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Remain there 有りのままで  作者: 一語 大福
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ホモサピエンス

 スワンが乗っている鯨は遠くには行っていなかった、オデットと一緒にいた、

ニュクスは少し離れた場所に降り、徒歩で近づいた。


「仲が良いですね、羨ましい、オデットさん、少しスワンと話をさせて

いただいて良いですか?」


「ええ、どうぞご遠慮なく、私も聞いていてよろしいですか?」


「どうぞ、聞いていただいて結構です。

早速ですが、私はマザーから重要な計画を預かってきました。」


 ニュクスはマザーの計画を解り易く二人に説明した。


「ホモサピエンスに関する秘密の計画があると言う噂は知っていましたが、

噂とは随分違いますね、私たちはホモサピエンスを生きたまま冷凍し、

生肉として他の星へ輸出しているものと思っていました。

 マザーはホモサピエンスが復活できる星を探していたのですね、

生物の大量絶滅を起こさない、新しいホモサピエンスの誕生を目指しておられる、

それは素晴らしい計画です、僕は喜んで協力します。

 秘密にされていた理由も解ります、間違った噂はマザーが流したのでしょう。

6度目の生物大量絶滅は余りに酷い、彼らの復活を快く思わない人は大勢います。

反対派を押さえておくために食肉生産の噂を流していたのですね。」


 スワンは協力を約束してくれた。


「貴方のおっしゃる通りです、

私もホモサピエンス復活の話を聞かされた時は驚きました、

見つかった精子や卵子は全て処分すべきだと思いました。

 マザーご自身も以前のホモサピエンス復活を歓迎してはいません。

本題に戻りますが、多くの星に改良したホモサピエンスを移住させました、

その結果は全て失敗です。生き残った者はいません、

ホモサピエンス移住計画は、まだスタートラインにさえ立っていません。」


「それで、ニュクスは私に何を聞きたいのですか?」


 スワンに促され、ニュクスは本題に入った。


「ホモサピエンスの食料をどう確保するかです、

私は研究所に残されていた資料を全て地球に送り、分析していただきました。

 そして、何種類かの、純粋な植物は食用に使えるのではないかとリストを

送っていいただきました。

 その植物はキムラ研究所からそう遠くない所に自生していましたが、

少くな過ぎます、この広大な星で、ホモサピエンスが食べられる食料を見つけ、

彼らにどのように食料の採取方法を教えればよいか、その手段が解りません、

スワンのご意見をお聞かせください。」


「なんだ、ニュクスが聞きたいのは、そんなことですか、

貴方は勘違いしています、食料を探す必要も、集め方を教える必要もありません。

ホモサピエンスをそのままこの星に離せば良いのです、有りのままで。」


「そんな事をすれば、わざわざ地球から運んできたホモサピエンスがすべて

この星の変な植物に変わってしまうだけでしょう、それでは何にもなりません。」


 ニュクスはスワンの唐突な答えに反論した。


「いいえ、大丈夫です、問題ありません。

食べてはいけない植物や動物を食べ、異変を起こす者もたくさん出るでしょう、

それを避けて通ることは出来ませんし、避けてはいけません。

 この星独特の植物は引き抜いたり、折ったりすると大声を出し、暴れます、

単純な植物は変化しません、危険な植物を見分けるのはそれ程難しくないのです。

 用心深く、賢いホモサピエンスならば、必ずその違いに気がつきます、

それが自然淘汰であり、環境適応です、適応したものはこの星の生物になります。

手助けしないで、彼らの自発的な判断にすべて任せましょう。」


 スワンは解り易く説明した。


「生物学的には、そう言うものですか、手助けしてはいけないのですか?」


「生物の環境適応に手を貸せば、間違った適応を引き起こします。

自発的判断が重要です、適応を繰り返し、この星に合った進化が始まります。

 食料だけで生存の条件が満たされるわけではありません、彼らに敵対する、

未知の病原菌や生き物とやがて対峙していかなければなりません。

 最悪でも彼らにはセカンドプランがあります、私の様に動物の体液を吸って、

星の植物になるプラン、案外生きていくのはこの方が楽かもしれませんね。」


 スワンに礼を言って、ニュクスはレッドアローへ帰って行った。

マザーにスワンから聞いたことを伝えると、


「スワンは本当に優秀で、素晴らしい人材です。

