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1-17 名前の理由

「改めて考えると名前って難しいね。変だと笑われちゃうし」

「でも自分というメッセージも込めたい。それにラブマギカの場合は名前を覚えてもらうためにオーラの色に連想させる人が多いみたい」

「じゃあさ、先輩から学んでみようよ?」

 そういうわけで、芸能人の芸名の由来をネットで検索することにした。

 大女優の冬樹真理の由来は、彼女の再デビューが二月に決まっていて、冬に向けて芸名を考えよう。の『冬決まり』からきているらしい。

 主婦層に人気の俳優、佐藤蔵太郎の由来は、彼の実家が酒屋をやっているので、『蔵』を入れたらしい。

 マルチタレントでイマイチぱっとした活躍はないが地味にテレビに出続ける坂上千里の由来は、プロダクションの社長が以前から千里を歩いて見つけ新人につけようと、とっておきを温めていたもので、それに見合った彼女と出会い、千里という名前をつけたらしい。

 さらに昔にさかのぼると、初主演や初出演の役名をそのまま芸名にすることも多かったという。大スターでアイドル中のアイドル、松本聖子は役名からとったという。

「なんだかこうしてみると適当な名前を付ける人も多いんだね」

「みたいだな。結局名前なんて関係なくって自分が呼ばれたいものを付けるのが一番かもしれない」

「呼ばれたい名前かあ。ラブンツエルとか変な名前だと違う名前が欲しいなって思うだろうけど、わたしは明里って名前が好きだしなあ」

 悪気なく考え抜いた芸名をディスってくれるが、これ以上突っ込んでも悲しくなるだけだから聞かなかったことにしよう。

「僕も誠って名前がしっくりくるんだよな。じゃあさ、親に聞いてみない? 名前の由来。こんなピッタリな名前を付けてくれたんだから相当いいヒント持ってるはずだよ。で、また明日考えようか」

「う、うん。そうだね」

 心なしか明里の表情が暗く、少し引っかかった。そこには拒絶が滲んでいる気がした。


 そして次の日。そう毎日喫茶店に行けるほどのお小遣いはないから、今日は明里がお手伝いをしているお肉屋さんの休憩室兼物置で芸名を考えることにした。

 服やら新聞紙やら本やら、ごちゃごちゃした四畳半の小さな部屋だけど、コタツがあるので寒さはしのげる。それに狭い個室の方が話が弾むかもしれない。

 コタツに入って暖かいお茶を頂いて、一息ついてから本題に入ることにした。

「名前の事なんだけど。親に聞いてきた?」

「う、うん」

 明里の表情が少しぎこちない。笑顔を作るのにタイムラグがあるし、どこかに硬さが見える。

「どうかしたのか?」

「あのね、聞いたけどお母さん知らなかった。お父さんがつけたから知らないって」

「そっか……」

 その言い方だと、きっと明里の両親は離婚しているか、最悪はお父さんが亡くなってしまっているということだろう。ここで謝ってしまうとさらに空気が悪くなる気がしたので、僕は軽く流すことにした。

「それじゃ仕方ないね」

「ごめんね」

「いいよ、明里が謝ることはない。それでさ、僕はお母さんに聞いてきたんだけど、自分に正直な人に育ってほしいってことらしいよ」

「うん。ぴったりだね。やりたいことをできる人になりなさいってことだよね? 誠はそうなってるもん。女装してアイドルなんて普通の人はできないよ」

「それは褒めてるの?」

 明里が純粋な気持ちでほめていることをわかっていながら、僕は唇を突き出して拗ねたふりをする。

「ご、ごめん。でも本当すごいことだよ。だってやりたいことをやるにはそれに見合った結果が必要なんだもの。適当にやってこれがわたしのやりたいことです! って言ってもふざけた人なのかと思っちゃうけど、誠の場合はそんなことなくって本当かわいいから全然オッケーですごいんだよ」

 言葉が長ければ長いほどフォローされてる感が半端ないんだけど……。でも楽しそうに話しているのでプラスに受け止めることにしておこう。

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