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俺には耐えられない

馬の力が思いの他強い。


サラブレッドは走るために品種改良されたと聞いたことがある。


ロバと見分けのつかんのが来るのかと思ったが、思いの他ご立派なのが来た。


足の毛とかふさふさしてるやつ。


途中まで合わせて車を走らせていたけど、途中から節約のためギヤをニュートラルにして、ハンドル操作だけに切り替えた。




途中泊まった宿や飯は奢りだった。


奢りの飯は美味いとよく言うが、飯によると思う。


店員の手前、余り言わなかったけど。


夜ご飯に出てきたもの、パンのような硬い塊、塩味の謎野菜スープ、筋っぽい肉の塩串焼き、赤ワイン色のアルコール。


食えなかったわけじゃない。


見た目そこまで裕福な宿じゃないし。


我慢我慢。


風呂なし?


身体はお湯で拭く?


そうかー、いや一日ぐらいね。




途中ゴモラのおっさんと分かれて、そのまま公爵家へ。


公爵家?


いや、急激ハードル高くない?


俺みたいなのがお目通りして良いんだろうか?


向こうがいいっつってんだから良いんだろう。


「本日当主様はご入り用に付き、後日お会いになります。それまでどうぞごゆっくりお休み下さい。」


夜に着いた俺達に嫌な顔一つ見せず頭を下げる侍女。


如何にも侍女って感じだ。


そういえば再会したジャンヌも同じ格好をしている。


何に目覚めたのかと思ったが、そういえばあの人侍女って言ってた気がする。




屋敷に通され待ち受けるはお子ちゃまな女の子。


人形みたいな顔立ちに、金髪縦ロールのひねりのない貴族顔。


白のドレスがもう如何にもだ。


2035年こんなキャラ漫画でだしたら、「古ッ、昭和かwww」ってなる。


困ったことに実在しているから笑うわけにはいかんのだが。


「初めまして。」


スカートつまんで45°のあれ。


「ワタクシ、プロテスト公爵家の長女マリアと申します。本日不在の父に代わり、アナタを歓迎致しますわ。」


「ええと、どうもご丁寧に。」


・・・


・・・


え?なに?


固まる空気。


ジャンヌに肘で突かれ、小声で怒られた。


「自己紹介!!」


あ、やべ。


「ああー三鍵愛詩っていいます。」


「マナウタ?名字持ちと言うことはどこかの御貴族かしら?服装もこの辺りでは見ないわね。」


「いえ、マナウタは名前でミカギが名字でして・・・ああ、生まれについては覚えてないので何とも。」


思い出した記憶喪失設定。


「あら、それはお気の毒に・・・大変失礼を。」


本気で哀れみの目を向けるおにゃにゃのこ。


お兄さん罪悪感で一杯です。


「何はともあれ本日はお疲れでしょう。本日はごちそうさせて頂きますわ。」


え、公爵さんと飯食うの、俺?


