絶体絶命のピンチ・・・あっ、えええーっ! 助けるお礼におちんちん尻尾を見せてってなんのことですか!!
◆
悪夢……そう、悪夢が俺を取り囲んでいた……みんな、少し耳を澄ましてみよう。
「お尻いや~ん」
……ひぃぃぃぃ、た、助けてください。
ニワトリの絵がキュートな卵印の段ボールをかぶって小鳥の邸の遊歩道の片隅に隠れている。
時折、金銀眩しい極彩色のゲイおにぃが往来するがこちらには気がついていない。
お気づきだろう……ミカエルがいない事。
じ、実は……先ほど、小鳥の邸に乗り込んだのだが……門内に小さくふわふわしてる白い怪しげな物体に触れてしまい(それが防犯システムだったぁぁぁ)武器を持った黒服の赤鬼&青鬼達が参上……足手まといの俺は怯む事なく戦うミカエルに逃がされる形で遊歩道をひた走ったが、まさかのゲイおにぃの集団に遭遇!お尻からがら逃げとおし。
と言う事で段ボールでカモフラージュしてここに身をひそめている。
煌々と光が宿る玄関口まではもうひと息なのだが……突破出来るほど俺は強くない(涙)
ポケットから顔を出した赤髪のメガネっ子座敷わらしヒナナが親指を立てて
『玉砕覚悟で突っ込め!ばーか』と言っているように見える……出来るものならやってるわぁぁぁ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ!
ポケット越しに激痛が走ると俺は段ボールを突き破り真打ち登場みたいに全力で飛びだしてしまった……雨蜘蛛の剣(金の針)で刺すのは反則でござるの巻☠
あっという間に極彩色のゲイおにぃ達に囲まれてしまった……ひいぃぃぃ、一番痛そうなプラチナの大根が俺に向って頬?紅潮させてウインクしてくるぅぅぅ☠
……この混ぜるな危険状態の俺とゲイおにぃの状態……ヤ、ヤバすぎます。
予想通り「お尻いや~ん」と飛びあがったプラチナの大根、ターゲット・イン・俺……もう、手助けは皆無……と思われた刹那、プラチナの大根がひときわ大きく「お尻いや~ん」と断末魔を上げて真っ二つに割れた。
茫然と瞳を閉じて歯ぎしりをしながら絶望の波にのまれかかっていた俺に陽気な声が降り注いだ。
「まだ、無事だったのですね♪外が賑やかだったのでもしや、うししっとお楽しみなのかとワクワクしながら見に来ましたのに……もう、ふぶきさまぁ、しっかりお尻に刺さってる現場じゃなかった事にがっかりです……」
残念そうにシュンとした面持ちとは裏腹に快活の良い声、言っている内容が残念ですよぉぉぉ(だけど、助けてくれたからイーブンにしておこう♪)
銀色のポニーテールを靡かせて、ちょこちょこと俺の前で仁王立ちする小鈴
……ああっ、小鈴♪キミが天使に見えるよ。
赤と紫の瞳がキラリと光るとゲイおにぃ達は恐れるように一歩二歩に後ろに後退していく。
クルリっと振り向いた小鈴は興味津津の好奇的な瞳で俺を仰ぎ見る。
「ふぶきさまぁ、助けてあげるのでおちんちんしっぽ見せてくださいです」
――?――一瞬、俺の脳内思考が氷点下の勢いで凍りつく……な、なんで、意図がわからん。
キラキラと輝かせた瞳に胸元とギュッと手を組んで可愛らしくお願いのポーズ……ちょっと可愛いではないか♪
「何故?」と言う俺の問いかけに「はううぅぅ、恥ずかしいです。もう、Sなんですから、ふぶきさまぁ」と顔を真っ赤にしていやんいやんとクネクネする……って俺の方がはずかしいわぁぁぁ!
もう、しかたないですねぇ……と小鈴……あれっばりばりっと服が破けて、ひぃぃぃ、な、何、巨大な狼っぽい化けも……いやいや、幻獣になったぞ♪
その姿は金色に輝く悠然とした毛並み……丸太のように太い四本の脚、獰猛なケルベロスを連想させる面持ち……辛うじて赤と緑の瞳が小鈴を連想させる。
「グォォォォォン」
耳を劈く大咆哮、その迫力にゲイおにぃ達は蜘蛛の子をちらすように我先に逃げて行った……もう、失禁しそうなほど怖いです(涙)
金色の巨大な狼が振り向く……その体躯は八メートルはゆうにあるぞぉぉぉ。
ペロリっと身体中を一舐めされる……すみません、かなりの勢いでチビってしまいました(恥)
「グォォォォォン」
雪がしんしんと降る空に向って雄たけびを上げると、金色の巨大な狼はみるみるちっちゃくなってゆく……そして、いつもの小鈴の姿に変わっていく。
「くしゅん!変態です。小鈴の裸が見たいからってわざとゲイおにぃに襲われたのですね。酷いです犯罪ですロリコンの域です。これはもう、チョコレートケーキを三個はご馳走にならないと、許されないレットゾーンです」
ぴしっと指を突き出して俺にがぶり寄る。
あまりの剣幕にコクコクと頷いてしまう俺……な、何て意志が弱いのだ。
「さて、約束のおちんちんみせるですぅぅぅ」
がばっと飛びついて来た小鈴は俺のズボンをはぎ取る。
ああっ、パンツまでぇぇぇ――
ジロジロと真剣に見ながら「本当です、小鳥様の言った通り、小さな象さんです」と何故か満足そうに呟いた……象さん、よりも『小さな』の言葉に傷つきました☠
ぴんぴんっと無邪気に指ではじく小鈴に「はぅぅぅ」とへんな声を出してしまう俺。
あれっ小鈴の背後にとんでもない威圧感が……
そこには、頬をぴくぴくと引きつり極限近くまで嚇怒した活火山のようなミカエル……憤懣やるかたないと言ったご様子。
冷静になれ……こ、これはまずい、シチュエーションでは?
俺はプルプル首を振り、ミカエルに必死にジェスチャー&アピールをする。
裸の少女に下半身裸の男性がチンコいじられているの巻き……や、ヤバすぎる光景……絶対に誤解していますよねミカエルさん♪
『ふぅ』と深い溜息をついたミカエル、何故か襟を正してすっと冷厳な眼差しを向けてくる。
「さぁ、せめて私の手で天へ魂を送ってあげます。残酷な死にかたで」
ああっ――ミカエル、目がマジですよ!!誤解です、誤解なのですよぉぉぉぉ。
雪はしんしんと降り続き、誤解が解けるまで俺は遊歩道を逃げ続けるはめになるのであった。
その時ばかりは極彩色のゲイおにぃからも同情の瞳で見られていたような……(涙)