行方不明者の手がかりを求めて
夕方になり、ハンク達3人はその日の調査を終え、シャトルに戻った。
シャトルではアンドロイドが引上げ、オデット一人が残って待っていた。
「オデットご苦労様です、一人で退屈だったでしょう?」
「シャトルからは眺望が良いので退屈しませんでした、島はいかがでした?」
オデットはハンクに尋ねた。
「私が前にいた時と差ほど変わっていませんでした。
それよりも、大変な事が解りました。
私がリゾート開発の為に放ったガンマ線バーストが、
島を訪れていた、ミネルウァの両親を殺していました。
その上、ミネルウァ自身の身体にも大きな影響を与えていました。
島に固有の種がいたとしたら、それも恐らく私は全滅させています。
いつか私は自分が犯した過ちを償わなくてはなりません。」
ハンクはやるせない気持ちでオデットに答えた。
「そうですか、ミネルウァとは深い因縁が有るのですね。
話は後ほど、ユックリお伺いします、3人ともお疲れでしょうし、
レッドアローに夕食の用意が出来ているそうです、戻りましょう。」
オデットは落胆しているハンクの肩にそっと手を添え、戻るよう促した。
「ありがとうオデット、貴方は本当に優しい方だ。
スワンがずっと貴方を思い続けていた理由が良く解りました。
折角ですが、私は人間ではありませんので食事は必要ありません。
島に住んでいる親しい友に会いたいので、島にもう一度戻ります。
島の生き物は昼間は寝ていますが、夜は活発に活動します。
夜行かないと彼らに会えません。」
「危なくないのですか、二人に同行してもらわなくても?」
「大丈夫です、島の生き物は友人です、私を襲ったりしません。」
ハンクはオデットに一礼し、ミネルウァとニュクスには手で合図して、
シャトルから島の上空へ飛び出した。
ハンクを見送ってから、シャトルはレッドアローに向け発進した。
「予想通り、夜の島は賑やかだ。」
ハンクは植物達を脅かさないように、ゆっくりと島に降り立った。
懐かしい場所に帰って来た、そこには心を通わせた草花の孫の子供がいた。
「あれ?ハンク何処へ行っていたの、急にいなくなったから心配したよ。」
孫の子供たちだ、1年経って大きくなっている、俺を覚えてくれていた。
「ごめん、オジさんは島やみんなが好きだから帰ってた。
お仕事が済んだらこの島で住むつもりだ。お父さんやお母さんは元気かい。」
「元気だよ、ご飯を食べに行っている、もうすぐ帰ってくる。」
ハンクが言われた場所に、両親の様子を見に行くと、
二人はウサギの様な動物の上に止まり、体液を吸っていた。
お腹が一杯になり、ハンクに気づいてウサギの背中を離れた。
「お久しぶりねハンク、見かけなかったけど、何処へ行っていたの?」
母親の草花が聞いて来た。
「故郷へ帰っていた、あの空のズッと向こうだよ。」
「へ~、ハンクはそんな遠くから来たんだ。」
父親が頷いた。
「家族皆元気そうだね、お子さんも大きくなった、驚いたよ。」
ハンクが言うと、
「いや、近頃はあちこち出かけて行って、探すのが大変だよ。
でも、そんなことを言うために僕たちを探しているんでは無いだろう、
彼方此方で地割れが起きて、地面に穴が開いている。
何かが出た跡のようだ、穴の周りに苔たちが一杯落ちている。
ハンクに関わりがあるんだろう?」
父親が不審に思っていたことを聞いて来た。
「ああ、その通りだ、俺に関係がある。
君たちに黙っていて悪かった、俺は50年前にこの島を焼け野原にした男だ、
君たちが意思を持って生きている生き物とは知らず、島を開発しようとしたのだ、
その為、君たちの仲間を大勢殺してしまった。埋まっていたのは俺の仲間だ。」
と、ハンクは父親に答えた。
「僕たちは島に引っ越してきたから、島が昔どうだったかは何も知らない。
苔たちは知っているかもしれないが、殆どの仲間は昔の事をあまり知らないし、
話したがらない、ハンクはまた同じような事はしないんだろう?」
父親はハンクを信頼していたので、ハンクの告白が信じられなかった。
「二度と同じ過ちはしない、他の者にも俺がさせない、信じてくれ。」
「それなら良いけど、絶対だよ、子供をそんな目に合わせたくはない。」
「今夜はお詫びに来た、そして、一つ教えて欲しいんだが、
ここで埋まっていたのは生き物ではない、機械だが、
他の場所でも俺の仲間が大勢行くえ不明になった、その仲間は生き物だ、
君たちに聞けば、なんか手がかりが有るかと思ってやってきた。」
ハンクは一番知りたかった事を父親に尋ねた。
「僕には解らない、それも50年前のことなんだろう?
