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天魔の列車といたいけな天使とお尻が痛い囚人たちの挽歌

  ◆

元気よく♪蒸気をお空に向ってもんもんと吐きだし、力強く走り続ける機関車。

果てしない雪が降り続く荒涼した砂漠をものともせず、荒々しく暴走するように機関車は直進していた。


ガタガタガタ――ガッタン!!


その揺れ具合……クリスマスのケーキ屋さんでアルバイトがホイップクリームを作る攪拌作業かよ!と突っ込みたくなるほど荒々しい、ほんま、気分が悪い。

千鳥足チックな酒拳でも演じたくなるほどの酔い……いやいや車両酔いだな。

揺れに踊らされた小石が跳ね上がる通路。

錆びついた鉄壁に目をやると……ネズミが通れる隙間しか開いていない小さな窓。

その僅かな隙間からはパリパリの海苔ぐらい湿気のない乾ききった砂埃しか舞いこんでこない。

うっひぁぁぁ……どう考えてもブラリ旅で気前よくお金を払って乗る快適な電車とは趣向が違う。

そして車両内をむせるような不潔な臭いとピリピリとした緊張感が調和して人の心まで浸食していく。

某電波少年の突然、目隠しをされてアジア大陸横断しろ!とか宣告されるほどの不安感が車内全体に色濃く含んでいた。

汽笛が聞えるたびに目的地にまっしぐらな事はわかるが、何処を走っているのかまったく見当もつかない。

そこのキミも体験して、共に見てもらえば分かるが、誤解が無いように懇切丁寧に伝えよう。


――旅行ではありません☠――


けっして和気あいあいと砂漠の真ん中で楽しい旅をしてはいないと申し上げよう。

罰ゲームチックに強制的にさせられている……と言った方が正しいな。

看守様はBL本に出てきそうなニヒルな笑みが似あう、オカマチックなおっさん乗務員。

いたいけな俺の腕と足をSっ気たっぷりにド変態マゾを彷彿させる程にグルグル巻きに荒縄で締め付けてくださいました(めっちゃ、痛いやん(涙))

これが悶絶亀甲縛りなら揺れの勢いで下半身にそびえるリトルな尊厳は潰れていたことだろう。

――もう、気分は弁護士呼んでください(願)

車両内を見渡して、百歩譲っても、俺が一番酷い扱いをうけている(怒)

『ふぅ』と喉をならして嘆息一つ……溜息混じりで申し訳ないが周囲……いやいや、車両内の状況だけ伝えておこう。

車両内はサーカスの猛獣を入れる檻が隙間なく所せましと並ぶ。

中央の陣取っている僅かな通路は巡回する看守とお腹を空かせて『何かくれだチュー』と言ってそうなお目目がキュートな痩せこけたリアルミッキーが闊歩する程度。

と言う俺もボ○ショイサーカスの猛獣の如く、檻の中に入れられている一員である。

さて、そこのキミ、もうお気づきか、この列車の状況を。

答えは人身売買超特急でした❤……って助けてください(涙)

俺が視認できる範囲内限定だが、生きる価値の無くした人間が家畜同然に扱われて鉄格子ひしめく檻に入れられている。

まぁ、ここに乗っているやつは、騙されて誘拐されたり、俗世で死刑が確定した犯罪者や俺のように借金の肩代わりの代償として売られた人間。

使用用途……取り扱い説明書みたいな言い方ですまん……大半の者は臓器を売られたり、実験所に連れていかれて危険な被験者となったり……若いねーちゃんや子供は変態貴族に売られたり娼婦として売られることもあるらしい。


――はぁぁ、俺の人生儚かったなぁ(涙)


何だか達観してしまうよ……こんな事なら大好きなみかんをお腹いっぱい食べておくべきだった(涙)

後悔先に立たずとはこの事だな……またまた溜息一つ。

今の車両内の人々は寂寥感たっぷりに人生のどん底で走馬灯のように過去の想いでに現実逃避している意気消沈した連中ばかりだ。

これでも出発して二時間ぐらいは壊れたオーディオのように罵詈雑言を喚き散らしていたおっさん達もいた。

いやぁ、とても威勢が良かったのですよ♪

ただし威勢が良かったのもオカマチックな看守が来るまで、そこからは阿鼻叫喚チックな黄色い悲鳴に変わる。

黄ばんだ小汚いパンツを脱がされて、げっそりと消沈してガサガサのごっつい手でお尻を押さえながら、だらしなくシクシクと泣いてやがる……この惨状はきみのご想像にお任せするよ♪。

悲惨な出来事でしたね❤……にしても、見ていた俺も吐き気がしたよ。

これからの訪れる未来を達観すると……暗澹たるものだな(涙)

