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Remain there 有りのままで  作者: 一語 大福
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鯨の背中

 食料を必要としないクルーも多いが、食料を必要とする者もいる、到着から

すでに1年3ヶ月、レッドアローは積んできた食料が底を突き始めていた。

星系間飛行は自給自足が基本、簡単に物資の補給は受けることができない。


 物体(船体)はダークホールを抜けて、瞬時に星系間を移動できるが、電波は光

の速度を超えることが物理的にできない。赤色矮星グリーゼ581gまでは地球か

ら20光年、電波が届いたところで片道20年、返事が返ってくるのは40年先、

電波による通信は無意味だ。


 ダークエネルギーは無限にあるが、ダークホールを開けることが可能な星域まで

は燃料がいる。全長千メートルを超すレッドアローの船体をその地点まで移動させ

る、そのための燃料は1回分しか積んでいない。食料を自給する必要がでてきた。


 赤色矮星グリーゼ581gの生物は、他の惑星と違いすぎる。うかつに食べさせ

るわけにいかない、クルーの身体にどんな影響ができるか不明なことが多すぎる。

 レッドアローに積んである生物サンプルで実験はできるが、十分ではない。

クルーは方々の惑星から集められた異星人、身体の構造も毒物適応性も全く違う

異星人の集団だ。片方のクルーは平気でも、別のクルーは同じ食品で死ぬかも知れ

ない。

 星系間を移動する宇宙旅行は、クルーが異星人であることが一番ネックになる。

レッドアローには23種類の異星人がクルーとして乗船している。


 食料補給を任されているチームは、生物調査チームとは別に、食料と言う観点か

ら、星の生物を調べ始めていた。

 この星の植物には実がなっていない、植物調査チームの報告によれば、茎は筋肉

の様に柔軟性があるが、個々の繊維が固くて食べられそうにないとある。

 葉は羽の様に薄くて軽い、食べられるところがない。

通常の植物と違って、花は咲いている様に見えるが、実がならないばかりか、球根

や根菜も見つかっていない。ようするに植物は研究が進まない限り、食品にならな

いと言うことだ。


 動物は胴体を切断した時は柔らかいポテトの様だが、時間が経つと悪臭を放ち、消滅してしまう。

 サイヤは切り取ったネズミの胴体を、真ん中で2つに切り分け、天ぷらで揚げて

みた。最初はカラッと揚がって、成功だと喜んだが、時間が経つと猛烈な悪臭を放

ち、泡を吹き始めた。


 食品にできる可能性のあるのは、どちらかと言えば動物の方だが、保存出来ない

点と強烈な悪臭、これをどう解決すれば良いのか、解決方法が全く解らない。

食料はもって後3ヶ月、食料調達責任者のサイヤは頭を抱えた。


 3日後、サイヤは食料調達の状況を報告するためハンク船長に呼ばれた。

レッドアローの船長室には、フィッシュマンが撮った大型海洋生物の写真が飾っ

てある、普段は気にも留めていなかったが、写真の前を通り過ぎようとした時、

サイヤの頭に閃くものがあった。


「これだ!」


 フィッシュマンが最初に送ってきた可笑しな報告書をモニターに出し、サイヤ

は読み返した。


「クジラの様な大型生物の上にヤシの木が生えている・・・。」


 サイヤは慌ててフィッシュマンと連絡を取り、大声で言った。


「フィッシュマン、急いでクジラの背中と、ヤシの木の関係を調べてくれ。

クジラとヤシの木の共生関係だ、ヤシがクジラから栄養素と取り入れ生きてい

るのではないか、手持ちの食料が残り少ない、情報が欲しいのだよろしく頼む。」


 フィッシュマンが連絡を受けた時には、日が暮れようとしていた。

フィッシュマンは反重力飛行スーツを2着用意させ、夜が明けるのを待って、

助手のスワンとクジラを追った。

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