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Remain there 有りのままで  作者: 一語 大福
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鯨はどこへ?

 前にフィッシュマンがクジラに似た生物に遭遇した座標はスーツが記憶している

フィッシュマンとスワンは徐々に減速しながら、その座標の地点を目指した。

到着したが、そこにあの大きな生物たちはいなかった。


「無理もない、1年以上経っている、移動したのだ。」


「二手に分かれましょう、ドクターは北を探してください、私は南を探します。」


「了解した、発見したらお互いに連絡しよう。」


「イエッサー」スワンは南に向かい、生体探知機の感度を上げようと思った、

探知機の感度は瞬時に3倍まで上昇し、衛星の赤外線ソナーと連動した。

スーツにスイッチ類は無い、身体と一体化し、意のままに動く。


 スワンの前には半径500キロメートルの生物の群れが全て映し出されている。

大小さまざま個体、群れの大きさには随分差がある、群れも多い、

比重が高い海水の深海にも生命の反応がある、思っていたより遥かに多い。

 群れや種類が多すぎて、フィッシャーマンが発見した鯨の群れを

見つけるのは案外難しい。


「少ない人員では、海の調査まで手が回っていなかったが、

海は陸以上に豊かなようだ、

ドクターは景色に見とれて、魚群を見てなかったのかな?」


「聞こえているぞ!」


「すみません。」

スワンは通信が繋がったままであるのを忘れていた。


「感動して・・つい余計な事を言いました、

この海は本当に豊かなようですね、素晴らしい、食料の心配などなさそうです。」


「軽弾みに結論を出してはいかん、陸上に生物は多いが、

動物も植物も食用に適さない。海の生物が食べられる根拠はない。」


「確かに、処で例のクジラは見つかりましたか?」


「まだだ。」


「現在の位置から二人とも緯度を保ったまま、東に向かいませんか?」


「探知機の半径は500キロだ、見逃さないように少し間隔を狭めよう

 お互い100キロづつ接近し、間隔を800キロにして東を捜索しよう。」


「了解です。」


東に800キロ移動した辺りで、島が見える、


「陸地?」


スワンは首を傾げた、近づいて行くと、木がたくさん生えている。


「やはり島だ、いや違う、これだ、これがドクターの鯨だ。」


「見つけたか?」


「見つけました、てっきり島だと思いましたが、まさかこれ程大きいとは。」


「そちらの座標はロックできている、これから向かう。」


「刺激をするな、上空で静かに待機していてくれ。」


「了解です。」


 モニターの右に、接近してくるフィッシュマンが点滅している、

中央付近まで移動して、点滅が終わった。


「待たせたな。」


「いいえ、素晴らしい眺めです、退屈していません。」


「多分あの時の群れだ、一番大きいのを見給え、特徴が写真とそっくりだ。

随分大きくなった、千メートルはある、レッドアローと変わらないな。

君が島と間違えるのも無理がない、群れの数もあの時の5倍はいる。」


「本当に驚きました、これが生き物とは、今でも信じられません。」


「50メートル級には何もありませんが、

80メートル級辺りから何かが生えています。

写真の怪物の背中はジャングルですね。」


「上手い表現だ、その通り、ジャングルだな、

あれ程大きい身体だと、我々が上に降りても気が付かないだろう、

取りあえず、そっと降りてみよう。」


「了解!」


 二人は先ずフィッシャーマンと馴染みの鯨から調べることにした、


「大きな口が無いと言う以外は、身体の構造が鯨とよく似ています。

地球の鯨は陸上哺乳類カバから進化したものですが、

g星の鯨も恐らく祖先は陸上哺乳類、カバに似た動物がいれば近親者でしょう。

骨格を調べていないので断定できませんが、その可能性が高いと思います。」


「スワン、大したものだ、外観だけでそこまで分析できるとは、私も鼻が高い。」


「ありがとうございます、動物の進化論は専門ですし、大好きです。」


「背中の表皮は分厚い、潜水した時の猛烈な水圧に耐える為だろう。」


「表皮に小さな穴が無数にあります、口の代わりに呼吸をするためでしょうか?」


「いや、そうとは限らない、ヤシの木の根はその穴に刺さっているようだ。」


「根を引き抜いてみましょうか?」


「根が切れないように、慎重にな、この星の植物は傷つけると叫んだり、

暴れだす、そっとだぞ。」


スワンが時間をかけて、ユックリ根を引き抜くと、抜いた後の穴は、

先ほどと同じだ、植物が開けたものではない、

元々あった穴にヤシの木が根を差し込んでいただけだ。


ヤシの木の根の先端は注射器の先の様に鋭利で、穴がある、

抜いた根の先から黄色い液体がこぼれている。


「スワン、その液体を容器に入れて、サンプルを取ってくれ。」


「了解」


「先生、根の表皮から別の色をした液体がにじみ出ています

此方も取ります、これは青い色をしています。」


 スワンがヤシの根を元の穴に戻し、

2種類の液体をスーツの分析器にかけると・・


「ドクター、黄色い液体は鯨の血液です、全く同じではありませんが、

地球の動物の血液構造ととてもよく似ています。

赤血球や血小板、リンパ球、白血球に似たものまであります。」


「ヤシの木が鯨の血液を吸っていると言うことか、ヤシの木は蚊だな?」


「青い方はホルモン成分です。」


「単純に考えれば、

鯨が海水から養分を吸い血液に変える、

その血液をヤシの木が吸い上げ、

ヤシの木は血液の見返りに、ホルモン成分を鯨に返す。

言うなれば、鯨とヤシの木は共生関係にあると言うことか?」


「その可能性がありますね。」

ヤシの木以外の植物を調べて見れば、関係が証明されそうです。


 他の植物もヤシの木と同様、多少の差は有っても、鯨の穴に針を刺し、

同じ交換作業をしている。

吸い上げる血液は同じでも、

植物の針の表面から分泌される成分にはそれぞれ違った特徴がある。


又、鯨の上に生えている植物には、一様に、

身体の割には大きめの葉が、複数生えている。

ヤシの木と呼んでいる植物は、地球のヤシと外観は似ているが、

実はなっていない。


「ドクター、鯨が潜っている時、ヤシの木はどうしているのでしょう?

この植物は軽くて、丈夫そうには見えませんが、

この身体の構造では、重い海水に鯨が潜れば、

10メートルも潜らない内に潰れます。」


「上空を飛んでいるのさ、ハハハ・・」


「ドクター、冗談が上手くなりましたね・・

でも、その通りかも知れません、

このヤシの木の構造ならば、飛行は不可能ではありません、

長時間上空に浮かんで、鯨が浮いてくるのを待っているのでしょう。」


「そろそろ時間だ、ヤシの木に発信器を付け、基地に戻ろう、その前に・・」


フィッシャーマンは植物達に聞こえないように、

ジェスチャーでスワンにあることを伝えた。


「ナイフでヤシの根を、根元から1本切れ」と言うことですか。

スワンは目で返事を返した。


フィッシャーマンは黙ってうなずいた。


スワンは何食わぬ顔でそっと根を1本持ち上げ、一息に切った。


「ギャー」ヤシの木は悲鳴をあげて逃げて行った。


「まるで動物だな。」

スワンはまだ暴れている根をスーツの一番大きなポケット容器に入れた。


 

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