ヤシの木になってしまったのが惜しまれてなりません。

ニュクス、スワンから聞いたとおりに計画を実行してください。」


 マザーから計画実行の承認が下りた。

スワンの考え方であれば、特に場所を選ぶ必要はない、雄雌セットで、

適当にこの星にばら撒けば良いだけ、簡単なことだ。

ニュクスはレッドアローのコンピューターに場所を選ばせ、座標をメモった。


 ニュクスはアンドロイドに命じて、冷凍保存されているホモサピエンスを

チンすれば生き返る解凍装置に掛けさせた、百体のホモサピエンスが生き返った。

 長い冷凍睡眠から覚め、まだ彼らは意識が朦朧としていた。

アンドロイドは百個の冷凍ケースを全て食料加工場のある島へ運んだ。


 島にはニュクスと修理が終わったばかりのアンドロイド兵が整列している。

スタローンがアンドロイド兵に座標を渡し、ケースを背負わせ、向かわせた。


「いよいよ大計画が始まる、文字も言語も文化も奪われた、文明人の子孫が

未知の星で生き残り、反映できるのか、いったい何百年、何千年かかる?

結果が出る頃には私もスタローンも生きていないでしょうね。」


 ホモサピエンスには個体情報を発信するチップが埋め込まれている、

生存の有無、健康状態はレッドアローに逐次伝わってくる。


 1ヶ月で3割が死んだ、2ヶ月後には4割が死に、植物に生まれ変わった

3か月後の死者は44%、やや落ち着いて来た。

 雌雄の組み合わせが崩れ、独り者が増えた、4か月後につがいの再配置を行った、

この時点で生存率は46%。何とか半数は生き残れそうだ。


 生存しているホモサピエンスの中にショーンとクリスの名前があった。

彼らは産まれた時から、星に送られる組み合わせとして飼育されていた。

 

 ショーンが見ていた部屋の中や森は全て、飼育室の5G立体映像だった。

触れることも、手に取った感触もあるが、その物体は実在しないCG、

回し車のネズミと同じように、狭い空間の中を走り回っていただけだった。


 クリスも同じ5G立体映像の部屋で飼育されていた。

ショーンはクリスそっくりのアンドロイドを、伴侶と思って心から愛していた。


 二人は自分の部屋を出てトンネルを抜け、椅子に座ってからは記憶が無い、

眠らされ、冷凍され、知らぬ間にこの星まで運ばれてきた。


 ショーンはクリスを知っているが、クリスはショーンと会うのは初めてだ

森に放たれた二人、クリスは見知らぬショーンから逃げようとするが、

ショーンは離れない、何処までも逃げるクリスについてくる。


 ショーンはいきなり、クリスに抱き付き、交尾を求めようとした

驚いたクリスはショーンを押しのけ、ショーンの股座を思い切り蹴り上げた、

ショーンはクリスの足元に倒れ、股間を押さえ悶えていた。


 昼の森は静かで爽やかだが、陽が落ち、闇が森を支配してくると一変する。

クリスが持たれていた木がゆっくり立ち上がり、木は歩き始めた、

驚いて立ち上がり、泣き叫ぶクリス、小さな木や草まで歩き出した、

森が騒々しくなってきた、悲鳴を上げ逃げ回るが、クリスが逃げ込む場所は

ショーンしかなかった。


 夜明けとともに夜の協奏曲が終わり、森は普段通りの静けさを取り戻した。

怖い経験をしたクリスはショーンの傍を離れなくなってしまった。

 ショーンは優しかった、もう無理に交尾を求めたりしない、

二人は手を取り合って歩いていた、やがて森は終わり、クリスたちは草原に出た。


 ショーンは幼い頃から花や草が好きだった、いつも摘んでは家に持ち帰った、

しかし、ここは変だ、見慣れた草花は1本も無い、悲鳴を上げる変な草、

折ると一気に萎れる草、怪しい、危険だとショーンは直感的に思った。


 ショーンが手に持っていた草を渡すと、クリスはすぐさま草を食べ始めた、

解凍されてから何も食べていない、クリスはお腹が空いて死にそうだった。


 クリスは更に手の届く所に生えている草を、千切って口に入れようとしたが、

ショーンはクリスの手を押さえ首を横に振った、クリスが放すと草は一気に萎れた

クリスが手にしたのは、食べてはいけない、動物化している危険な草だった。

ショーンは別の草をクリスに渡した、クリスはその草を貪るように食べた。


 ショーンとクリスは星で唯一の仲間だ、クリスは次第に交尾を拒まなくなり、

若い二人は激しく愛し合うようになっていた。

 出会ってから数か月後、クリスが体調を壊す日が多くなった、

悪阻(つわり)だ、クリスはショーンの子供を身ごもっていた。

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