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そのⅩ
車の向かった先は、水野原市のはずれにある廃工場でした。
「先生、本当にやるんですか?」
千紘は恐る恐る訊いています。
「当然だ。それに美晴を見てみろ。」
美晴は犯人の戦闘用に渡された杖を振り回しているところでした。
「あの子は特別ですよ。私には勇気がありません。」
千紘はうらやましそうに美晴を見ています。
「千紘、お前は水野原の選抜クラスにいるんだぞ。」
「しかし…。」
すると先生は千紘の背中をバンバンとたたいて、
「俺は水野原の生徒を信じている。だから大丈夫だ。」
そして先生は時計を見て、
「おい、美晴。ちょっと来い。最後の打ち合わせをするぞ。」
すると、美晴は杖を腰に取り付けたポーチにしまい、先生のところまで来ました。
「いいか、二人とも。おそらく犯人はこの工場の真ん中の部屋にいるはずだ。先生は北の入り口から突入するから、二人はそこの南の入り口から突入してくれ。それでは健闘を祈る。」
そう言って先生は建物の反対側に走っていきました。
「それじゃあ千紘。私たちも中にいこう。」
「うん…。」
美晴は千紘の手を引いて中にはいっていきました。




