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小さなお姉様・ひより、もう一人ぼっちはやなのと魂華と夜這いの仕組まれた連立方程式?

     ◆

煌めきを吸収する闇の粒子が蠢く永遠とも錯覚を起こす無限にも感じ取れる光景、意識だけが通る不思議な感覚。

下に落ちているような上に登っているような。

何百メートル、いや、何千メートルも漆黒の闇をくぐり抜けても一寸先が感じ取れない恐怖と錯覚。

不意に白ずんだ微かな光が星の瞬きほど距離かと思えば手が届きそうな距離に。

魂だけでくぐり抜けていた感覚から血汐が駆け巡る肉体の感覚が神経を撫ぜるように実体化していく。

時間軸すら曖昧に思えた空間の終着のにび色の障壁をくぐり抜けた途端、急に現世に戻ったような感覚が身体中を走り抜けた。

穴が開いた天上から放り出されるように落ちた俺の眼下に……えっ、とりもち?

そして、一本の矢が鋭いスピードで俺の股ぐらを抜けていく。

更に鋭い矢が幾重にもこちらを狙いすまし放たれていた。

「むー、外れました」

「むー、クマさん柄のパンティ泥棒の侵入者は抹殺します」

間一髪、加速していた落下スピードが速く、放たれた矢は壁面に刺さる。

簡単にいえばとりもちに突っ込んでしまいました(涙)――お笑いウルトラクイズの若手芸人かよ!と突っ込みたくなるほどひっついてしまっています☠

ネズミホイホイならぬ人間ホイホイ☠

「むー、かかった❤」

「殺す、エロの根源的変質者の侵入者は殺す」

声の方向を見ると肢体に大きな熊の着ぐるみを着た薄ピンク色の髪を靡かせた双子?……というより同一人物の二人が無表情で俺をみている。

その瞳は生きている者ではない死者の冷ややかな色合いを感じる。

全力で逃げだしたいが、相思相愛のような圧倒的な粘着力が話してくれない(涙)……し、仕方がない、さらば浴衣達よ!

張り付いた浴衣を蝉が如くおそるおそる脱皮!皮膚にとりもちがついてなかった事がたまたまだが運が良かった♪

「むー、脱皮した露出狂発見!」

「むー、象さんちんこ小さいです」

さりげなく心にダメージを落としていった熊の着ぐるみをきた二人はお互いに顔を見合わせると前置きもなく足の先から光の粒子となって煌びやかに霧散していく。

ぬかるむ足場で慎重にバランスをとり、ぐるりと部屋を見渡す。

粘着シートの回りは体育の授業で使う白い体育マットが敷き詰められていた。

四方は閉鎖的に壁囲まれた無機質な十畳程度の広さだが出入り口が何処にもない。

何故か大自然の森林に囲まれたような空気……とてもみずみずしく美味しい。

小さく心を鼓舞すると歩みを進める為に俺は一つの決断をとる。

目視で距離を確かめて一呼吸置くとゴゴゴーと言う覇気をまとい身体中の筋肉を躍動させる。

オリンピック選手のような類まれなる集中力!失敗が許されない緊張感から心臓が痛いほど高鳴っている事が自覚できる。

精一杯身体を振りかぶって安全圏の白い体育マットに向いその場からスーパージャンプ!

見事過ぎるほどの滞空時間を計測!豪快なジャンプでたどり着いた安全圏❤

足が沈むほどの肉厚のあるマットに手をつくと自分のあられもない姿を再認識❤そして部屋を再び見渡すと不思議な違和感が……どこか好奇な視線を感じる。

俺のフルヌードを見るなんてストリッパーなき・ぶ・ん❤

とても好奇で優しい視線……特に浴衣を脱いだ辺りから(きゃっ♪)


――キミはどう思う?いやはや、殺されると思いきや、次は好奇な視線……俺は思うのだが不幸な誤解とすれ違いが発端となって今の裸の俺がこの場所に存在しているのでは?一緒に考えてくれないか?きみはどう考察している?


