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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
春恋編
7/41

毒舌少女の頼み事

前回のあらすじ川柳

    牡丹をね

      撫でると心が

         落ち着きます(字余り)

牡丹とのお出かけの翌日、俺は幸せと不安の渦に巻き込まれていた。

今日は部員の殆どが休みである。


山吹先輩と茜は家の都合。楓は風邪で休み。翌檜はサボり常習犯。という感じだ。

正直のところ、すごく嬉しい。静かに本を読むことができて、誰かに気を使うこともさほどない。

しかし、まだ後輩の二人が残っている。


後輩二人と、茜というメンツでいつも雑談しているから、茜がいない&他の部員がいないとなると3人いる中で一人だけボッチになってしまう。


とても寂しい(本音)

俺は別に人付き合いが好きなタイプではないが、二人が楽しそうに喋ってる中で孤立しているのは耐えられない。


しかし、部活をサボるわけにはいかない。だから仕方無くても部活に行き、重々しいドアを引く。

しかし、そこには誰一人いない静寂な空間が出来上がっていた。

やった!こんな日はもうないぞ!部員が誰一人として居ないなんて!


ハイテンションになって早速本を読もうとする。

その刹那、文化研究部のドアが開かれる。


「こんにちわー………てっ、なんで石蕗しかいないのよ」

そこに居たのは大悪魔皐月。俺を不幸に陥れる存在である。

皐月はすこし不機嫌そうな顔をしてこちらを見つめている。そのときに気がついた。…………牡丹がいない!


いつも皐月の傍らには牡丹が居る。どうやら昔からの親友らしく、一見最悪の相性とも見れる二人は何故かとても仲がいい。どんな過去があったのかは知らないが、運命というものが実際にあることを実感した。


「牡丹はどうした?」

「ああ、牡丹は親戚の家に行くだとかで帰ったわ」

おう………最悪の事態だ。皐月がいつもいつも罵詈雑言を飛ばしてきて、そのダメージを牡丹が癒やしてくれる。ということで今まで自分自身の平穏?を保っていた。

でも、牡丹がいないとなれば話は別だ。精神崩壊待ったなし。


「他の人たちは?まだ来てないの?」

皐月は部室に俺以外がいないことに気がついたらしく、俺に聞いてきた。

「皆休みだ」

「………………はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?嘘でしょ!てことは石蕗と二人っきり?嘘でしょ!?」

まぁ、そうなるわな。皐月は俺のことをあまり好ましく思ってないから、二人でいるのは最悪と言えるだろう。


「まぁ………しょうがないわ。誠に遺憾だけど一緒にいてあげるわ!」

超上から目線で皐月は言い放った。誠に遺憾なのはこっちである。皐月と二人っきりとは精神的ダメージのことを考えたらリスクが高すぎる。


皐月はやれやれという感じで()()()()()()()()…………え?

「なんでわざわざ向かいに座んだよ………」

皐月が向かいに座る意味がわからない。嫌っているなら他の所にいればいいのに。

「暇だからお話でもしてあげるわよ!感謝しなさい!」

ここでも超上から目線だった。なんなの?あなた常に上に居ないと気がすまないタイプ?


…………でも、3人いて一人あぶれるという事態にならなくて良かった。相手が牡丹ならもっと良かったんだが。

でも、昨日の今日ではきっと恥ずか死するので、それを踏まえると皐月で良かった感じがする。


「そういえばさー………昨日のこと牡丹から全部聞いたわよ」

「ぶふぉあ!!」

思わず吹いてしまった。

アイェェェェ!?何で?牡丹さんどうしたの?

「楽しそうに……ニコニコしながら話してたわよ?名前呼びになったーとか………()()()()()()()ようになったーとか」

『撫でてもらえる』のとこで一気に視線が冷たくなった気がした。まさか牡丹があのことを話すとは思わなかった。


「それでさぁ………少し頼みたいことがあるんだけど………」

皐月は気まずそうに俺にお願いする。上目遣い止めろ!なんで後輩二人の上目遣いってこんなに可愛いんだよ!


「内容によっては聞いてあげなくもないぞ」

なんとか承諾の心を抑えて行った言葉は断りではなく考えるという言葉。俺チョロくね?


「もうすぐ体育祭じゃない?たからさ………」

皐月は遠慮しているのか、躊躇っているのかわからないが、中々了見を言おうとしない。

「練習に………付き合ってほしいんだけど………ダメ?」

皐月は上目遣いでそう聞く。

「いいともー!」

脳内会議が省かれて、即決になってしまった。



「練習って言っても何やんだ?」

早速運動場に来た俺と皐月だが、特に何をやるとも聞いていないので、行動ができなかった。

「……………二人三脚」

「………まじで?」


二人三脚と聞いて驚いた。皐月は運動が得意なので、もっと素早く動けるような競技にすると思った。

「なんで二人三脚やるんだ?他にも色々あんだろ?」

結構不思議に思い、とりあえず聞いてみることにした。

「茜が出ないから………これにした」

「あ〜なるほど………そういうことか」


何故茜が出ないから二人三脚に出るのか。それは容易に想像できる。

茜は『運動兵器』という異名がついており、数多の学校記録を更新。様々な運動の適性があり、特に陸上競技はプロに匹敵するとかなんとか。


中学生のときは陸上部に入っていたのだが、なぜ高校に上がって文化研究部に入ったかはわからない。

そんな茜は、運動祭でもその異常な運動能力を発揮し、ほとんどの競技で一位をとっている。しかし、二人三脚などの人に合わせる競技はあまり好きではないらしく、出場を控えている。