少しばかり張り詰めていた糸が切れたのかな?口元が綻んでしまい「ふふふっ」と妙な笑いが込み上げてくる。

「クスッ!笑うなんて余裕やねぇ。お兄ちゃんは怖くないの?」

柔らかな物腰の声が可愛らしいアクセントで隣の檻から語りかけてくる。

反応するようにチラリっと目をやると、俺の瞳の中に幼さが残る顔立ちに、肩まで届く少し痛んだ黒髪、季節外れの短パンに半そでのシャツ……ただ、クリっと大きな瞳がとても特徴的な少女が憔悴しきった顔に精一杯の笑顔を浮かべて俺を見つめているみたいだ。

「そうだね、きみのおっぱい触らせてくれたら怖くないかも❤」

ああっ、人生の最後の願いに女性の柔らかなおっぱいを触らせてください。

俺の素っ頓狂な返答に少女はキョトンとした面持ちながら、しなやかな仕草で自分の胸に手を当てて、僅かに小首をかしげる。

「うちの胸で良かったら触らせてあげてもいいけど、ボリュームないけん」

少女は少し眉をしかめて申し訳なさそうに『ふぅ~』と胸元に視線を落としながら溜息吐き出す。

うな垂れながら力なく頷く少女の姿は物悲しさのプレリュードが今にも奏で響きそうな儚さと美しさが混在している。

「あのね……うちね……売られるんやって……なんか、物凄い変態のおじさんが大金置いていって……うち……買われたんやって……そやから……うちは奴隷なんやろ……良くわからへんけど……性の奴隷になるんやって」

その眼差しには溢れんばかりの涙をためて悲哀に満ちた面持ちは不安の色が滲んでいた、慟哭しそうな雰囲気。

コンビニにあっても売れそうもない、しぼりたて非憤果汁120%ジュースにむしばまれる少女。

柔らかそうな身体をぎゅっと抱え込み隅っこで消沈しながらちょこんと座りこちらを見る。

栄養失調?の為だろうか、肌が青白くなっている(そう言えば俺も三日間強制絶食中☠)

荒れた唇から絶望にも似た言葉が独り言のように訥々と零れ出た。

「お兄ちゃんはうちみたいに売られるの?……怖くないのぉ……うちはいややわ……」

エグエグと泣き始める少女。

――ああっ、童貞のまま、俺も売られるかぁ……

無意識に苦笑していた。

俺のエロ指数からして行先は、下剤を百錠のんで、人間はトイレを我慢できるのか?実験の被験者行きだな(びえぇぇぇぇん、誰かヘルプ・ミー)

そんな極度の緊張感が漂う中、お尻が飛びあがるほど『ガタンッ』とロデオゲームのひと揺れが如く車両が大きく跳ね上がる。

カラリンっと鈍い音が鳴ると俺の名前を記したプレートが慣性にゆだねるように足元に転がってきた、そしてそのまま少女と反対側の檻へカランッと転がっていく。


――サツマ・フブキ――


カタカナで書かれた俺の名前サツマ・フブキ(薩摩・ふぶき)のプレートを見た隣のおっさんが酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら化け物を見るように俺を凝視してくる(おっさんの方が化け物顔だよん♪)……はぁぁぁ、極めてうっとうしい。

しかし、化け物を見ると言う点はなまじっか外れてはいないようなきがする。

「お兄ちゃん、チャーシューの焼き豚みたいにグルグル巻きやん……なんでそんなに縛られてるん?」

好奇心?俺へ興味を抱いたのか?じーと見つめる瞳を向けた少女は落胆していた相好に驚きの色が加わった。

両手・両足を荒縄で繋がれて鉄格子に結び付けられている……まぁ、何故か、化け物扱いされているので。

「Mなんだ♪とても嗜好的ドMなんだ。さぁ、俺を踏んで女王様とお呼びっと叫んでいいぞ」

――女の子にふれたいよぉぉぉ

一人妄想で下半身がテント状態❤

クスリっと少女は弱弱しく笑ってくれる。

馬鹿なふりをしている下心いっぱいの俺は少女のとった行動に驚いた。

よたよたとおぼつか無い足取りで傍らにくる。

「お兄ちゃん、酷い扱いやん、手首から血がにじんどる」

躊躇も恥ずかしげもなく、上半身に着ていた薄着のシャツを脱ぎ、きつく縛られ過ぎて痛々しく血が滲んだ手首に包むようにそっと当てる。

暖かな体温を含んだシャツが俺の皮膚に人の温もりを届けてくれる。

「すまんなぁ、こんなに痛そうやのに。うちにはこれぐらいしかできひんから……」

慈愛ともとれる優しさと精一杯の申し訳ないさが全身から溢れだしている。

白くスレンダーな上半身を露わになった少女は隠そうともせず俺に寄り添ってくれた。

周囲のおっさんの下賤で興奮気味に好色の視線を少女に向けるが、少女は無視しながら、「痛い痛いの飛んで行け♪」と真剣な面持ちを浮かべてあかぎれた手で俺の手を必死にさすって温めてくれる。


――この子は何なんだ?