一糸まとわぬセクシーな姿の俺はロダンの考える人なみに顎に指を当てて目を凝らして見る。

好奇な視線を感じる方に目をやると無機質でくすんだねずみ色をしている変哲もない壁面だ。

壁面の近くまで足を進める。

変哲もない壁面だが、実態がないように質量が感じられない、ぼやけ霞むような、蜃気楼のような。

手を当てておそるおそる押してみる俺……おおっ、マーベラス❤

そこに壁はなかったがタコの吸盤やサイクロン掃除機のような強力に吸引される力が急激に高まり壁面に全身吸い込まれる。

刹那、一瞬の酷い頭痛と共にポンッ!と異なる空間にはじき出される。

なすがままにされる俺はつんのめるように推力が働き前にドタリっとつんのめり倒れてしまう。

その時、運命に翻弄されたような既視感が脳裏をよぎる俺と瞳と視線の主の眼差しが不思議な距離感で交差しあった。

艶やかで腰の辺りの長いキラキラとした薄いピンク色の髪を後ろで束ねて、牛乳フタのように厚いレンズのグルグルメガネにタヌキさんのアップリケが目立つピンク色の可愛らしいパジャマを着て、ファンシーなクマさんのぬいぐるみをダッコした小柄な美少女がタンスに隠れるようにひょこっと顔を少しだけ出して俺を見ている。

「むー……貴方は……なんでここに居るの?」

とても深い夢の底で揺らめくような怯え、空間に消え入りそうな声。

俺は小鈴の言葉を脳内で反芻する『ひより様の館に来てしまいましたぁ、不法侵入ですぅ』という言う言葉……立場的な翻訳をすると……俺、完全に不法侵入の悪いやん。

うむむ!話せばわかる!ここは正直に答えよう――俺は精一杯優しく語りかける。

「け、決してキミのプリティなパンティを見学しに来たわけではないのです。すまない、薔薇の世界(涙)の事を考えていたら、落とし穴に落ちていて」

俺流の謝罪の気持ちいっぱいで深ぶかと頭を下げたが、プラリ☆とちんこ丸出しの素っ裸の俺……説得力ナイシング☠

小さな手が血色の好い口元を隠すとひよりはキョトンとして不思議がっている……あれっメガネの奥の視線は俺の下半身に。

「薔薇?花が好き?……私の屋敷は私の心と連動している……何故、貴方は私の前に居るの?」

タンスの物影から半分顔を覗かせてジ―っと見つめる仕草、愛玩動物のようにキュートである。

不思議とばかりに質問されるが意図が分からなく、困惑してしまう。

ええい!しかたがない……ここはカクカクシカシカと説明するかぁ。

軽く空咳を一つつくと、常識的な経緯を話し始める。

「えっと、俺は薩摩ふぶきといいます。閻魔小鳥さんに連れられてこの大きな館にやってきました。さっき、お風呂に入っていて、歩いていたらここに迷い込んでしまいました。本当にすみません」

こんなに真面目に……背筋が寒くなる(涙)

簡潔な説明と謝罪の言葉を話すと、タンスの物影から「何故、貴方は変質者のようなのに、そんなに魂花が綺麗なの?……私の求めていた魂花?」と問いかけられる。

――う~ん、魂花が綺麗って言われてもなぁ。

少し苦笑いの俺を見て、物影に隠れる美少女ひよりはぎゅと熊のぬいぐるみを抱いて、透き通るような微笑を浮かべてコクリっと頷いた。

「……こっちに来て」

ひよりは物影から出てくると、ピンクのパジャマを翻し、小さな手で突然現れた、隣部屋に続くドアを開けて、公然猥褻罪でしょっぴかれそうな俺においでおいでと慈愛溢れる手まねきで隣部屋に招く。