何か嫌だな。


テーブルマナーとか全然知らないんだが。




変な緊張感の中、夕食の席に着く。


如何にもなホールっぽい食堂、これでもかって感じの長テーブル。


「さあ、アナタはワタクシの親友、いえ我が家の恩人です。遠慮なくお召し上がり下さいな。」


そして鉄板な見た目のおにゃにゃのこ。


運ばれてくる食器は多分高そう。


なのに乗っている飯はふつー。


いや、良い食材使ってんだろうなって感じは出てる。


赤ワイン・・・酒の味が分かる訳ではないが、ホテルのヤツと違って確実にワインだ。


まずは前菜。


やっぱり謎野菜。


日本と生態系が違うからこればっかりは仕方がない。


スープ。


また塩味。


魚介がたっぷりと入っていて、出汁が効いている。


これはそれなりに美味い。


でた、パンのような塊。


メインディッシュにステーキ。


タレはなく塩と胡椒っぽい何かでどうぞだ。


肉は上質とはいえないが、公爵の娘も同じものを美味しそうに食べているから多分上質。


デザートは無難にフルーツ盛り。


・・・何か拍子抜けだ。


いきなり来ておいて、もてなせや!!っていう気はないが、公爵家って位だからね。


なんかつい期待してたけど、庶民の味。


日本ならどこの家庭でも食べれるだろう料理レベル。


食事中あれやこれやとおにゃにゃのこに聞かれたが、覚えてない、つか大体流した。


何故ドラゴンを殺せるのか聞かれても困る。


銃の仕組みなんぞ知らないし。




まあ、食べられただけありがたいと思おう。


食料は魚釣って節約したとは言え、それなりに減っている。


あと28食だ。


この国の金銭事情は知らないが、何とか稼ぐ手段を考えて食料を買えるようにならなければ。


「先ほど父から手紙鳥で連絡がありました。帰るのに2週間程かかるとのことで、それまでは自分の家と思ってくつろいで下さいな。」


手紙鳥?


伝書鳩みたいな感じかな。


何にせよこれは助かる。


「ありがとう御座います。行く宛てもないので助かります。」


ここにいられる間に稼ぐ手段を考えよう。


他にも色々考えたいことはある。


ひとまず一っ風呂浴びて、


「身体を拭くときはお申し付け下さい。」


侍女の一言で察した。


ないぞ、この世界。




頭をお湯が溜まったタライみたいな木桶でジャカジャカ洗った後、身体を手ぬぐいみたいなタオルとお湯で拭き上げる。


風呂になれきった俺、衛生面がとても不安です。


まあ、文化レベルを考えれば妥当かもしれない。


ベッドに入りこの後の事を考える。


日本に戻るのはありだ。


親父もいるし、不幸だったわけじゃない。


ただ俺にゲートは開けない。


つまり完全な救助待ち。


来たら帰るが来なけりゃ帰れない。


割り切ってしまえば、よくある転位もののストーリーの中でもこのスタートは中々良い方じゃないか?


誰もが憧れる剣と魔法、というが技能の世界。


どうやら最強の存在っぽいドラゴンを討伐できる武力。


公爵家に何故か招かれ歓迎されている。


あとは良くある俺Tueeeをやれば、「何だアイツは?」って言われて一生安泰。


ただドラゴンと、じゃあもう一回戦いたいかっていうと話は別だ。


油断すればやられる。


攻撃力マックス、防御紙のステータスで倒せる条件は先手が絶対条件だ。


あらゆる状況で常にそれは難しい。


この世界にあるかどうかは分からんが、冒険者業は微妙かな。


一番簡単に俺Tueeeができる職種ではあるんだが。


兵士とかは論外。


戦争ダメ、絶対。


商人は才能がないし、何か特別な職人芸もない普通の大学生。


あるとすれば・・・やっぱり狩人の技能だよな・・・。


「ステータスオープン。」


-------------------------------------------------------

名前   = 三鍵 愛詩 (ミカギ マナウタ)

所属   = 日本

爵位   = なし

天職   = 狩人

先天技能 = 狙撃 矢作り 弓矢格納 素材格納

後天技能 = 異世界語 精神異常耐性 身体異常耐性

罪状   = なし

-------------------------------------------------------


・・・また増えてね?


・・・今度はいつだ?


ま、いいや。


矢を作って、撃ち、獲物を仕留めて持ち帰る。


正に狩人の為の技能構成。


やはり、この技能とドラゴンをも殺せる銃を上手く使って立ち回るしかないだろう。


今度ジャンヌに相談してみよう。


そうして俺は眠りに就いた。




あれから1週間程経つ。


当主とやらはまだ帰ってこない。


いや、早く買って来て欲しい。


無理。


ちょー無理。


トイレがぼっとんだった辺りから俺の心は折れ始めた。


風呂も何日我慢しろと。


最初はマシだと思っていた飯も、毎日同じもの出されれば感想は変わる。


飽きたわ!!


つかマシなの晩飯だけだし。


朝や昼のメインになるパンがアレだからもうしょうがない。


ダメ、衣食住全部ダメ。


もう無理です。


そもそも物語の主人公達はこの状況にどうやって馴染んでいるのだろう?


ダメだ、俺は主人公にはなれない。


そして気付いた。


ドラゴン倒せる力が何だ?ってことに。


現状打破する上で全く使いもんにならん。


・・・さて、本当にどうしよう?



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