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1-14 伝説の始まり

 舞台に上がった明里を見た瞬間、僕の二の腕に鳥肌が立った。

 彼女が満面の笑みでジッとカメラを見つめていたからだ。

 これから明里はツバキさんとのライブを比較されてしまう。それはライオンと素手で戦うような状態、もしくは装備がなくレベル五の状態で魔王と戦う勇者みたいなもの。それをネットに流されるのだ。

 それを何とも思っていないというのだろうか?

 左手にマイクを持った明里は口を開いた。

「初めまして受験番号百一番です。名前言っちゃいけないみたいなんで数字で自己紹介なんて捕まった人みたいでちょっと面白いよね。それより、さっきのツバキさんのライブすごかったですよね」

 会場に問いかけてはみるものの、生徒たちはレスポンスする余裕なんてなく、ただ明里をジッと見つめていた。返事がなく照れくさそうに明里は頭を掻く。

「えへへ。あんまり喋ってもあれだし、歌いますね」

 ぺこりと明里が頭を下げると音楽が流れた。

 課題曲は校歌をポップ風にアレンジしたものだ。

 ほとんど素人の明里がどんな恋愛魔法でライブを演出するのか、僕は息が苦しくなるくらい緊張して見入ってしまう。

 そんな僕の心境を知らない明里はずっと笑っていた。

 難しい最初のステップも、歌の入りも。歌の難所でキーが高い部分、ダンスの難所の腕と足を違ったテンポで動かさなくてはいけないところも、一度も苦しい顔をせず眩しすぎる笑顔だった。

 これは恋愛魔法の効果ではなく、純粋な明里の楽しいという気持ちからきているのかもしれない。

 恋愛魔法の要素が全くなかったわけではない。ダンスに歌に表現力を増すためのメーク、楽しさを増幅させるオーラ、それらはもちろん発揮されていた。

 けれどそれ以上に、魔法以上に彼女のもつナチュラルな笑顔に僕らは惹かれていた。

 恋愛魔法使いとしての原石。荒々しくも瑞々しいそのステージはツバキさんとは違った魅力があった。

 そしてツバキさんと同じくらいの楽しいが詰まっていた。

 自分の心の中で溜めておけないワクワクやドキドキ、好奇心なんかをはじけさせるように、明里は最後のフレーズで最高の笑顔を見せると腕と足を大きく広げた。

 すると爆発するように菜の花のような花びらが明里の元から吹き飛び、それは次第に僕ら受験生の視界を黄色く包んだ。

 明里が貯めに貯めたアクション。

 初めてのライブで、しかもまだちゃんとした勉強もしていない受験生が、体育館内を埋めるほどのアクションを見せたのは史上初かもしれない。今までラブマギカの数多くの入試試験を観てきた僕でも初めての経験だ。しかもそれを生で見ている。

 まさに最高のデビューライブと言って間違いないだろう。

 ラブマギカ界最高のスターが行ったライブ、その後にラブマギカ史上最高の初ライブが続いてしまった。

 普通ならプレッシャーの二乗で動けなくなるほどだろう。

 けれど不思議とそうはならなかった。

 いや、不思議なんかじゃない。きっと明里のお蔭だろう。

 あの全力の楽しさ。それがきっと僕にも、そして受験生たちにも伝わったのだろう。

 さっきまでのびくびくと萎縮した受験生は一人もいなくって、自分たちのすべてを伝えたいという意思で溢れているように目が生き生きとしていた。

『受験番号一番から五番ステージへお願いします』

 ついに僕の出番が回ってきた。

 恋愛魔法の先輩として負けられない。僕は緊張しつつもさっきよりも頬は少し緩んでいた。

1-11で、明里がサファイアオーラと間違って書いてしまっていました。

正確にはルビーオーラです。失礼しました。

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