その頃僕は産まれていない、そんな話は誰もしていないよ。
この島には30年以上生きている仲間はいない、他を当たった方が良い。」
「50年以上生きている木に聞けば何か知っていると言う事か?」
「解らないけど、行方不明になった場所の長老なら多分知っている。」
「ありがとう、助かる。
もう一つ聞いて良いかい、僕は君たち草花の言葉は少し解る、
他の生き物の言葉は全く解らない、共通の言葉と言うのはないのかい。」
ハンクが訪ねた。
母親が二人の間に割って入り、話し始めた。
「ハンク、貴方は好きだけど、貴方が本当にこの島を破壊した人なら、
それ以上私たちに聞くのはやめて、貴方たちがまた酷い事をしないか心配なの。」
「悪かった、行方不明者の犯人捜しをするつもりはない、
もし生きているなら、行方不明になった友人を探したいだけだ。
ありがとう、もう十分だ、すまなかった。」
ハンクは答えた。
「子供たちが待ってるし、家に帰るわ、ハンクも一緒に来ない、きっと喜ぶ、
でも約束して、先ほどの話は子供に絶対聞かせないで。」
「ありがとう、あのことは話したりしない。」
ハンクは母親に約束し、ゆっくり家へ飛んで行く二人を追った。
そして、草花の家族と一夜をすごし、日が昇るとシャトルへ帰って行った。
シャトルに戻ると、ニュクスが早速やって来た。
「ハンク、貴方が下りた理由は解っています、
行方不明者の手がかりは無かったようね。」
ニュクスがハンクの顔を見ながら話しかけて来た。
「俺とあの夫婦の会話を盗み聞きしていたのか?」
ハンクは盗聴されて、腹立たしい思いがした。
「盗聴はしていません、私には解るだけです。」
ニュクスは申し訳なさそうに返事した。
「ニュクスは彼らの言語も解るのか?」
「言語は解りませんが、何を言いたいのか、その心は解ります。」
「ニュクスにしろ、ミネルウァにしろ、俺の理解を超えていて、
貴方たちのやっていることは全く解らん、人間でない俺の心まで解るのか?」
ハンクはイライラしながらニュクスを問いただした。
「解ります、生き物であるかないかは無関係です。
ただ、貴方がたの会話で気になった点があります、
長老は経緯を知っているかもしれないのですね、行方不明の?」
ニュクスがハンクに聞き返した。
「ああ、そうだ、確かに長老は知っているかも知れないと言っていた。」
「ミネルウァ、貴方なら埋められている人間を探せるの?」
ニュクスは半信半疑でミネルウァに聞いた。
「無理よ、50年も前なら腐っているでしょう、気持ち悪いのは苦手よ!」
ミネルウァは首を横に振っていた。
「腐っているなんて言わないで!」
オデットが泣き出しそうな顔を手で押さえた。
「ご免なさい、そのようなつもりでは、本当にごめんなさい。」
ミネルウァは迂闊な事を言って、オデットを傷つけ後悔した。
「そうよね、予定通りキムラ研究所へ行って、
話を聞ける長老を見つけましょう。
スワンはきっと生きているわ、そんな気がします。」
ニュクスはそう言って傷心のオデットを慰めた。