「でもどうせ牡丹と出んだろ?なら牡丹と練習したほうがいいんじゃないか?」

「な……そ、それは………牡丹とやる前に慣れるためよ!いいから、早くやるわよ!」

「えー………拒否権なしかよ………」


まあ、皐月がお願いするなんて珍しいから付き合ってやるか。

そして、俺と皐月は足に紐を結んだとこまではいい。

「…………身長差で肩が掴みずらい」

「……………殺すわよ?」

あの……すみません、皐月さん。そんなゴミを見る目でこちらを見ないでください。


俺と皐月は身長の差がかなりあって、皐月は俺の腰を掴めるからいいけど、俺が皐月を掴むには屈まなければいけない。

(………これで練習になんの?)

しかしそれを言ったら本当に皐月に殺されかねないので、黙っておくことにしよう。


掴みづらくはあるが、掴めないことはないのでそのままで続けることにした。

「よし。それじゃあ行くわよ!結んでる足から出しなさい!せーのっ!1・2、1、うわっ!」

「危ねえ!」

早速スタートしたはいいものの、皐月が盛大にコケそうになっていたためそれを受け止める。

その結果、俺が倒れてしまいそのまま皐月も一緒に倒れる。


「いってぇ……大丈夫か?皐月」

「えぇ…あんたが下敷きになってくれたから………痛……」

「ん?どこか痛むのか?」

どうやら転んだことで皐月がどこかを痛めてしまったらしい。

「ぜんぜん………これくらい大丈夫よ」

しかし、皐月は強がって大丈夫だと言っている。

「いいから、ほれ。どこ怪我したんだ?」

皐月の体を抱えて、怪我をした場所を確認する。

「……………足首」

「そっか………一先ず、保健室行くか」


このまま怪我を放置していてもしょうがない。とりあえず保健室にでも行って、応急処置でもしたほうがいいだろう。

「別にいいわよ………これくらい」

「いや、駄目だろ。このままにして悪化でもしたら牡丹と二人三脚出られないぞ?ほら、さっさと行くぞ」

皐月の拒否を無視して立ち上がる。皐月を抱えていたので、もちろんだっこのようになってしまう。

「!!!、一人でも歩けるわよ!」

「す、すまん」


怒られてしまったが、皐月の顔は真っ赤になってとても可愛らしかった。



「失礼しまーす……ありゃ、先生いねぇや」

俺達は保健室についたが、先生がいないことに気づき、とりあえず皐月を座らせることにした。

「ん……ありがと」

さてと、先生がいないのなら申し訳ないが勝手に包帯とかでも貰っていこう。


「んしょ……こんなもんかな?」

とりあえず湿布と包帯を貰っていこう。これくらいなら後で言えばいい。

「別に待ってればいいじゃない。無理に処置する必要ないわ」

「いや、そのままなら痛いだろ。早めに処置したほうがいい……すまんが、足捲ってもらってもいいか?」

正直それを言うのは恥ずかしかったが、処置をするためにはズボンが少し邪魔である。

「………しょうがないわね」

そう言ってズボンを捲くる皐月にびっくりした。驚くほど素直である。てっきり『変態!!』とでも言われると思っていた。


「じゃ、まず湿布貼るぞ」

冷えた湿布を皐月の足へと貼ってやる。

「ん………」

皐月は冷えた湿布を貼られて少し驚いたようだ。

そのまま包帯を皐月の足に巻いてやる。

「………よし!こんなもんかな?」

応急処置は終わり、皐月は俺の巻いた包帯をまじまじと見る。

「………結構うまいのね」

「昔から怪我した茜に同じことしてたからな。もう慣れたよ」


俺と茜は幼馴染で、昔から運動ばっかりの茜はよく怪我をしていたので、何度も処置することになってもう慣れてしまった。

「…………ありがとね」

皐月は小さな声でお礼を言ってくる。

いつもとは違う雰囲気で少し驚いた。

「おう、痛かったら無理せずに言えよ」

そう言うと、皐月は妙に静かになる。


「あんた………な、何やってんのよ」

皐月は顔を真っ赤にしてぷるぷる震えだす。

なんでだ?と思っていると、皐月の頭に俺の手が乗っていることに気がつく。

…………あれぇぇぇ!俺まさかまた無意識に頭撫でてた?嘘だろ!?

