表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/100

未来に向けて

朝の日差しのまぶしさに目を細める。


8月・・・クソ暑い。


去年家を蔦で覆ったおかげで家の中は問題ないにしても、外に出るとたんに汗が止まらない。


ハム君同様親父の寝室を庭に建て蔦を植えたが、まだ育ってない。


今はジャンヌもお腹を大事にしている時なので、夜声を上げることもないから親父とハム君は我が家で寝ている。


因みにゴートには実がなる。


瓜科の何か。


余り食べるものではないというので、放置しようとしたが、だったらダメ元と思って茹でてみた。


ヘチマたわしならぬゴートたわし。


食器を洗うにも身体を洗うにも使える屋敷の侍女さん達に大人気だ。


ミカギ産業の新商品として既に売り出している。


ミカギ産業と言えば親父がカレーの開発に成功した。


日本のカレーライスというよりはインドカレーに近いものになっている。


オリザの生産量が間に合わないから寧ろよかったと思う。


開発成功はサウスラファから香草を大量に仕入れられたおかげだ。


サウスラファを救った功績で顔繋ぎしたおかげもあり、取引は結構簡単に上手くいったそうだ。


この辺りは奥様任せだが、多分えげつねー条件で仕入れてると思う。


カレーの香りは空腹時に嗅ぐと殺人的だ。


薬剤師の調合でカレー粉の量産が出来たのでミカギ産業全店に展開。


ウジェーヌさんが視線で俺を殺せないかに挑戦しに来たが、笑ってスルーした。




思い起こせばもう一年。


見上げた空は真っ青で何も変わっていない。


クソ暑いので曇っていいのよ。


世界はこんなにも変わったというのに。




ノースガブリ聖国とウリウェスト帝国は王を失った。


聖国はミカエスト王国が、帝国はサウスラファ皇国が支援し復興を目指す。


勿論王がいないので、ひとまず復興後は属国になる見込みである。


敵国がいなくなったんだからいいんじゃね?と思ったが、ヨシュアさん曰く「人の住む地が減るのが最も困ること」らしい。


そもそも敵対理由はラウンドベルやセントルシフのモンスターであるから、ひとまず壁を修復し人が住める体制を整えた後は、4国による同時攻略を予定しているらしい。


花火にグレネード、今や聖剣士ならずとも恐竜とて戦える時代に変わったからね。


現状皇国は王国に頭が全然上がらない状態なので、王国主導で一気に決めてしまうつもりみたい。


実現すればミカエスト王国一強だな。


多忙を極めたヨシュアさんの目の下はクマで真っ青だった。ザマミロ。


他にも地下牢に放り入れたナナちゃんの事情聴取、処遇の決定とか目先の問題にも不自由してないからな。


世界の皆さんにどう発表するか、頭を抱えているらしい。偉い人は大変だ。


とはいえまずは復興が大事。


聖国はモンスターの襲撃で防衛力がボロボロに低下していたが、ラスボス君が支援に向った。


モンスターを逆に戦力にし、聖国を護りきっているそうで。


カタリナ王女とイイ感じだとか何とか。


つかモンスター味方にできんならセントルシフ任せちゃえばよくね?と思ったが味方に出来る数には限りがあるらしい。


残念。




「空見てボーッとしてどうした?」


「現実逃避」


後ろから親父に声をかけられ、本音で返した。


他人事じゃないんですわ、これが。


復興支援の旗として聖国、皇国、帝国へのミカギ産業展開依頼。


働けるところがなければ人が住んでくれないから。


さらにセントルシフ攻略への参加依頼。


王国は俺を過労死させたいんじゃないだろうか?


攻略を断れなかった時のためと、親父がドラゴンから開発したライフル弾はユニバースエンドの蒼を朱に変えただけのレーザービーム。


“アポカリプス”とまたご大層な名前の弾丸の試射はヨシュアのバカタレに見つかり、依頼は攻略隊隊長依頼へとエキサイトしやがった。ふざけんな。


「嫌なら断ればいいだろう」


「そうなんだけどさ・・・」


「嫌とはいえない日本人、か」


「それだけじゃなくてさ・・・」


「ふむ?」


「少しでも俺が動いてこの世界が良い方向に向うっていうなら、やぶさかじゃないっつーか」


「ほう」


「それに・・・俺達の予想が正しければさ、寧ろモンスター程度の脅威はさっさと打ち払わにゃ」


「それはまあ、確かにな」


俺達の予想。


それはこの世界に、また地球人が降り立つであろうということ。


新しい場所を開拓し、そこにあるものを手に入れる。


歴史の中で人間がやってきた当たり前の脅威が、いつこの世界を襲うか解らない。


もうゲートは開いたのだ。


それはもうきっと近い未来でしかないのだと思う。


巨大な侵略者が来るというのに未だモンスター程度に怯えて壁の中に閉じこもり、全員で手を取り合う事も出来ない。


そうなれば技能を持つ者達は便利な道具にされ、この世界の人々は地球の人間のいいなりになって生きることを余儀なくされる。


それは嫌だ。


この世界に暮らす者として、それは嫌だから。


「子供の未来ぐらいは、護ってやらねーとさ」


「そうか・・・まあ、そうだな。・・・しっかし、難題だらけでキツイ世界だな、ここは」


「ああ。来たときは絶対耐えられないと思ってたよ」


「今は?」


「正直どうなんだか。・・・ただ世界は、少しずつなら変えていけるから」


「フッ、そうだな・・・お前はそうやって生きてきたんだったな・・・」


「ああ。で、これからもそうやっていくんだと思うよ」


嘆いていても始まらない。


我慢できなきゃ変えるしかない。


「そうか。なら俺も小さい力を貸すとしよう。息子と孫のためにな」


クソみたいにトラブルばっかりの、この世界。


それでも大切に溢れた愛すべきこの世界。


俺達は今日もここで生きている。


そしてずっと、ここで生きていきたいと思うから。


「おう、頼むわ。・・・さて、じゃあ仕事行きますか!!」


以上完結ございます。

お読み頂きました皆様に感謝を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