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Remain there 有りのままで  作者: 一語 大福
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有りのまま!

 赤色矮星グリーゼ581gが遠くなって行く、ハンクの視界から完全に消えた。


 ホモサピエンスの移住計画にこの船の大勢のクルー達が犠牲になった。

ハンクはマザーが考えている計画の意味がもう一つ理解できなかった。

 なぜ、冷凍保存されていた精子や卵子を処分して、永久に歴史から消す道を選ん

ではいけないのか、改良してまで復活させる必要があるのか、解らない。


 多少遺伝子に手を加えたところで、共存性の高い星に移したところで、いつ

ホモサピエンスの残虐性が復活するか解った物ではない。

 g星に残ったスワン達の子孫が、いつの日か我々が運んだホモサピエンスに

滅ぼされる、そんな日が来ない保証がどこにある。

 ホモサピエンスの絶滅が有りのままであれば、それが一番良いのではないか、

何のための移住計画なんだ。


「ニュクス、あんたはマザーの計画を正直どう思う。

ホモサピエンスが赤色矮星グリーゼ581gで、本当に大人しい動物になると思う

か、俺にはどうしても信じられない。この計画が外部に漏れれば、マザーの地位さ

え脅かすのではないか、それまでして、長い年月を掛けて、なぜマザーはこの計画

に拘るのだ。」


「私はその件に答える立場にはありません、知りたければ直接マザーにお尋ね

ください。」


「マザーに聞けないから、ニュクスに聞いているのじゃないか、解らん奴だ。」


 ハンクはこの件はこれ以上踏み込むことが許されない事は解っていた、しかし、

このままでは犠牲になったクルーが浮かばれない。


 ミネルウァは強さは神の如しだが、何処か幼い、マザーの信頼が厚くてもミネル

ウァは詳しい事を聞かされてはいないだろう。

 そのミネルウァは傷ついていた、年頃の娘であるのに化け物の様な自分が堪らな

くいやだった。こんな身体にしたのはあのハンクだ。

 だが、ハンクはミネルウァに寄り添い、父親のように温かく見守ってくれる。

両親の敵であるハンク、血の通っていないアンドロイドのハンク、それでもミネル

ウァはハンクが大好きだった。

 ハンクはミネルウァにポンコツと呼ばれようが、何と貶されようが平気だ、ハン

クもミネルウァが大好きだし、殺されようが、どう扱われようが、ミネルウァを守りたい、この子の為に尽くしたいと思っていた。


 ニュクスとミネルウァの関係は地球を出発する前まで逆戻りしてしまった。

ニュクスは事務的で冷酷な人間に戻ってしまった、オデットがいた時とは別人、

ミネルウァに歩み寄る事は一切なかった。


 三か月余りの長旅を終え、ハンク達は地球に帰って来た。


 どうせ処分されるのだと思っていたハンクは、マザーに疑念を直接尋ねた。


「ホモサピエンスを復活させる理由ですか、アフリカで突然変異で産まれた最初の

人類、その後の旧人類は問題ありませんが、ホモサピエンスが石器を持って以降、

彼らは容赦なく他の生き物を殺し、食べ始めました。それが生物大量絶滅の始まりです。その殺戮には生物共存の考え方は微塵もありません。

 食べる為に殺すだけならまだしも、娯楽や毛皮、象牙を取るため大量に殺しまし

た、知性のある生き物とは思えない所業が続き、彼らは絶滅しました。


 ハンク同様、私も絶滅したホモサピエンスを許せない気持ちはあります。

しかし、ホモサピエンスは産まれた時は白紙状態です、学習しなければ生きる事さ

えままなりません、それが生存の方法を産まれながら知っている他の地球の野生生

物と大きく違う処です。

 ホモサピエンスの子供は学ばなければ生きる事さえ満足にできません。

文字も学習もさせない、文化を消し、ホモサピエンスを白紙にしてやり直させる。

 その上で、共存しなければ生きられない環境に移せば、全く違うホモサピエンス

