカいカラスは飛び立とうと翼はためかせ、しかし飛び立つことはなかった。
・・・上手くいっちゃうんだ・・・。
自分でびっくり。
『アホーーーーーーーーー!!」
フン、負け惜しみを。
さて他は・・・降りてこないかな。
残り3カ所は無駄になった模様。
もう一羽鳴き声を聞いて降りてきたが、降りたったのは飼い葉の上ではない。
仲間の嵌った罠の横。
罠だけで全部やるのは甘かったかな・・・。
農場に無駄な穴を開けてしまった。
「まずは2羽。よろしいですね?」
「しゃーなし、ひとまず満足しましょ。残り2羽は、多分来るぞ。」
「はい。」
「おーっほっほっほ!!ワタクシの魔法が火を噴きますわ!!」
農場を燃やさないように。
「総員、かかれぇええ!!」
行ってらっしゃい!!
準備した罠は落とし穴だ。
地面に穴を掘り砕いた土に多めの水。
たっぷりと泥水を流し込みその上に網を敷く。
その上に飼い葉を。
鳥にまさかの落とし穴。
流石に考えなかっただろうカラス共。
大地に降り立ったデカいカラスはそのまま足を泥水に埋めながら肉を食ってたわけだ。
野生の動物が汚れなんぞ気にせんわな。
身体がデカいから足は埋まっても身体は浮く。
水面の鳥と一緒だ。
飛ぼうと地面を蹴っても掴んでいるのは泥に埋まった網ってわけだ。
騎士、つまり戦士がいたのが助かった。
斬撃強化か刺突強化のどっちか知らんが、農具にも技能効果が乗ったから。
最初どんだけ時間かかるかと思ったけど、まあ早いこと早いこと。
カラスにどんだけ知能があるか知らんが、この早さも落とし穴を警戒させない理由になったかもしれない。
回旋の狼煙とばかりにぶちかまされたお嬢様の火球弾・・・ってマジで?
いつでも飛んで行ける間抜けの方じゃなく、助けに来た方に先にぶちかました辺り分かってるのかもしれない。
次いで狩人達の矢が飛んでいく。
漁師達も負けじと銛をぶん投げる。
騎士達は剣で、木樵は斧で突撃。
駆除士は何するつもりで走って行ったのか。
そんな中周りと圧倒的にモノが違うジャンヌ。
結局、ジャンヌが先陣切って超高速で走って行き、助けに来たカラスの首を斬り飛ばした。
『アーーーーー!!」
罠のなかでもがくカラス。
興奮しているのかいつもと鳴き声を変えながら翼から風を吹き出している。
すぐさま2羽目と走ったジャンヌはその風に残念ながら足を止めた。
そして、飛んでる2羽。
仲間がやられてるんだから、降りてくるよねえ。
これ放置してると負けるかも?
一応準備しようか。
『アホーーーー!!』
興奮したように上空で旋回するカラス達。
狙いを絞っているんだろう。
その羽に入る様に後から来たもう一羽。
増えた、ズルイ。
その一羽はそのままカラス達の内の一羽に高速で近づき、火を噴いた。
・・・は?
上をしっかり警戒していたのかジャンヌも気付いたらしい。
「・・・ドラ・・・ゴン・・・。」
ジャンヌの呟きに反応するように、人もモンスターも動きを止めた。