この瞬間……不覚にもリピド―の根源であるエロの天使は脳内には舞いおりず、ただ、疑問符がピコリっと頭に浮かんでいた。

「ほんとうにすまんなぁ……お兄さん、もの凄い痛そうやのに……うち馬鹿やからこんな時、何していいか良くわからん」

少女は悔しそうに唇を噛みしめる。

『ヒック』と嗚咽の混じった声も零れている。

――う~む、どうも俺は少女の心配の的のようだ(イッツ・初体験❤)

何故だろう、少しだけ心がほんわかと温もっていく不思議な気分……俺は寝返りをうつように態勢を入れ替えてゆっくり少女に目を向けた。

大きな黒水晶のような美しい瞳が凄く特徴的な儚げな雰囲気の和を想像させる面持ち……露出している肌や肉付きが極めて貧弱……いや、華奢だがそれは年齢相応の少女だからだろう。

その潤んだ瞳からは大粒の涙がホロホロと流れ出て、必死に俺の手を温めてくれている。

――良く解らない子だな……口元が少し緩んでしまう。


グラグラグラ――


先行して軽い揺れを感じた。


そしてあれほど俺達に不快感を与えていた揺れが治まり、沈黙を好むように列車の進行が止まる。

……と同時に前方の車両から理科室実験大失敗なみの耳を劈く大きな爆響音が大気を揺らす。

次の刹那、瞬き出来ないほどの溢れだす光の波が瞬時に車内全体を呑み込んでいく。

僅かな時差があり遅れてこの世が消滅したんじゃ?と思えるほどの爆風が天変地異の如く軽々しく車両内に所せましと並んでいた檻をお外に吹き飛ばす!

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

何たる僥倖!俺の檻も丸ごと外にぶっ飛んだ。


ゴロゴロゴロ!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」と悲鳴をあげながら土煙を上げながらサイコロのように転がる檻……実は絶叫マシーンは苦手です(涙)

うっぷ!と込み上げる胃液を必死に我慢しながら耐える俺。

豪快に転がる檻の中で身体がグルグル回る度に衝撃が檻は形を変えていく。

やがて、檻が衝撃に耐えきれず、形をかえて、少しづつ崩壊が始まる。

慣性の力が沈黙して転がり終えたころには俺を束縛していた荒縄は引き千切れ、俺の肢体は自由を取り戻した(おおっ!フリーダム♪)。

「いてて……暴力的なリアルサイコロゲームだな」と言いながらもラッキー❤瞳をキラキラ輝かせて心は小躍りを踊っている。

砂塵が舞い上がり、視界の先はぼやけているが、はるか前方を見ると大破した列車が息をひそめるように停車している。

辺り一面を冷静に見渡す、俺の本能は風に煽られた危険な香り、空間の機微、そう不穏な空気を感じ取る――簡単に言うと危ないから早く逃げようね❤といっている。

――よし、ここは三十六計逃げるに如かず♪。

満身創痍、痛む傷口を押さえて走りだそうとした俺だが、一昔前のショートコントのように足元に大きな物体か引っ掛かる。

偶然の重なり?眼下に全身砂まみれになった上半身がセクシーな裸族的フラグがあがった少女が意識を失いぐったりと倒れていた。


――大人の恋愛シュミレーションなら分岐点だな❤


などとエロチックな事を想像しながら、健全な男の心理として、とりあえずセクハラにならない程度に突いてみる。

――反応なし――しっかりと顔を覗き込んで見ると、白目をむき出しよだれを垂らしながら気を失っている。

パーツが良いだけにとても残念な相好……もう、かなり残念さん♪

『ふうっ』軽く溜息をついた俺はとても残念な顔をした少女を抱きかかえ、背中におんぶして列車から離れるべく全力で駆けだした。

ああっ貧乳すぎて、胸の感触が味わえない事が残念☠

この事故のおかげで、周辺では俺と同じように混乱に乗じて、チャンスをゲットだぜ!と逃げまどう奴隷達で溢れていた。

もたれかかるように俺の背中に身体をあずけて肩口に眠り姫のような顔を突き出し意識を失っている少女。

とても綺麗で何処か安心しているように深い眠りについているよう見えた。

もしや……タヌキ寝入りではなどと頭に浮かべながら神様が与えてくれた時間を俺は全力で走るのだった。


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