に生まれ変わるのではないかと考えました。

 恐竜も哺乳類型爬虫類もマンモスさえも絶滅して、復活できていません、ホモサ

ピエンスを地球でそのまま復活させることには私も賛成しません。

 あれだけの知能が有った生物です、別の星でその星の生き物に生まれ変わること

ができるのではないでしょうか、これが結論です。


 ミネルウァには活躍いただきました、今後も私に力を貸していただきたいと思っています、レッドアローは戦艦に作り替え、ミネルウァに差しあげます。


 ハンク船長には大勢のクルーを失い、許可なくガンマ線バースト使った責任を取

っていただきます、貴方の処分を言い渡します。」


「ハンク、引き続きレッドアローに乗船を命じます、役割はミネルウァに一任します、彼女の指示に従いなさい、死ぬまでミネルウァを助けてあげてください。」


「このこの上ない、寛大な処分ありがとうございます。」


 死刑を覚悟していたハンクは心の中で泣いていた、ミネルウァと働けて嬉しい。


「良かったね、ミネルウァ、ポンコツとまた一緒で。」


 久しぶりに、ニュクスがミネルウァと口を聞いた。


「ありがとう。」


 ミネルウァは怒ったりしなかった、優しいハンクが可哀想だと思っていた。


 戦艦レッドアローは3年後完成した。ダークホールを開く装置とは別に、ダーク

エネルギーを使った最新のダークエンジンを装備した、これで燃料補給の必要はな

くなる、無尽蔵のダークエネルギーを利用し、無限航行さえ可能になる。


 スタローンたちアンドロイドはコンピューターとボディをすっくり最新の物に交

換した。戦闘力が大幅に上がっている、従来の兵士以外にも新しいアンドロイドが

補充され、総勢千人の大部隊となった。


 ミネルウァはハンクを副艦長に任命し、何でも相談するようになった。

早速、マザーから派遣要請が来た、てんびん座で頻発している海賊の壊滅だ。


「ハンク、てんびん座は赤色矮星グリーゼ581gの先ね、放したホモサピエンス

がどうなったか、赤ちゃん達は無事成長しているか気にならない、少しだけ寄り道

していかない?」


「ミネルウァ、我々の任務はてんびん座の海賊退治です、今の話は聞かなかった事

にしましょう。」


「サンキュウ、助かるわ。」


 ミネルウァは赤色矮星グリーゼ581gに寄り道した。クリスの子供はどれくら

い大きくなっているだろう、少しでも早く様子が見たかった。


 ハンクは副艦長、万一の場合艦長に変わって指揮を取る責任があるため、レッド

アローに残った。代わりにスタローンが数名の部下をつれ、ミネルウァに同行した。

 ホモサピエンスの所在は埋め込んだチップで解る筈、ミネルウァはシャトルのコ

ンピューターに指示して、居場所を探させた。


「生存数4、病死0、外敵による捕食死44」


「そんな、嘘でしょう?」


「いいえ間違いありません、大部分が何者かに食われ、消化され、チップだけが便

と一緒に排泄されたようです、チップは状況を記憶し、発進しています。」


「アイツだ、確証はないが、あの飛行型爬虫類の仕業だ。」


 ミネルウァは今すぐにであの爬虫類を殺した衝動に駆られたが、取りあえず、ハ

ンクに連絡をいれ、相談することにした。


「ミネルウァ落ち着いて、あの爬虫類の仕業と言う証拠はありません、あの爬虫類

が肉食か草食かも解っていません、生き残った4頭を探すことが先決です。」


 ミネルウァが4頭の居場所を確認すると、あのクリスたちの区域が含まれていた。

ミネルウァはスタローン達を引き連れクリスを探した、チップがまだ生きているの

で探すのにそれ程時間は掛からない。

 3時間後クリスたちの近くに降りて、ミネルウァだけ見つからないように近づい

て行った。良かったショーン、クリス、子供も生きていた。子供にはチップを埋め

込んでないので生存がつかめなかっただけだ。ミネルウァは胸を撫で下ろした。


「後の2頭につけたチップが移動し始めた、ホモサピエンスが歩く速さではない、

