地獄の鬼ごっこは恋の始まり・・・ひよりは待っていたのですよの巻
◆
しっぽりと夜の帳が降りた街は騒然とした喜劇……いや、悲劇に見舞われていた。
幻想的に雪がふる薄暗い宵闇が街灯に照らされた遊歩道で必死の形相で逃げまどう男達……そして狙いを定める狩人……キラキラとプリズム感が美しい煌びやかなゴボウや大根がスナイパーの弾丸のように正確無比に小さな菊の穴にチェック・イン♪
あなたの知らない世界がまさしく阿鼻叫喚の世界が広がっていた。
赤茶色の煉瓦が敷き詰められた遊歩道には路傍の石のよう転がり、つきあげられたお尻にエクスタシーのうっとり顔のゲイおにぃが突き刺さった男達…
…力尽きていた……なむなむ。
その勢いは某Tウイルスのように島全域に浸食していく、ゲイおにぃの跳梁跋扈!街を一大ブームのように席巻していた。
その行動原理は獲物を狙う狼の如くキラキラと眼光を輝かせたハンターだ。
今、瞬間も男達を襲い、尊厳を失う、断末魔のような悲鳴が島全体を揺るがしている。
そんな壮絶極まる光景を俺は横目で見ていた。
ぐっと寄せられて絡みとられた俺の腕……柔らかな感触、人肌のぬくもり……ああっ、ミカエル、豊満なおっぱいがぐいぐいと当たっています♪
淡雪が肩に舞い降りるような寒空の下、冴え冴えとした月光に祝福されたような俺の腕を絡めとり身体を寄せて学生服姿のミカエルと二人……遊歩道を磁石のようにぴったりとくっついて歩いていた。
クリスマスに愛の天使に祝福を受けた恋人のようなオーラを出して堂々と閻魔三姉妹の館に向っている……が俺の中で大変な問題が発生していた。
――そこのキミ、誤解しないでくれ!今は俺の姿を見て見ぬふりをしてくれ。しかたがないのだ、これしか生き残る手段が(涙)
かじかんだ頬は寒さの為に僅か紅くなり、むき出しの太ももはいつも以上に白く感じられた。
紅い煉瓦が敷き詰められた遊歩道を……ああっ……また、鋭い視線が突き刺さる☠
それに――寒いです――助けてください。
「くしゅん」と甲高く俺はくしゃみをする……確かに、ゲイおにぃは寄ってこないが同時に人としての尊厳が消えていく(涙)
「きゃぁぁぁぁ」……まただ、顔がムンクの叫びになった、うら若き女性が涙目で悲鳴をあげて逃げていく。
当然だと思う……
気温は氷点下近くまで下がっているこの時間……魅惑的な黒のフリル付きブラジャーと脳殺確率100%ビキニを越えたフリフリのブラックTパック……ナイスパティーのミカエル、ここぞの勝負下着❤って、なんで着てるのが俺やねん、俺がきてるねん!誰が俺のお尻見て興奮するねん!(はっ、ゲイおにぃが刺さった男達が気色の悪い笑みを浮かべて俺を見て興奮してる……こ、怖いです(涙))
セクシー過ぎる俺……壊れた訳ではありません。
ゲイおにぃに見せつけるようにハードな衣装(下着姿)そして、寒空の下……何もはおらず……ってただの露出狂の変態やん。
ゲイおにぃ達はいぶかしむように道を開けてくれる(あっ、今、恥ずかしそうにぽっとなってゲイおにぃにお尻さわられた☠)、とってもモーゼな気分♪……あっ、『変態反対』と書いたプレートを持った可愛い女の子達が石を投げてくる、ついなの鬼な気分(涙)
「心配するなふぶき、いつでも私が傍についている。私さえいればお前のお尻には指一本浣腸させないから安心しろ。触れて良いのは私だけだ!」
一瞬だけ力強く微笑んでくれるミカエル、天使のような笑みだ。
そして鳥肌で小刻みにブルブルと震える俺……素足に履く靴だけが防寒具です♪
のどが震えて「はぁぁ」と白い溜息が……自暴自棄気味に少し引きつった微笑を浮かべた俺に「人肌の温もりってあったかい……」とミカエルが耳元に吐息と囁きをふきかけてくる。
初々しくリンゴのように赤みをおびた頬を俺の腕にすり寄せて、軽くキスをしてくれる、そして哀愁漂いながらしんみりと俺を見つめるミカエル。
白亜の肌が熱をもったように赤みがかっている……金髪に碧眼……ああっ、バニラなパフュームガ鼻腔をくすぐる……色っぽい♪
瞳は少し潤んでいた……上目使いに振り仰ぐミカエルが子犬のようにペロリっと頬を舐めてくる……とても妖艶なまでに蠱惑的☆……え、演技なのか?本気になりそう、耐えるのだ理性よ!
