スワンの講義
「スワンはいるか?」
レッドアローからシャトルでハンク船長が訪ねて来た。
「スワンは出ています、岸壁の地層を調べに行っています。」
「今度は石か、動物の解剖をやっているのではないのか?」
「彼は変わっていますから、また何か気になることを見つけたようです。」
両手を広げ、呆れたと言わんばかりにフィッシュマンが答えた。
「ここから、それ程遠くありませんから、ロビンに送らせます。」
「ありがとう、お願いする。」
ハンクが行くとスワンは層になった地層に、
ロープでぶら下がりながら岩石を採掘していた。
「スワン、仕事中悪いが少し話を聞かせてもらえないか。」
声を掛けられ、スワンは岩に手を掛け、ハンマーを持ったまま、
首だけ向きを変え、ハンクの方を見た。
「ああ、船長、ご無沙汰しております、少しお待ちください、下ります。」
手や服に着いた土を払いながら、スワンは
「私のような者に何のご用でしょうか?」
「今日は君の話を聞きに来た。」
「そうですか、良いところに来られました、
私はこの星の地層を調べています、
この星の動物を調べる内に疑問が沸いてきました、
大きさも地層も地球と大して変わらない星の生物が、
なぜこれ程地球とは違うのか。
地層を調べていくうちに、地球との違いを幾つか発見しました。
k-pg境界、つまり生物の化石が全くない岩石の層がこの星には2つあります、
地球は1つしかありません。
2つのk-pg境界は、この星は生物の大量絶滅を引き起こすほどの、
大規模な惑星の衝突が2度あった事を証明しています。
調査がまだ不十分で、正確なことはよく解りませんが、
岩石の分析からは、恐らく1度目は地球が5度目の大量絶滅を起こした
小惑星と同じ程度の大きさ、10キロメートル前後、
2度目は更に大きな30キロメートル前後の小惑星が衝突したと思われます。
地球より、やや大きい星ですので、1度目で70%前後
2度目の衝突では90%前後の種が絶滅したのではないかと推定できます。
今のg星の動物や植物はそのニッチ(隙間)を埋めるように進化し、
互いに食物連鎖の頂点を競い合って、今日に至ったと思われます。
問題はいつ動物と植物、外観だけですが、これらが逆転したかです。
その点が一番難しい、それには更に詳しい調査が必要です、とても数年では・」
「待ってくれ、今日は君の講義を聞きに来た訳ではない、
現状の悲劇的な事態に対する君の意見を聞きに来た。
君が生物学者であることは知っている、それ以上に、
君は観察力が鋭く、知恵があり、頭が切れる。
飛行場の建設地は君も見ただろう、酷いありさまだ。
派遣していた兵士もアンドロイドも機械も見つからない、
現場には何の痕跡もない、この事態を君はどう思う。」
「軍や建設には素人の私で良ければ言いますが、怒らないでくださいよ。」
「わかっている、怒ったりはしない。」
「今まで起こった悲惨な状況には何点かの特徴があります。
1つ目は襲撃を受けたのは、いつも深夜であるということ、
2つめは昼間は工事をしようが、焼こうが何の抵抗も受けなかったこと、
3つ目は火器を使った攻撃を彼らに加えたこと、
カミロは火炎放射器を持ち出していました、
4つ目は襲撃にアンドロイドでさえ、全く対応できなかったこと、
銃声も、襲撃を受けている連絡もありません、証拠さえ残していません。
5つ目はそこにあった我々の人や物が全て無くなっていること。
これらから、彼らの特徴が見えてきます。
彼らは夜賑やかですが、昼間は静かで無抵抗、
つまり昼間は寝ているか、満足に動けないのではないでしょうか?
我々は歩くことで草を踏むことがあります、
キムラドクターは草を折ってボタンを死なせました、
しかし、我々の誰も夜間に襲撃を受けていません。
彼らは焼く、重機でなぎ倒すなど、
激しい攻撃を加えない限り攻撃しないのではないですか。
飛行場の風景画像がズレていました、これは木や草が動いた証拠ですが、
ズレがあっても、元に近い位置に戻っていました、これには統率力を感じます、
彼らには統率するリーダーが存在するのではないでしょうか?」
「素晴らしい分析だ、それを君から聞けただけでも、ここへ来た甲斐がある。
ありがとう、君の意見を参考に、幹部と今後の作戦を考える。」
「この星の動物と植物の進化論を聞きたくはありませんか?」
「スワン、ありがとう、その講義は次の機会にお願いする。」
ハンクは晴れ晴れとした思いで、レッドアローに引き上げていった。