招き入れられてドアをくぐったその先……

そこは円筒状の吹き抜け空間、沢山の本棚がびっしりとならび、世界中の蔵書が存在しそうな不思議な部屋だった。

中央に天蓋付きの大き目な大理石のベットと高級感漂う布団と少女らしい僅かなぬいぐるみがある以外は全て本に囲まれていた――図書室の香りがするぅぅぅ♪

突然、小さく柔らかな感触が俺の手に添えられる。

ピタリっと手を繋いだひよりは小さな身体で俺をひっぱるように先導してベットに向う。

几帳面に整えられた真っ白のシーツにファンシーな星型模様いっぱいの掛け布団、枕元には少し変わったつぎはぎだらけのうさぎのぬいぐるみ。

ひよりはミドリカエルさんのスリッパを脱ぎ、フカフカのベットにもそもそと入ると枕元からはにかみながら少し相貌をのぞかせて手まねきをして俺を呼んでいる。

――も、もしかして❤

心の底から高鳴る鼓動!何気ない上目使いに心拍数がぁぁぁぁ。

そして小さな手で『ポンポン』と二回ほどひよりは隣の空いているスペースを可愛らしく叩いた。

このゼスチャーはおそらくここに添い寝をしろという合図だろう。

静謐な雰囲気の中、黒い双眸が僅かに揺れる、何故か震える手でふっくらとした布団を上げて、ベットの中に身体を横たわらせる……意外とウブなんです♪

相好が崩れて微笑んだひより――何だか満足している感じ☆もそもそと動いて俺の地肌露出度100%の胸元にぴったりとくっついて顔を埋める、ペロリっと可愛らしい舌で一舐めしてくる。

「ひゃ!」と俺の裏返った声が零れる。

吐息もくすぐったい♪俺の手が無意識にひよりの滑らかな薄ピンクの髪を丁寧に撫ぜて優しく愛でる。

「むー」と胸元から不思議な声を漏らすひより。

よっぽど気持ち良かったのかもっと愛でろとグイグイ頭を突き出して自己主張をしてくるのでたっぷりと愛でる。

きめ細かく柔らかな髪の感触がとても気持ち良い……そして、何故か懐かしさを感じる。

やがて満足したようにクスクスと忍ぶような吐息が宝石のようにキラキラしたつぶらな唇から洩れて、御簾のように長くかかった前髪を掻き分けて振り仰ぐ……俺は驚いてしまった。

それはメガネを外した純粋無垢な天使のように一点の汚れを感じさせない美しさと可愛らしさが融合した相貌だった……俺は自分の顔が熱をおびて少し頬が朱色に染まった事がわかった――か、可愛い。

少女……ひよりの華やかな笑みに心まで魅了される。

この蜜月な時間、無意識に引き寄せられる(欲望に……)ひよりの前髪を掻き分けておでこに唇を軽く当てた、そう、オヤスミのキスをしてしまった。

ポォ―と白亜の肌が一瞬で赤みを帯びてしまう、ひよりは驚きで軽く目を見開き、両手で口を隠すような仕草をみせた。

――あっ、しまった。お、思わず……

うっかりと……直ぐに謝罪の言葉を言おうとした刹那、唇は柔らかな感触によって遮られた。

慎ましくはにかみながらひよりの唇が離れて相貌が鼻先が触れ合う距離……僅かな間だが、再び小さく柔らかな唇がふぶきの唇と重なり合っていた。

一瞬にも永遠にも感じられた時間、俺は唇の感触に茫然としてしまう。

「おやすみなさい……お兄様」

――お兄様?

小さな影が音もなく丸まるように安心しきったひよりは再び、ふぶきの胸元に顔を埋めてほどなくして小さな可愛らしい寝息をたて始めた。

仕方なく俺も眠る事にした……今、俺の隣で肌が触れ合う、凄く暖かな感触が心まで温めてくれる。

何故だろう……無意識に瞳から涙が溢れてきた……辛く寂しかった心に輻輳して暖かさが染み込んできた。

俺の胸元にしみ込んでくる人肌の暖かさ、俺は盛大に身体を弛緩させた。

しかし、明日の朝、この出来事が閻魔家を揺るがす事になる事など知るよしもない、ゆっくりと閉じた瞼、今日はとびっきり良い夢がみられそうな予感がした。

優しくひよりの髪をいじり愛でながら眠りに陥ってしまった。


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