「す、すまん!無意識で、手が勝手に!」

我ながら小学生並の言い訳をしたと思っている。咄嗟のことで思いっきり気が動転している。

「………待ちなさいよ」

「ふぇ?」


そう言って皐月は俺の手を持って、再び頭の上に乗っける。

「もう一回………撫でて?」

その姿は昨日の牡丹のようで、おねだりしているようなその姿が妙に俺の心を燻る。

「お、おう………こうか?」

そのまま昨日のように皐月の頭をモフモフしてやる」

「ん………あ………き、きもひぃ」


あ、これ昨日の牡丹と同じ感じだ。

呂律が上手く回っておらず、とても顔が幸せそうになっている。

「ふわぁ………これぇ、たしきゃに病みつきになるわぁ………」

皐月はおっとりしたような顔でそう言う。

そんな姿は少し怖かった。いつもツンツンしている皐月が急にデレて、思わず猫を連想してしまった。


「牡丹が言っててゃのも納得だわぁ………これはやびゃい………だめになりゅ」

あ、これ恐怖じゃなくて父性だわ。また俺の父性が爆発しそうになる。

「は!だ、だめぇ!これ以上したら中毒になる!」

そう言って皐月は俺の手を払いのける。

「お、おう………その、気持ちよかったのか?」

そう聞くと、皐月は真っ赤になって俯いたままコクンと頷く。


「…………牡丹みたいにまたしてやろうか?」

「…………うん」

正直、今の皐月の姿が本物かどうか疑ってしまう。俺の後輩がこんなに可愛いわけがない!

しかしなぁ………皐月のこの姿を見ると何故か意地悪したくなってくる。

殴られるの承知でいじってみるか。

「そうだなぁ………牡丹みたいに名前呼びしたら、またしてやるぞ?」


それを聞くと、皐月はとても顔を真っ赤にして。

「ふぇ!?え、そ、そんなこと………そんなこと!」

そして皐月は少し躊躇って。

「…………ま………正木……」

「…………ふぇ?」

驚愕!まさか皐月か本当に名前呼びするとは思わなかった。

なんで?なんで撫でること提示するとすんなり受け入れるの?そんなに俺に撫でられるの気持ちいいの?


そして俺は、牡丹にしたように名前呼びの初回報酬として撫でてやる。

「ちょ、え!?やめ………だ、だめになりゅ………たしゅけて……」

そんな皐月の姿はとってもとっても可愛いと思いました。


その後、平常運転に戻った皐月に殴られたのは言うまでもない。



皐月を撫でたあとの次の日。

今日はいつも通り皆集まっていて、いつものように動いていた。

「ところで石蕗。昨日はどうしてたんだ?」

山吹先輩は、昨日家の用事で帰ってしまったので、昨日のことを確認してくる。

「ああ、昨日は皐月と体育祭に向けて二人三脚の練習してましたよ。と言っても殆どできませんてましたけど」

「二人三脚?」

そう聞いて、山吹先輩は頭を傾げる。


「ちょ!正木!それは!」

「あれ?皐月ちゃん、なんで正木さんのとこ名前呼びしてるんですか?それになんで二人三脚の練習を?」

牡丹は疑問に思ったらしく、頭に疑問符を浮かべる。

「そ、それは………」

「あれ?牡丹、皐月と一緒に二人三脚出るんじゃないのか?」

たしか昨日皐月が練習した目的は牡丹と二人三脚やる前に慣れるためだったような………。

「いえ。迷惑かけたくないので断りましたよ?私運動苦手なので」

「え?じゃあなんで昨日は………」


そう言うと皆皐月を見つめる。

「えっと………その………それは………」

皐月は顔を真っ赤に染めて、喋るのを戸惑っている。

「正木と………出ようと思ってて………でも…言えなくて………」

「あっ」

見た声を揃えてしまった。今の皐月の言葉ですべてを察した。

「う…………」

その時、急に皐月の様子がおかしくなる。

「うわーん!!正木のバカー!!」


そう泣きながら皐月は出ていってしまう。

「あ!皐月ちゃん!待って!」

出ていってしまった皐月を牡丹が追いかける。

部室が静寂になる。その静けさが逆に気味が悪い。

「………正木?」

その時、茜が俺をジト目で見る。

「………皐月ちゃん、可愛かったですね」

楓が意地悪そうに言った。

同感だ。


その後、皐月と牡丹は無事に帰ってきて、皐月は俺に二人三脚に出ようとお願いしてきた。

物凄く顔を真っ赤にしていて可愛かった。

速攻で承諾した。

その速さは、茜が軽く引くぐらいだった。

毎度同じく萩原慎二です!

今回は皐月回となりました。

ツンデレキャラは書くのが初めてなのでとても話の作りが変だったと思います。

温かい目で見ててくれれば安心です。

誤字脱字の報告や、感想等も受け付けております。

次回は誰の回となるのでしょうか?(棒読み)

次回予告川柳

    牡丹はね

      考えた末に

         決心する(珍しくまとも)

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