凄い速さだ、空を飛んでいるぞ。」


 スタローンが自身の追跡装置でチップを追いながら、叫んだ。


「スタローン、チップを追いましょう。」


 ミネルウァとスタローンたちはフルスピードで追いかけた。距離は700キロメートル、スタローンの最高速度はマッハ7、5分余りで目標に追いついた。

 やはりあの黒い爬虫類の仲間だ、爬虫類の身体から信号が出ている。

爬虫類は小さい生き物が迫っても自分の相手にならないと、悠然と飛んでいた。

ミネルウァは爬虫類の頭上まで行くと、真上から頭に踵落としを蹴りこんだ。

5メートルもある頭が前に倒れ、爬虫類は気を失い、進行方向を保ったまま降下し

始めた。 スタローン達とミネルウァが気絶している爬虫類の翼や足を捕まえ、

ゆっくり地面に下ろした。

 ミネルウァはスタローンが差していた剣を引き抜き、直ぐさま爬虫類の首を切り

落として止めを差し、腹を裂いた、中からは大人のもホモサピエンス2人と子供2

人が出て来た。爬虫類に食べられてそれ程時間が立っていないが、消化が始まって

いる。大人は生きているが、皮膚が解け始め、呼びかけても反応が無い、子供一人

は既に死んでいた。あと一人の子供は産まれて間もない、親が大きな葉で何重にも

包んでいたため消化が遅れ生きていた。助かったのは赤ん坊一人だけだが、ここま

で来たかいはあった。


 コンピューターが死亡と判断した他のチップへスタローンたちに辿らせたが、動

物の排泄物の中からチップが出て来た、どれもこれも大型生物に食われた後だった。

寄り道である以上、チップは現状のまま糞の中にもどさせた。


 ミネルウァ達に赤ん坊育てる手立てはない、仕方なくクリスたちの処まで引きす

事にした。クリストとショーンは殆ど移動していなかった。ミネルウァは見つから

ないように、隠れながら、うたた寝をしていたクリスの横にそっと赤ん坊を置き、

離れて様子を見ることにした。


 赤ん坊を置いて30分くらいでクリスは目を覚ました、自分の横に知らない赤ん

坊が寝かされていて驚いたが、赤ん坊が驚いて泣き出したため、クリスは赤ん坊を

抱き上げ、母乳を与え始めた。赤ん坊は嬉しそうにクリスの乳首を吸った。


「これなら何とかなりそうだ。」


 ミネルウァが飛び立つと、直ぐにハンクから連絡が入った。


「ミネルウァ、『有りのままで』ですよ。手出しをすれば私の二の前になります。

今度この星に来る時には全部食われているかも知れませんが、それが環境適応です。

 私たちはてんびん座に向かいましょう、g星のホモサピエンスはニュクスの担当

です、彼女はクールです、口も悪いが、ああ見えて情が深いと私は思います、この

ありさまを見ればきっと我々以上に嘆き悲しむでしょう。後の事はニュクスに任せましょう。」


「ハンク、御免、怒りに任せて爬虫類を1頭殺してしまった、爬虫類の腹からホモ

サピエンスの赤ん坊を一人救い出すことができました。マザーは移住が成功だと喜

んでおられたが、この状況を見れば落胆されるでしょう。

ショーンとクリスがアダムとイブになれたらいいのですが。」


 ミネルウァは帰る途中スワンとオデットを訪ねた。こちらは無事だった、子供は

みんなヤシの木になっていた、大小10人もいる、両親よりはまだ随分小さい。


「これから大きくなるのよ、大勢いるし、楽しみだわ。」


 オデットは子沢山で、すっかりママになっていた。


「ミネルウァ、ホモサピエンスは残念だった、ニュクスはまた大勢ホモサピエンス

を運んでくるだろう、食われるか、生き延びるかの競争だ、この星は生き物を絶滅

させないはずなんだが、外来生物は例外にされるのだろうかな?」


「スワン、手出し無用でしたね、『ありのままで」ですね。」


「そう、有りのままで、我々はホモサピエンスに手を加えてはいけません。」


 ミネルウァはハンク達とてんびん座に飛び立って行った。


 終わり

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