2-3:さうろんちゃんねる②
(ジングル……陽気な音楽が流れる)
(アイキャッチ……ポップな字体で〝さうろんちゃんねる〟)
「はい、七年間まったく変わっていないジングルも流れたところで、ダンジョンについて改めて話していきましょうかね。ほとんどはダンジョンウィキの初心者向け情報と内容かぶってるけど、そのへんは本場の宇宙人が語る臨場感を付加価値としてもらえればね。
ちなみに、こっからは画面の右側に図説とか出していく予定です。そのへんアシスタントのテンカイくんがあとで編集してくれるはず。それありきで話すところもあるけど、わかりづらかったらテンカイくんのせいです。文句は彼のツブヤイターに書いてくれよな!
では、参りましょう。
サウロンくんの宇宙一わかりやすい本家ダンジョン入門! 888!
と……本題に入る前に、軽く僕の自己紹介をさせてくださいな。なんだよ、もったいつけんなよ! なんて声が聞こえてきそうですが、一応大事っちゃ大事なので許してちょ。
さて、僕ことサウロンは、八年前に地球から六万五千光年離れたとある惑星からやってきました。星の名前はペイロ。だから僕はペイロ星人だね。
性別は男。身長は百八十センチ、体重は五十八キロ。こないだの健康診断でちょっとBMI低すぎって言われました。年齢は、地球の時間尺度とはちょっと異なるから、永遠の二十歳ってことで。帰化したんで国籍上は二十八歳ですけどね、なんかリアルな数字。
ペイロについてはねえ……あんまり語れないんですよ。まあ、地球と同等かそれ以上の科学文明を持った人型生物が繁栄した星、そういう風に認識してもらえれば今はオッケーです。そのへんの話は、まあ気が向いたらまたいつかってことでね。
じゃあ、なぜ地球に来たかっていうと、この地球で〝赤羽ファイナルダンジョン〟の案内人をするために、ダンジョンと一緒に来地? してきたというわけです。
八年前、赤羽上空に現れたあの飛翔構造体――通称ダンジョンは、この地球よりもペイロよりも遥か昔の遥かに科学技術の発展した星でつくられて、それから何十万年、いろんな星を渡り歩いてダンジョンを運営してきたそうで。ここに来る前はペイロで長年ダンジョンやってたんだけど、一身上の都合で転勤もとい転星することになりまして。それで地球にやってきたってわけだね。
ただ、いきなり地中深くにダンジョンが現れました! ってだけじゃ人類のみなさん大混乱だし、ってことで、僕が案内人というか看板男的な? そんな感じでこうしてユーチャンネラーとかやってるわけです。
じゃあ、そもそもダンジョンってなに? って話ですよね。今やほとんど常識みたいになってますけど、改めてご説明すると。
ファイクエやったことあります? ファイナルクエスト。個人的には7か5が好きなんだけど。ダンジョンってあるでしょ、地下の洞窟とか迷宮とかいうやつで、ゲーム用語では『モンスターとか危険なのがあってお宝が眠ってる施設』的な、そんな感じです。
ダンジョン! 夢広がる冒険の迷宮! 待ち構える凶悪なモンスターの数々!
行く手を阻むトラップやギミック! めくるめく繰り返される出会いと別れ!
試される勇気と愛! その手に掴むは財宝や叡智!
……的な。伝わるかな? 八年前のこの熱量。
赤羽の地下一万メートルに埋まっているあの黒い円柱――もう円柱じゃないけど、あれはそういう代物なんです。んでもってダンジョンは、みなさんにプレイしてもらいたがっているのです。私の中に入って! 私をめちゃくちゃに攻略して! 下ネタじゃないよ?
つまりそれが、ダンジョンと僕がこの星に来た理由なのです。地球人のみなさんにぜひ挑戦してもらおうと、二人そろって何万光年の旅をしてきたわけです。
ただまあ、もちろんお宝だけじゃなくて相応の危険やリスクもしっかりありますし。それも踏まえて、地球人類としてダンジョンをプレイするかどうかの判断はお任せしたわけですがね。そしてみなさんはプレイすることを選んだ。そうして今に至るってとこですかね。
という感じで、ダンジョンと僕の背景についてはざっくりおわかりいただけたでしょうか。
じゃあ、実際ダンジョンってどんなとこなの? っていう質問にお答えすべく、その基本構造について語っていきましょう。
赤羽ファイナルダンジョンは、北区赤羽の地下深く、およそ十キロ下に埋まっています。一番地表に近い一層から始まり、二層、三層……と下へ下へと潜っていく形ですね。
最初に赤羽上空に現れたときは、塔みたいな筒みたいな構造だったと思うけど、あのあと地面の下でガッチョンガッチョンと大規模なリフォームが行なわれまして。イメージとしては蟻の巣みたいな、一つ一つの階層が巨大な部屋になっていて、各フロアはエレベーターでつながっている感じっすね。
各階層のレイアウトはまちまちです。基本的に各階層は五つほどの特徴の異なるエリアで構成されています。
たとえば一層なら、半分観光地にもなっているエリア1の〝ハジマリ平原〟、その隣にはエリア2の旧市街地とエリア3の湿地帯が並び、そこを抜けるとエリア4は森林地帯、そしてエリア5の迷宮には二層へと続くエレベーターがある、という具合っすね。今、横に画像出てますかね?
それぞれのエリアは五キロとか十キロとか、そんくらいの大スケールになっています。それが五つつながって一つのフロアってことで、ぶっちゃけ相当広いです。僕なんか何日かかっても二層までたどり着ける気がしない。国交省の人、電車かバス通してもらえないっすかね?
フロアの天井はぺかーっと光っていて、曇ったり雨が降ったり、時間帯によって暗くなったりします。つまり天候や昼夜があるんですね。ダンジョンって言うと暗い洞窟や迷宮っぽいイメージだと思いますが、そういうエリアもあるけど、各階層ごとに一つの小さな世界を構成している感じです。
どうですかね、ダンジョンのこと、イメージ湧いてきましたかね?
そんな広大なダンジョンを下へ下へ潜っていった先、最深層は何層なのか、そこになにがあるのかって、当然疑問ですよね。
それは……行ってみてのお楽しみ! 冒険の結末をネタバレしちゃ台無しでしょ?
ラスボス、エンディング、クリアした者だけが得られる報酬……うひゃー、冒険の果てにはなにが待っているんでしょうねー、うきうき!
はい、ダンジョンの基本情報についてはざっくりこんな感じですかね。もっと重要なこととかいろいろある気がするけど、気のせいだと決めつけて次行きましょう。
次はその二、ダンジョンを冒険するプレイヤーについて! 888!」




