未知の大型爬虫類
「ニュクス、軌道エレベーターのもう一つの荷物はなんだ?」
レッドアローに戻ったニュクスにハンクが聞いて来た。
「肉です、冷凍肉を輸出しています。」
ニュクスは躊躇いも無く答えた。
「やはりそうか、g星に持って来たのと同じのを商品にもしているのだな、残酷
な話だ、生物大量絶滅の首謀者だから罰を受けるのは仕方がないが、やり過ぎじ
ゃないのか、俺の立場で言うべきではない事ぐらい解っているが。」
「ハハハ、可笑しい、ヴフフフ ハハハ」
ニュクスは腹を抱えて笑っていた。
「何が可笑しい、ホモサピエンスが食べられるのがそんなに面白いか。」
ハンクは怒りだした。
「だって、可笑しいでしょう、そんな事思っていたんですか、ウハハハッ」
「いい加減にしろ、ぶん殴るぞ!」
ハンクは拳を振り上げた。
「待って、勘違いしないで、ウフフ ハハハ、ホモサピエンスを生きたまま冷凍に
して出荷したりする訳がないでしょう、あれは生きたホモサピエンスではありま
せん、フフフ」
ニュクスはなかなか笑いが収まらず、苦労していた。
「生きたホモサピエンスでなかったら、何だ?」
「肉は肉でも人工的に作った製品です。千年ほど昔、STAP細胞と言う再生医療の
論文が発表されましたが、不備、ねつ造とされ、消え去った技術がありました。
確かにこのSTAP論文は正しくなかったのですが、最近になり、別の方法で簡単
に多能性獲得細胞を作る技術が開発されました。
多能性獲得細胞を食肉生産に応用して出来たのがあの肉です。
肉の元になる細胞はホモサピエンスの細胞です、その細胞から食用に適した部位
を人工的に製造し、商品化しました。
つまり、生きたホモサピエンスでも、殺して解体した物でもありません、言わば、
人工的に栽培した肉、マッシュルームみたいなものです。」
「ホモサピエンスのマッシュルーム、ややこしい、なんのことか増々解らん?」
「ワァハハハ、ハンクは本当に面白い、ハハハ、ヒヒヒ・・」
ニュクスはテーブルを叩いて笑っている、笑いが止まらなくなってしまった。
「馬鹿にしやがって。」
ハンクは怒って出て行ってしまった。
「マッシュルームみたいな物なら、まあ良いか。変な噂はすべて外れていた、なぜマザーが残酷な事をするのか信じられなかったが、マザーの疑念は晴れた。」
「ミネルウァ、この星で一番高い山の頂上まで競争しないか?」
ハンクは退屈しのぎにミネルウァを誘った。
「負けてばかりで、よく飽きないわね、退屈してたから付き合っても良いよ。」
ミネルウァは今にも飛び出しそうだった、ハンクは慌てて飛行スーツを着た。
シャトルで大気圏内まで降り、シャトルを空中に残して二人は山へ飛び出した。
ハンクのディスプレイは最高速マッハ5、飛行スーツが激しく振動している。
ミネルウァは上向きに、腕組みして、空を見ながら遊び半分で、飛んでいる。
「くそ、限界だ、これ以上最高速度を維持していたら空中分解する。」
ハンクはミネルウァに聞こえる様に言って、マッハ2に速度を落とした。
「私の勝ちね、だから言ったでしょう、私には勝てないって。」
ミネルウァはハンクに並ぼうと速度を落とし、近づいて来た。
待ってましたとばかりに、ハンクが急に速度にあげ、ミネルウァを振り切った。
「アッ、騙したな、ぼんくら船長、汚いぞ!」
ミネルウァはアッと言う間にハンクを追い越し、ターゲットの山頂で待っていた。
「今度こそ、作戦勝ちだと思ったのに、くそ、またミネルウァに負けた。」
ハンクはブツブツ言いながら、ミネルウァの待つ山頂に到着した。
「また私の勝ちね。」
「子供に花を持たせてやっただけ・・」
言い終わらない内に、ハンクはミネルウァに谷底へ突き落とされた。
「助けてくれ~、死ぬ~、」
谷底に激突する寸前で、ミネルウァがハンクの右足を掴んだ。
「フウ~、危なかった、もう少しで死ぬところだった。」
ハンクがため息をつくと、
「ハンク、あなた、私を怒らせて面白がってない?」
ハンクの右足を持ちながらミネルウァが首を傾げた。
「勘弁してくれ~」
ミネルウァは手を離した。ハンクは2m下の地面に頭から落ちた。
ゴツン
「いてて、手加減しろよ。」
「それぐらい痛くないくせに、アンドロイドの何処が痛いの?」
二人は大笑いしていた、喧嘩ばかりしているが仲は良い、最高のコンビだ。
「この山は初めてだ、この星は地球の3倍重力があるが、直径は少し大きいだけ、
生物種は地球よりずっと多いから、スワン達が調べたと言っても、目立つ大きいの
だけ、実際ほんの一握り調べただけに過ぎない、99%以上の生物がまだ手付かず
で残っている。
ホモサピエンスの移住が上手く行ったと喜んでいるが、安心するのはまだ早い、
何時どんなことで、安全神話がひっくり返るとも限らない。」
ハンクが言うと、
「心配性ね、失敗ばかりで気が弱くなった、そんな弱気じゃ船長首だね。」
「失敗ばかりだから首になってもしょうがないが、なんだか、まだ凄いのが出て
きそうな気がする、俺の嫌な予感は良く当たる。」
「船長辞めて、占い師になったら、その方が似合っているわよ。」
「お嬢さん、お代は安くしとくよ、運勢を占ってあげましょうか?」
「いやよ、ハンクの占いなんか、当たる筈ないもの。」
二人は冗談を言いながら高度千メートルで飛んでいた。その時、低空の山間を黒
い影が高速で横切って行った。
「見たか今の、あれは何だ、大きかったぞ?」
「鳥はあれ程早く飛はない、時速500キロは出ていた、それに随分大きかった、
全長20メートルはあると思う。スーツが記録した画像見せて頂戴。」
ミネルウァはハンクに飛行スーツのデータを外側へモニターを表示させた。
「あの生き物は植物じゃない、どちらかと言えば爬虫類、全長25メートル、高速
飛行型爬虫類、山岳地帯にはとんでもない怪物が住んでいる、この連中にホモサピ
エンスが見つかれば、格好の餌食にされてしまうな。
二人はレッドアローに帰り、飛行型爬虫類の件をニュクスに報告した。
「今まで恐ろしい相手と出くわさなかっただけね、でもそれを殺す訳にはいかない
わ、成り行きに任せましょう。ここにいるホモサピエンス達が食べられていなくな
ったら補充するだけ、地球ではホモサピエンスを沢山飼育しているから、数は心配
ない。爬虫類にどう対応するかは、本人たちに任せましょう、それがスワンが言う
環境適応です。」
とニュクスは答えた。
「赤ちゃんが産まれただけであんなに大喜びするのに、ニュクスは仕事となると、以外にクールだな。」
ハンクはもっと良い返事を期待していた。
「私たちは後1ヶ月ほどで、地球に帰ります。これ以上ホモサピエンスの面倒は見ません。」
ニュクスは研究資料やデータの実物を早く地球に届けたかった。




