g星 海洋調査
フィッシュマンの調査は順調に進んでいた。今日は反重力飛行スーツを着用
して、海洋を超低空飛行で飛びながら、気ままに調査する予定だ。
赤色矮星グリーゼ581gは快適だ、全体の気候は温暖で大気もきれいだ。
ポンドがリゾート惑星にしたい気持ちがよくわかる。この星の情報がオープン
になれば、銀河中の金持ちが集まってくること間違い無しだ、
反重力飛行スーツは布ほど柔らかくは無いがスマートな宇宙服だ、進化した
カーボンナノチューブの軽量素材、重量は鉄の1割、強度は鉄の20倍、
軽くて強靭な素材だ。一見動きにくそうに見えるが、心配はない、内臓の
ロボットが運動をアシストしてくれるので、中の人は僅かな力を加えるだけで、
何もかも飛行スーツがやってくれる。
地球の重力であれば質量10トンの調査車両を軽々と持ち上げることができる、
赤色矮星グリーゼ581gは地球の3倍の質量があるため、この星で物を動かす
のには地球の時を上回る3倍の力が必要になる。
反重力飛行スーツを着用したフィシュマンはスーパーマンになった気分だ
速度0で上空ホバーリングから、超音速マッハ5まで自由自在に飛べる。
宇宙に無限にあるダークエネルギーを使っているため、切れる心配がない、
たとえ宇宙空間で迷子になっても無限に飛行だけは続けられる。
大気圏内を超高速飛行すれば、スーツの表面温度は千度を超すが、スーツ内
の温度は一定に保たれている、それは宇宙空間でも同じ、優れた飛行スーツだ。
1ヶ月のポイント調査で、この星は安全だと結論付けられた。護衛兵は引上げ
現在は100名の研究者がチームごとに分散し、割り当てられた研究調査を行
っている。調査は生物学だけではない、地質、気象、資源など、あらゆる調査
を選ばれたチームが行っていた。
赤色矮星グリーゼ581gは陸地が約3割、残りが海だ、この星の海は地球
の海と比べると色が濃い、濃緑色の塩水だ、海水の質量は地球の海の120%、
海水の分析はまだ始まっていないが、海水の成分や微生物の量が地球とは随分
違うようだ。これでは浮くのは簡単だが、潜るのが難しい、浮力が大きくて
沈まない、重力の影響で水圧が随分高い。
「取りあえず、大まかに飛行し、概要を掴もう、今日は赤道からだ。」
フィッシュマンの調査は午前6時から始まった。
今日の持ち時間は12時間ある、18時までに基地に戻れば良い、
少々遠くに行っても、マッハ5を出せば、1時間以内に戻って来れる。
「大型海洋生物を見つけたい、マッハ0.5で、高度5百メートル、時間の許
すかぎり飛んでみよう。」
飛行を始めてから、30分、まだ大型生物は見つけていない。海面に目を凝
らし、ヘルメットのモニターを注視しながらフィッシュマンは飛行を続けた。
間もなく50分になる、
「ブッブー」
警告音だ、飛行スーツの探知機が大型生物の群れを見つけた。
「現在地から北北東約5キロ、すぐ近くだ。」
見つけた、意外に大きい群れだ。フィッシュマンは減速し、群れの上空で
ホバーリングにはいった。群れは500頭以上いる、大きいのから小さいのまで、
小さいのはたぶん子供だろう。最も大きな生物は全長500メートル以上ある、
子供でも大人のマッコウクジラより大きい。
「これは圧巻だ、凄い発見だ。」
フィッシュマンは群れの上空でホバーリングを続けながら、目視で調査を
始めた。この飛行スーツは音を発しない、音は音速を超えた時の衝撃波だけだ、
大型生物がフィッシュマンに気づく心配はないが、刺激を与えないよう注意した。
生物の100メートル上空まで降りてきたフィッシュマンは、
「愉快な生き物だ、背中にヤシの木の林ができている、海底に潜らないで、
ズッと浮かんで生活しているのだろうか?」
上空から背びれだと思っていたのは、鯨の上にできた林だった。
子供の背中は綺麗で、ほとんど何も生えていないが、大人の生物は何がしか
の木が生えている、大きい鯨の背中はまるでジャングルだ。群れは僅かに入れ
替わるだけで、殆ど移動しない、集団でのん気に日向ぼっこ・・
「全く、変てこりんな星だ。」
例によって、飛行スーツのスキャナーで子供をスキャンしてみた。
「陸上動物と同じだ、此方も臓器が全くない、骨格だけだ。」
「全く、訳が分からん、生物学の常識が全く通用しない 他の星系調査でも
こんな報告は聞いたことがない、何なんだだ、この星は・・」