さすがのゲイおにぃ達もキラキラとした身体に雪をかぶりながら「お尻いや~ん❤」と両目を手で隠しながら咆哮してはずがしがっている。
極彩色のうぶなゲイおにぃ達……羨ましそうに遠巻きにこちらを見ている……ミカエルの言っていた『ゲイっぽい男と貧乏少女熱々カップルは襲わない法則』は正しかったようだ……が俺の人としての尊厳がぁぁぁぁぁ。
ジェットコースターに乗ったまま命綱なしバンジージャンプをした緊迫感のように心が底なし沼の底辺までマックスに沈んでしまいそうになる。
突然、ミカエルの足が止まりぐいっと腕を引き寄せられる。
「見えたよ、あそこが閻魔三姉妹の長女、閻魔ひよりの館」
俺は髪につもった雪を払うと寒さに凍えた喉をゴクリっと鳴らした。
その瞳に映し出されたひよりの館……石垣との間に神木が豪奢に使われ古式の伝統を重んじるような東洋の意匠造りの檜の櫓門(渡り型)……立派すぎる(驚)
思わず見上げてしまう俺とミカエル……開け方がわからん。
茫然とする二人を招き入れるようとする意志が働いたのか重厚な門は『グゴゴゴゴォォ』と音を響かせて開門していく。
開門した内側から形容しがたい厳かで殺意に満ち溢れた威圧がどどっと遊歩道に流れ出でいく。
俺もミカエルも思わず息をのんでしまう。
本能が感じ取ったのだろう悲鳴に似た「お尻いや~ん!」の甲高い声が大合唱すると、極彩色に輝く色とりどりのゲイおにぃが我先に蜘蛛の子をつつくように散らばって逃げていく。
――な、何なんだ
目には見えない圧倒的な威圧、分厚い透明な壁のようだ……恐らく界王星の重力よりも重い雰囲気だ……それは生命としての格の違いを見せつけられているようだ。
緊迫感が心臓のドキドキ感を高まる……これが恋なら熱愛レベルだ♪
絡まった腕越しに伝わってくる微動、隣でミカエルが小刻みに震えている。
瞳の色は決意を秘めているがミカエルの震え……寒さのせいではないようだ、(身ぐるみは俺の方が薄着だから(涙))
全身の汗腺もどっと開いたように脂汗がにじみ出ている。
威圧が湯湯水の如くわき出る場所……俺は目をこらして門の奥……宵闇の先を見つめた。
薄暗い明りの中、薄ピンクの髪に淡雪がかぶさり、グリグリメガネの閻魔ひよりがぽつりと悠然と出迎えていた。
「むー♪お兄様、ゲイおにぃは追い払いました……おかえりなさい……?……」
『おかえりなさい』の言葉にはやんわりとして陽光がさすような暖かさが色濃く滲んでいる……がひより?何故、俺を食いつくように見るの?
とてとてと走ってくるとひよりは待ち焦がれたように俺の胸元に飛び込んできた。
「むー❤お兄様目覚められたのですが!似合っています。新しいプレイですか……ぽっ❤」
鼻息荒く興奮気味のひより……キャラかわっていませんかぁぁぁ。
黒いブラジャーの間に鼻を当てて、クンクンと臭いを堪能している。
少しだけ怪訝な面持ちを浮かべ「他の女の臭いがします」と黒い魔道チックな嫉妬的呟きがもれる。
ひよりの行動に呆然と立ち尽くしてしまうミカエル……何だか稀覯な物でも発見したような。
ぽんっと頭をなぜなぜして「ただいま」と言う俺の言葉を遮るようにひよりの相貌を仰ぎ、柔らかな唇突き出し俺に飛びつきながら重ね合わせてくる……大人なチックなひより♪さすがは後家さん……ああっ、人前ではずかしぃぃぃぃ。
ぽっと頬が朱色を帯びた俺に「ふふふっ♪」とひよりも破顔する。
バシッ!――ぎゃぁぁぁぁぁ。け、蹴らないでぇぇ、お尻は素肌なのです(涙)
ロンギヌスの槍が刺さったような威力のジト目……ミカエル、こわいぃぃぃ。
活火山噴火クラスのプンスカと仏頂面になったミカエル……まぁ、女心と秋の空とも言うし。
手を握って機嫌よく「むー♪」と囁くと『ぐいっ』とひよりに引っ張られる俺。不機嫌なミカエルとともにゆっくりとぼんやりとランプの明かりが灯る屋敷の玄関に歩いて行くのだった。