1-8 ラブマギメークレッスン
聖爛中学のラブマギカの編入試験は筆記と技能の二種類が行われる。
筆記は恋愛魔法と芸能活動とそれにラブマギカに関する基本的な問題が五十問出題され、四択のマークシート式なのでそれほど難しくない。
技能は聖爛中学が求めている芸能人の種類がアイドルなので、その素養を見るためにライブパフォーマンスで競うことになる。
技能に関していえば、基礎的な恋愛魔法を学ばせれば、歌と踊りが上手な明里なら合格できるレベルにあると判断していたし、筆記に関しても基本的なことなので暗記すれば大丈夫だと思っていた。
だが、その予測は半分当たって半分外れることになる。
二日後の月曜日。
僕は明里にラブマギカの指導をするために、明里の働く商店街にある純喫茶に向かった。
純喫茶に入ると、学校指定の野暮ったいジャージを着た明里が水を飲みながらラブマギカの教本を読んでいた。
人を待つ間にも勉強する熱心な明里にはまず実技を教えることにした。明里は感覚派だからだ。
小学生の頃に体育でドッチボールの授業があった。明里は教科書に書かれたボールの投げ方を理解できず、男子の投げ方を真似してから徐々に自分に合った方法にアレンジし結果的にクラスの誰よりも速いボールを投げれるようになったことを思い出す。
だから恋愛魔法の仕組みを頭に入れてから実技をするのではなく、実技をしてからの方が仕組みを理解できるタイプだろうと踏んだ。
ただ恋愛魔法は魔法であって見るだけじゃ理解するのは難しい。それに最初の頃は、魔力をオンにするコツを掴まないといけない。これは少々厄介で、飲み込みの悪い人なら一か月かかる。
そして明里の場合は……すでにスイッチが入っていた。瞳が少し紫色に近くなることは、恋愛魔法を使用している状態を示している。
「もう魔法のオンとオフはできるようになったんだ」
「そうだね、この間のライブの事を思い出すとボールが光るから、もしかするとそれが魔法を使えるきっかけなのかなって。試してるうちに思い出さなくても光るようになっちゃった」
感覚的にやったにしては理に適っている。
初歩の初歩として、恋愛魔法使えた時を繰り返して思い出すことで恋愛魔法のスイッチのコツを覚えるという方法がある。明里は自分で考えてそれを実践したらしい。
やはり明里は感覚派だ。それもただ闇雲にするんでじゃなくて、自分なりに考えてもいる。そして魔力のオンオフを二日でマスターするとは恋愛魔法のセンスも十分だ。
「恋愛魔法はイメージを再現する能力なんだ。こうなりたいと具体的にイメージして、それに対して適切な量の魔力を込める。その差が少なければ少ないほど魔法としての効力が発揮される」
最低限の説明をして、僕は左腕をさする。
「魔力は肌から放出することができるんだ。で、神経が集中している指先が一番放出されやすい。例えば左腕をスベスベにしたいとする。こうやって手を使えば二倍早くスベスベになる」
「なるほどー」
明里はすべすべと口にしながら僕と同じように腕を手でさする。
「だんだん暖かくなってきたかも」
僕は瞳に魔力を集め、明里の腕を見つめる。本当に恋愛魔法を使えているか確認するために。
明里の手のひらは真っ赤になっていて、同様にさすっている腕部分も真っ赤になっている。これは十分に魔法を使えている証拠だ。使えていなければ色が変わることはない。
放出する魔力量に無駄があって、効果が高いところとそうでない部分の差はあるものの、初めてにしては合格のラインだ。
「いいぞいいぞ。その調子だ」
明里の肌は想像以上に艶のある美しい肌になっていた。コントロールはまだまだだけど、効果は十二分に出せている。
「すごいよ明里。かなり変化してる。こんな適当な説明でよくできたね」
「スベスベ気持ちいいからはまっちゃいそうだよ」
あくまで恋愛魔法は幻を見せるものだから、実際にはスベスベになっていないんだけど、その説明をして混乱させてしまうと面倒だから黙っておこう。
「これが恋愛魔法の中の外見魔法と呼ばれるものだよ。メークとも呼ばれてる。腕がスベスベになりたい、二重になりたい、涙袋を作りたい、胸を大きく見せたい、太ももの張りをだしたいとか、そういったことができるようになる」
「なるほど、魔法を化粧の代わりにするからメークなんだね」




