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Remain there 有りのままで  作者: 一語 大福
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出歩かない木?

 スワンは星空がきれいな日は、度々研究所近くの丘に出かけ、夜空を見上げた。

周りは植物が騒がしいが、喧騒を気にかけてはいなかった。

 

 今夜も星がきれいだと丘に上がったが、

程なく雲が増えて、星は殆ど見えなくなった。


「仕方がない、これでは今夜は無理だ、戻ろう。」


 通いなれた林を帰る途中、木の枝を払おうとして、立ち止まった。


「おかしい、この木はずっとこの場所に立っている、枝の位置も同じだ。」


 g星の植物は夜食事をしたり、喧嘩をしたり、遊んだり、忙しい。

元の場所の近くに戻ってくるが、同じということはない、多少は位置がズレる、

ズレるのがg星の植物の常識だ。

スワンはズレで植物が移動することを見つけた。

なのに、この木は全くズレていない。


「植物が全て動物のようだったら、それはワンダーランドだ、おとぎの世界だ、

しかし、ここは現実の世界、この星に秘密は他にもあるに違いない。」


 朝になると、スワンはフィッシュマンの許可を取り、

反重力飛行スーツを着用して一人で飛び立った。


「今日は地上50メートルの超低空で、研究所の上空を起点に、

地図を作るように、時速100キロメートルで周辺を飛行する、

高精細録画し、研究所へ送信して、量子コンピューターに分析させる。」

とスワンは心の中で思った。

スワンの思いを理解し、飛行スーツは4時間スワンと共に飛行を続けた。


 3日後もスワンは同じ飛行ルートで、同じ作業を続けた。

6日後も天候が良い。


「今日で最後の飛行だ、そろそろ何かが解る。」

スワンには確信が有った。


「スワン、凄い発見だ、君の考えは正しかった。

この星の植物は全てが動いているわけではなかった。」

興奮したフィッシュマンの声が、スーツを通してスワンの耳に響く。


「3回の撮影を詳細に量子コンピュータが分析を続けている、

位置が動いた植物と、動かない植物、小さな草まで分類ができつつある。」


「移動する植物は何らかの原因で動物の様に進化し、

移動しない植物は、植物のまま進化してきた、そう推定できる。

凄い、これは大発見だ、キムラドクターが喜ぶぞ。」


「ええ、そうですね、

キムラドクターは植物が動物みたいで面白くない、

植物も私たちの研究所でやってくれと、星に嫌気が差していましたから、

この星に植物らしい、植物がいるのが解ると大喜びします。」

スワンがフィッシュマンに返した。


「この星の生態は複雑、しかも種類がとてつもなく多い、

少人数の研究者では100年続けても、ほんの少ししか解明できない。」


「植物らしい植物があるということは大発見だ、

栽培可能な物、我々の食料にできる植物が見つかることもあり得る。」


「ドクター!

この件は私たちとキムラ先生の研究所に留めておいた方が良いと思います、

ハンク船長達が知れば、また森を破壊し、後先考えず、

血眼になって食べられる植物や、島に植える植物を探し始めるでしょう。」


「スワンの言うとおりだ、

森から植物を持ち出した時、他の生態系にどんな影響が出るか解らない、

研究が進んで、差し障りが無いと解るまでは、伏せておこう。」


「キムラドクターには私から話しておく。」


「お願いします。」

スワンは予定の最終地点まで飛行し、完了すると速度を上げ、帰って行った。


 キムラドクターの研究所にも分析データが転送されてきた、

キムラは大喜びだ、行方不明の息子に再会できた様に、目には涙が滲んでいる。


「スワン、ありがとう、君のお陰で、やっとこの星の植物を研究できる。」


「どういたしまして。」飛行スーツの中から、スワンが答えた。


 31世紀の量子コンピュータは途轍も無く早い。

スワンが研究所に戻ったときには、

画像から、動くものと、動かないもの、植物の分類が色分けされ、

個々の植物の写真が映し出され、全ての植物の分類が完了していた。


「映像からはここまでだ、後はその植物を探し出し、

サンプルを取って生態調査だ、まず見つけ易い処から始めよう、

移動しない相手を探すのは簡単だ、

フィッシュマンの研究所の周辺にも幾つか見つかっている。


 スワンが気づくまで、我々はミクロな世界ばかり見過ぎていた、

とかく我々研究者は研究所から一歩も出ないで、狭い世界に閉じこもりがちだ、

マクロで見ることもしないと、本当の姿がわからない、良い教訓だ。」

植物が見つかったキムラの興奮はまだ冷めなかった。


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