アンドロイド兵全滅
「記者に聞かれたことだが、それにしても、誰にアンドロイド兵がやられた?
銀河最強と言われていたあのアンドロイド兵団を、
一体誰が、何の痕跡も残さず、アンドロイド全員を一瞬で倒せたのだ、
それ程強い相手があの星にいたとはとても思えんが、全く訳が分からん。」
ハンクは事件を思い起こしていた。
研究所の研究員や船内のクルーが行方不明になってから、
何事も無く、平和な毎日だ、あっと言う間に1ヶ月が過ぎた。
島のアンドロイド兵はすることが何もなく、
手持無沙汰で、相変わらず退屈しのぎに石を遠くへ飛ばしたり、
投げた石を追いかけて、誰が早く掴むか競争して遊びに興じていた。
小さな食料生産ラインは既に運転を止めている。
島には砂を舞い上げる風の音だけが時を吹き流していく。
やがて島は雨期に入って来た。
島の周辺の気候は一年を通じて穏やかだが、雨期だけは長い。
「今日も雨だ。」
外で遊ぶこともできず、アンドロイド兵たちは人間のいない建物のなかで
ゴロゴロ、時間が過ぎるのを待っていた。
雨は小降りになる時もあるが、殆ど1日中振っている。
10日経っても降りやまない。
22日目の朝、やっと雨が上がった。
島の周辺に渡り鳥は来ないが、渡りヤシの木が飛んでいる、
鯨の背中に乗っていた、様々な植物が島の上を低く飛んで、通り過ぎて行った。
「おい、見ろ、木が空を飛んでいる。」
アンドロイドの一人が空を指さして、叫んだ、兵士たちは皆空を見上げた。
「アホらしい、鳥が空を飛んだって、木が飛んだって、俺たちに関係ない。」
雨が上がった島には方々に、小さな苔が生えて来た。
スタローン隊長から、島に苔が生えて来た連絡を受け、ハンクが見にやって来た。
「ありがたい、苔が育てば砂嵐は収まる。」
ハンクは喜んだ。
苔は順調に育っている、1ヶ月で島全部を覆う程に成長した。
砂嵐も吹かなくなった、風は砂嵐から、苔の匂いがする心地よい風へ変わった。
「俺一人では、リゾートも空港の計画も進められないが、
まあ、一旦地球に戻って、他の者と来れば、計画は進められる。」
落胆からハンクは少し気持ちが前へ向くのを感じていた。
アンドロイドは寝ない、昼間は交代で遊んでいるが、
この島で異変が起きるのは、いつも決まって夜だ、
夜は全員重装備を身に着け、外で警戒に当たっている。
小さな異変や物音も見逃さない、彼らは銀河最強のアンドロイド兵団だ。
島にはやがて草が生えだした、小さな虫も飛んでいる。
島は長い不毛の時を経験しながら、再生を始めた。
きっと、あの時飛んで行った木が種や虫の卵を落として行ったのだろう。
スタローンは島の変化を歓迎し、草や虫に警戒はしなかった。
「今日は暑い雲に覆われ、星が見えないな。」
声をかけたアンドロイド兵士が、後ろの相棒の兵士を振り返った。
兵士は立ち止まったままだった。
やがて、声をかけたアンドロイド兵士も動かなくなった。
島の彼方此方で、警戒に当たっていたアンドロイド兵が止まっていく。
スタローン隊長のモニターから兵士の信号がひとつ、またひとつ消えて行く。
「敵か、何事だ。」
スタローンは銃を構えたが、ほどなくスタローン隊長の電源も落ちた。
止まっていたアンドロイド兵は次々に闇に吸い込まれていく、
島は無人になり、ハンクたちの建物だけが残った。
あくる朝8時10分、ハンク船長はスタローン隊長から定時の報告が無いので
不審に思い、自分からスタローンに連絡を入れた。
「電源が入ってないか、通信が切断されています。」
何度繰り返しも、返事は同じだ、他の兵士に連絡を入れても、
やはり同じ返事が返ってくる。
「またか、今度はアンドロイド兵士が全員やられた。」
危険ではあっても、島の状況を見に行かない訳にはいかない。
ハンクは意を決して、シャトルで島にやって来た。
一日かけ、ハンクは島中を探したが、兵士は誰も見つからなかった。
シャトルまで戻った時には周りが暗い、何時の間にか21時になっていた。
「また、明日だ。」
シャトルに戻ったが、外のドアが開かない、シャトルから明かりが消えている。
「シャトルまで、いったい何なんだ、この島は。」
見えない宇宙船レッドアローは、ハンクの帰りを静止軌道で待ち続けている。
ハンクは島に、一人ぼっちで残されてしまった。




