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1-19 互いの青い鳥

「は、はい。お疲れ様ですツバキさん。この間はどうも。あの誠です」

「お疲れ様。で、どういった用で連絡してきたの?」

「それはですね。明里と芸名を考えていまして。でもいい答えが見つからないのでツバキさんから何かヒントをもらえないかなって」

「私に?」

 やっぱり失礼だっただろうか? 一度顔を合わしただけの大先輩にこんな用件で連絡するなんて。ツバキさんの声色に動揺が滲んでいる気がする。

「そんないきなり言われてもあんた達の名前なんて思いつかないわよ」

「そうですよね。はい、すみません。あの、ツバキさんはどうやって芸名を考えたんですか? 何かヒントをくれればと」

「……ヒントっていわれても。私は向井プロデューサーにつけてもらったから……」

「そ、そうですか。わかりました。忙しいところ失礼しました」

「たまたま時間が空いていて運がよかったわね。お疲れ様」

 電話を切った後、額に汗がにじんでいることに気づく。思っていたよりも緊張していたみたいだ。

「大丈夫? 誠?」

「大丈夫だよ。でもツバキさんの名前はツバキさんじゃなくって向井プロデューサーが考えたみたい」

「そうなんだ……」

 結局この日もいい芸名は思い浮かばず、ツバキさんと会話ができた以外に収穫はなかった。

 でも二日後の金曜日。芸名命名に新たな展開を迎え、僕はまた明里の働くお肉屋さんに向かった。

 お手伝い中の明里は突然来た僕に驚いていたけれど、僕はそれ以上に驚いた。

「つ、つつつ、ツバキさんから返信きた!」

「うそ!? なんて連絡きたの?」

「怖いからまだ読んでない!」

 名前の件についてはもう終わったかと勝手に思っていたけれど、ツバキさんは何か別の案を考えてくれたのかもしれない。

「じゃ、一緒に読ませてよ。おばさんに少し休憩貰っていいか聞くから待ってて」

 というわけで、明里は三十分の休憩をもらってまた休憩室兼物置のコタツに入ることとなった。

 放課後にメールがきてからドキドキが収まらなくって電車に飛び乗ってきたけれど、冷静になってみれば明里は明里で忙しいのに悪いことをしてしまった。

「ごめん。来る前に連絡するべきだったな」

「いいよいいよ。ツバキさんから連絡きちゃうとわたしだってそうなっちゃうよ」

「そ、そうだよな。うん」

「ところでメールメール」

 早く読もうとコタツをポカポカと軽く叩く。

「おっけおっけ。じゃあ、開くぞ」

 明里は僕のスマホを身を乗り出して見つめる。せーので僕はメールを開いた。

 顔文字や絵文字が全くない簡素な文章で書かれている。

『ミート光明=お肉屋さんのお手伝いをしていて肉大好き、それと苗字と名前から一字ずつ取ったわ。プリティ小田弗は、アイドルオタなのにかわいいあなたにぴったりだと思うわ』

「これは本気……だよね?」

 ほとんどのことには疑いを持たない明里でもさすがにこの内容には戸惑っているようだ。

「……だろうな」

 補足まで書いてあるし、冗談で相談ごとをかわすような人とは思えないし、思いたくないけれど、それ以上にここまで残念なネーミングセンスだとも思いたくもない。

 僕は『参考にします。ありがとうございました』と返した。

「さ、気を取り直して考えようか」

「そうだね、うん。レッツネーミング!」

 僕らはいつもより元気に、いや空回り気味に声を弾ませる。

「と言ってももう万策尽きた感あるよな。でもできるなら自分で考えたいな。きっとダメだとプロデューサーに決められるんだろうけど」

「ツバキさんはプロデューサーのコト好きなんだろうね。わたしはまだ知らない人だから名前決めてもらうのは少し嫌っていうか、ちょっと戸惑っちゃう」

「そうだね。僕の事を知ってて、信頼出来て」

「尊敬できて……」

 僕らは言った後、目を合わせて気づいた。青い鳥の存在に。

「これって灯台下暗しって言うのかな」

「だな。よろしく頼む明里」

「こっちだって。誠が考えてくれたのならなんでも受け入れるよ」

 こうして僕たちは互いの芸名を考え、編入願いの書類に互いの芸名を書き合い郵送した。どんな名前を明里が考えてくれたのかはまだわからないが、僕は明里を信頼している。僕のことを小学生の頃から知っているし、女装してラブマギカをすることに賛成してくれたのだから。

 互いの芸名がわかるのは編入当日。つまりは三学期の始業式だ。

 その日まで僕らはラブマギカの練習、そして引っ越しの準備をして過ごした。

ここから話が始まると言うところですが、しばらく連載休止します。

本当にすみません。

またモチベーションが上がれば再開させてもらいます。

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