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1-13 その道の、そのわけを

 面接が終わるとさすがの明里もこれは失敗だとわかっているようで、元気がなくうつむいたままだった。

「大丈夫。まだ終わったわけじゃない」

「うん。大丈夫。ただみんないろいろ理由があって来てるんだなって」

「それはそうだろ。目標がないのに頑張れないだろ」

「そうだね。きっとわたしって変なんだね。何もないのに頑張って」

「あるだろ? 商店街にお客さんたくさん呼びたいって」

「でもそれはラブマギカじゃなくってもできるよ? ラブマギカじゃないとできないことがわたしにはわからないんだ」

 ラブマギカにしかできないこと。それは確かに難しい問題かもしれない。

「そういうことはラブマギカになってから考えればいいんじゃないか? それに案外明里はわかっていてただ言葉にできないだけかもしれない」

「そう……だね。うん、馬鹿だもんね」

 しょ気モードに入った明里を慰めるのは至難の業だ。どんな言葉で慰め励ましても、すべてマイナスに受け止めてしまう。こういう時は何も言わず傍にいるに限る。

 この後に体育館で行われる在校生のライブで元気になってくれることを祈るしかできない。


 全員の面接を終えてから体育館に集められると舞台には一人の女生徒がいた。

 受験者たちはいよいよかと舞台に目を向ける。

 予定では生徒のライブとあったけれどいったい誰が行うのだろうか。一年生か二年生か、それとも……。

「誠、あの人も有名な人?」

 明里は舞台にいる女生徒を指さす。すらりとした長身で紫のオーラを纏ったラブマギカと言えば彼女しかいない。

「ああ。この学校のナンバー二で、ツバキさんの相棒、明戸あやめさんだ」

「へえ。すごい人なんだね」

「ああ。ツバキさん世代から新設された聖爛中学ラブマギカ一期生は、残念だけれど寄せ集めの雑草集団だったんだけど、その中でツバキさんと明戸さんだけが花を咲かせたんだ」

 明戸さんはオーラを会場に充満させてから口を開いた。心が落ち着く素敵なオーラだ。

「みなさん。ようこそ聖爛中学へ。今日は受験に来てくれたみんなにライブを贈りたいと思います。今日の為に、というは言い過ぎですが、調整をしてくれた我が校のクイーンに盛大な拍手を」

 みんなが拍手をする中、僕だけは手を叩けずにいた。

「くいーん? もしかして」

 僕の予感は的中した。

 ステージの幕が上がった先にいたのはツバキさんだった。この間のステージ衣装とは違うセーラー服姿だが、それには神々しさを感じる。

「すごい。またツバキさんだ!」

 明里はステージをより近くで見ようと駆けていく。僕もそして他の受験生たちも続く。

 受験料(五千円)は払ったけれど、正直この近さで見れるなら全然高くない!

「ねね。ツバキさんは腕とかにいろいろ巻いてるけどあれって何?」

 これは今日のテストに出ていたはずなんだけど、筆記試験が最下位なら当然の質問かもしれない。

「腕章やらバッチやらつけているのは広告なんだ。このライブはネットで配信される。もちろん僕らのライブもね。ま、僕らのライブにに視聴者は少ないだろうけど、ツバキさんが出るとなると見る人は多い」

 動画配信サイトでは聖爛中学のシークレットライブとなっていたけれど、それでもツバキさんを期待して配信を待つ人は多いだろう。

「ツバキさんを観る人に向かって宣伝するため、腕章に会社の名前や、髪留めやイアリングとかのアクセサリーに会社のロゴのモノをつけるんだ」

「そういうことなんだ」

 ツバキさんが身に着けるスポンサーはどれも大手企業のモノばかりで、その中の一つでも身に着けることが出来れば芸能人として成功と言えるような会社ばかりだ。おもちゃ会社から洋服のブランドまで幅が広い。

 ツバキさんは何も言わず、曲が流れるとパフォーマンスを始めた。

 間近で観ているからか、ひしひしとそのオーラが伝わる。

 踊りのキレ、澄み切った歌声、そしてそれを演出する恋愛魔法。すべてが完璧だ。

 弓を繰り出し矢を引くと、それが花火になって体育館中を華やかな光で染める。噴出系と模造系を組合す高難度なアクションは派手ながらに可憐で、もちろんミスもない。

 パーフェクトなラブマギカのライブだった。

 そんなステージだからこそ、僕も、そして受験生たちも終わった後に呆然とした。

 この後にやらなくてはいけないというプレッシャーに押しつぶされそうになる。

 ツバキさんの後に僕らのようなひよっ子のライブを観て、お客さんが感動なんてするわけがない。

 これはおそらく学校側の受験者に向けたプレゼントではない。きっと試験を難しくするための演出なんだ。どんな状況だろうとプレッシャーに負けないでパフォーマンスをするための精神面を計っているに違いない。

 そうわかっていても僕の足の震えは止まらない。周りの生徒も青ざめている子や放心状態の子がほとんどだ。

 ただこの状況でも楽しんでいる奴が一人いた。どうして笑っていられるのだろうか。

 お前が一番つらいはずだ。だってツバキさんのすぐ後にライブを行うのだから。

「ねえ、誠。今のツバキさんで少しわかった気がする。ラブマギカになりたいと思った理由」

「へ? どういうこと明里?」

「あのね。きっとキラキラ輝くためには自分も楽しまなくちゃいけないんだ。お客さんよりも。そうしないときっと伝わらないはず。ツバキさんは楽しいからラブマギカをやってるんだよ」

 何を言っているのかわからず呆然としているうちに、明里の受験番号が呼ばれた。

「受験番号百一番、ステージにどうぞ」

 そのアナウンスに明里は躊躇することなく向かっていった。

「楽しんでくるから! 誠も楽しもうね!」

 この状況でその言葉が出るのは、明里が天才だからか……それとも今日散々身に染みた、馬鹿という言葉が当てはまるのか。

 どちらにしろ明里のライブはファンキーなものになることに違いはないはずだ。

 ツバキさんという極上のステージを味わったあとに明里に期待するなんて、僕も相当可笑しいのかもしれない。これじゃライバルと言えない。友達でもない。ただのファンだ。

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