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遊戯姫6


「朝」


 トラワレ姫とカードゲームをしたその翌日の朝、アソビタ姫はぱっちりと目を覚ました。

 アソビタ姫の作ったカードゲームは、一度やるとカードが消えてしまう。捕まえた魔物を実際に戦わせてやっているため、カードバトルにより残機が一個減った魔物は封印と呪いから解放されてもとの住処に戻ってしまうのだ。


「さて、カード、集め」


 もちろん悪いことをしているという自覚もない姫は、今日もカード集めに精をだしてトラワレ姫と遊ぼうと決めていた。

 窓の外を眺めてみると、魔王城は再建が進んでだいたい元通りになっていた。女大工のやる気の差か、崩れる前より細かい部分が適当だが、十分にお城と言える出来の建物となっていた。彼女は彼女で、勇者が挑む用のダンジョンを作らなくてはいけないので魔王城にばかり時間を割いているわけにはいかないのだ。


「どこ、行こ、かな」


 今日はどこでどんなカードを集めるか、魔界の魔物の生息マップを思い浮かべながら思い悩む。

 昨日で全部のカードを使ったわけではない。余剰のカードは大量にあるので他のデッキも組もうと思えば組めるのだが、やはりカードを集めるの楽しいのだ。

 それと贅沢を言えば、あの腕にがっちゃんと装備するやつも何とか手に入れられないかだろうかと模索していた。そしてガーゴイルあたりをいい感じに溶かしてこねれば作れるかもしれないと名案を思い付いた時だった。


「姫」

「あ」


 窓から不意打ち気味に邪神司祭が入り込んだ。司祭に限っては昨日は封印から解放していなかったのだが、どうやら自力で封印から抜け出したらしい。

 ばっさばっさと翼をはためかせ、黒いウロコがうっすらと赤熱している。どうやら抑えられないほど感情が荒れ狂っているようだった。

 怒られる。それを悟ってとっさに逃げようとした姫だったが、外に続く扉を開けたら目の前が壁で、きょとんとしてしまった。自分の傑作魔王城を崩壊させられた恨みを持つ女大工さんの犯行により、姫の部屋は物理的に封鎖されていたのだ。

 思わぬ障害に、百戦錬磨の姫らしからぬ空白の隙が生まれた。


「おしおきじゃぞ、姫」


 その隙を付き邪神司祭が口から吐き出した炎獄が、空間隔離も突破してアソビタ姫を部屋ごと吹っ飛ばした。








 残機が一個減って目を覚ますと、そこは邪神教会だった。

 そこには、自分のテリトリーでアソビタ姫をお説教する準備万端の邪神司祭がいた。

 アソビタ姫は逃げようとした。

 しかし回りこまれてしまった。

 邪神司祭がそのにょろにょろとした巨体でぐるりとアソビタ姫の周囲を物理的にふさいでいたのだ。邪神司祭のうろこは魔法を遮断する特性もあるので、空間転移も使えない。


「なにか、言うべきことがあることは分かっておるな?」

「む」

「む?」


 逃げられないと観念した姫は、観念して弁明をする。


「むしゃくしゃして、やった。反省は、してる」


 すごく、怒られた。








 アソビタ姫は反省した。とっても叱られ改心した。デュエルはだめだ。司祭に怒られるからだめだ。作り上げたゲームシステムはもったいないが、しばらくは封印していざという時にまた開催しようと潔く諦めた。

 カードゲームはできない。またもや暇になったアソビタ姫は邪神と交信した。なんかいい遊びないかなと聞いてみたら、いくつかの落ち物ゲームを紹介された。異界で世界的に流行ったジャンルだ。

 もちろん魔界にゲーム機はない。ゲーム機はないから、今回みたいな騒動は起きないよねという邪神なりの気遣いだった。

 姫は特にストーリー性がある落ち者ゲームに興味が惹かれた。楽しそうだ。是非ともプレイしてみたかったアソビタ姫は考え、閃いた。


「スライム、使えば、ぷにょぷにょが……」


 直方体の巨大なガラスのケースを二つ用意し、水鏡を作って水面に遠方を投影する。投影地ではそこらへんで捕まえた罪なき住人スライムに色を塗ってランダムで落としていく。そして同じ色が揃った瞬間に生贄召喚魔法を発動。透明にしたスライムが相手側に降り注いでもらうように頼むのだ。

 もちろん、スライムの動かし方もぬかりなく考えてある。スライムはコントローラーで操る。それは絶対条件だ。

 それを達成するために、空中浮遊でスライムを操る魔術師を用意。そこらへんで洗脳してくれば問題はない。手元のコントローラーと連動してスライムを空中浮遊で操るギミックになってもらうのだ。コントローラーは、そこら辺の動く鎧を溶かしてそれっぽい形になってもらうように頼めばできるはずである。

 完ぺきだった。

 そこらへんのスライムと魔術を使えるメイジ系の魔物と動く鎧しか不幸にならない完璧なゲームシステムメイキングだった。


「よしっ」


 名案を思い付いたアソビタ姫は、るんるん気分で歩き始めた。

 そこにインドアの遊びを実現する手段がある限り、姫は止まらないのだ。


「ぷーにょぷにょぷにょぷーにょぷにょ!」


 ご機嫌に桃色がかった銀髪を揺らし、アソビタ姫は夢の実現のためにスライム狩りに出かけた。

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嘘つき戦姫、迷宮をゆく
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