君だけに聞こえるように
苺兎初の、短編に挑戦です<(`^´)>
この声が、君だけに聞こえるように。
あなたとの出会いは、夏。君は転校してきたよね。私がその時見た姿は、一人ぼっちの子猫みたいだったよ。私は、必死にあなたに話しかけたのを、覚えてる?最初はなかなか心を許してくれなかったけど、時間がたつにつれて、君から話しかけてくれるようになった。私はその瞬間、そこらじゅうがお花畑に見えたよ。それと同時に、私はあなたに恋をした。
一週間後。あなたは私を遊園地に誘ったよね。そして時間なんて忘れて、夜までいたよね。家に帰って、怒られたけど。でも私は怒られたのなんて、全然つらくなかったよ。だって君が私に、好きって言ってくれたんだから。
その日から私たち、さらに仲良くなったよね。よく遊んで、よく泣いて、よくケンカもした。嬉しい毎日だった。
だけど悲劇は突然起きた。あなたの死。原因は、病気。辛くて、何日も泣き続けた。学校にも行かなくなった。
ある日、あなたの父親が訪ねてきたんだよ。そして私はあなたのすべてを聞いた。あなたは元から体が弱くて、すぐに病気になりやすくて、こっちに引っ越してくる前にすでに病気だったこと、あなたが私といて、とても幸せだったこと。私はまた涙があふれてきた。でもこの涙は、悲しくてじゃないんだよ。
君の話を聞いて、どんなに苦労してきたかが、伝わってきて。
そしてあなたのお父さんは、こっちに引っ越してきた理由も、教えてくれた。
「あの子がね、急に引っ越したいって言うから、どうして?って聞いたんだ。そしたらあの子は、こう答えたんだよ。“夢の中にいた女の子が、そこに住んでるんだ。なんでわかったのかわからないけど、どうせ死ぬなら、その子に一度会ってみたいんだ!”って。」
私はその話を聞いて、さらに涙が出てきたよ。
神様、こんな奇跡って、あるんですか?そして、一つお願いがあります。会えるものなら、彼にまた会いたいです。そう思ったら、本当に君に会える気がしたよ。
でも、奇跡は次の瞬間に起きた。一瞬体がふわっと軽くなって、でもすぐに慣れた。気づいたら、夢みたいな場所に来ていた。奥のほうに、人影が見えて、よく目を凝らした。そこにいたのは・・・間違いなく、あなただった。
「希恵!?希恵か?」(希恵とは私の名前)
あぁ。君の声だ。まだ二日しかたってないのに、とても懐かしいよ。
「竜輝君。また会えて、嬉しい。」
「俺もだよ。ここに、どうやってきたんだ。」
「それは、秘密。」
「意地悪!・・・はははっ!」
君はその瞬間、笑い出したよね。私もつられて、笑ったよ。
「ははは!」
君とまた笑いあえて、嬉しい。
「でね、いっぱい話したいことあるけど、たぶん、時間がないから、一つだけ教えるね。」
「ん?」
「私ずっと、君に話しかけてたんだよ。心の中で。だからこれからも、話し続けるよ。だから、よーく耳を澄まして。私も頑張るから。君だけに聞こえるように。」
“君だけに聞こえるように”。この言葉は、君と最後に話した言葉。だから今でもずっと、この言葉は宝物だよ。
おわり
けっこう長くなってしまいました!