アイマイナマサユメ
最近よく見る夢のパターンについて少女は自室で考えていた。
最近の夢は決まって「殆どよく覚えていないが、ある一部分だけはっきりと記憶に残っている」というもの。
夢の内容に一貫性はないものの、この傾向だけは全て一致していた。
「…今日は何が起こるのかな。」
浮かない顔をして少女は呟く。
そう。夢にはもう一つ…確証は持てないものの、パターンがあった。
「はっきり記憶に残っていた部分は、自分の近い場所で何らかの形で正夢になる。」というもの。
夢で「飛行機が墜落」すれば、現実で「飛行機が近くの海に墜落」し
夢で「自動車事故」に遭遇した場合、現実で「交通事故のニュースで友人が巻き込まれた」事を知る。
という具合である。
最初は単なる偶然だと思っていた。しかし、自分の周囲或いは自分と関係が深い人物が巻き込まれている事が多いため
こんな都合良く自分の周囲ばかりが巻き込まれるわけがない。ならば、「これは正夢なのではないか」と考え始めたのだ。
夢には本当に一貫性がなく、「海で泳いだ」夢を見たかと思えば、「大きな何かに潰される」夢を見た事もあった。
これはそれぞれ「海水浴」「蚊を叩き潰した」という形で正夢となった。
「…怖い。何時か正夢に自分が殺されそうな気がする…。」
不安そうに少女は呟く。突飛な事は今まで起きてはいない。
しかし、今日見た夢は今までとは異なり
「何者かに刃物で刺される自分」の部分を明確に覚えていたのだ。
正夢になるとすれば、「誰か」が「何かしらの存在」に「何か」で刺されるということになる。
あまりにも条件が多すぎるのである。
死なないパターンも数多くある。が、死ぬパターンも存在する。
身内が死亡するかもしれない。考えれば考えるほど可能性が生まれてしまうのだ。
彼女はどんどん悪い方向に考えてしまっていたが、無理もないであろう。
どういう形で正夢になるかは予測不能なのだから。
「こんな直接的に敵意のある夢なんて初めて見た…。嫌だよ…。誰も殺されたくないよ…!」
彼女は願う。どうか大切な人を失わないで済みますように…と。
そして、その願い通り大切な人は誰も失わずに済んだのである。
曖昧な正夢は
最も正確な正夢として
その願いを叶え
更にはもう二度と
曖昧な正夢を
少女が見ることも
なかったのである。
良かったね。