表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

祖父は寡黙で有り、雄弁で有った

祖父は寡黙で有り、雄弁で有った! そして、大嘘吐きで有った!



 祖父は、片足を喪った。

子供の頃、如何して無いのかが、不思議だった。


 その事を聞くと、何時も、戦争に行って、撃たれて、切った。とだけ、答えてくれる。

その事だけ言うと、もう聞くなとばかりに黙ってしまう。


 それでも聞くと、飴玉を渡され、自分も口にし、黙ってしまう。

それでお終いという事だった。



 何時も、黙って行動し、自分の事は自分でしていた。主に、自分の楽しみを。

お酒が好きで、好く飲んでいた。

ウィスキーが好きだった。シーバス・リーガルだったと思う。今は、私と父が、偶に愛飲している。

それにワインも。赤玉の大瓶で。


 男は寡黙で、黙って行動するモノ、という感じで、私には格好良く見えた。

父もそういった感じだ。ただ、出張で居ない事が多いが。


 背中で語る。

頑固モノであったらしい。

煙草が体に悪いと分かると、キッパリとやめたそうだ。

父にも止めさせたらしい。

灰皿だけは有ったが。

 私には、優しいが気まぐれな所もある、優しい祖父だった。



 義足なのに、自転車で遠くまで行き来していた。

油絵の画材を満載し、これでもかという様な荷物で、雨でも出かけた事も。


今の私に受け継がれた。

自転車で何処までも行く!家族は呆れたが、海外も行った!

職場にも、自転車通勤。最終的に痛勤な距離にされた!

片道一時間位なら、余裕。それ以上は流石にキツカッタ!



 ここで、大嘘だった事を説明する。

祖父は、薬を数多く飲んでいた。(叔母が薬剤師だった為、管理は行き届いていた。)

それでも、食後、必ず飲む薬が有った。

粉末で、えらく飲みにくそうな、えずい、臭う薬。(今なら解る、有名な胃腸薬だった)

何故、そんな不味そうな(実際、不味かった)薬を飲むのかと、聞いた。


 それに対し、また足が生えてくるという、嘘を吐かれた。

今思えば、優しい嘘だったのだが、それを私は信じきった!

 毎日、お地蔵さまの所で拝んで、祖父の足が生えてきます様に、と祈り続けた。

真相を知ったのは、私が小学校に入った頃だったが、それまで信じ切っていた。

祖父の足が生えるのであれば、自分の障害も、何時かは治ると、信じていたから。


 嘘だとは、微塵も思わなかった。

疑いもしなかった。

私にとって、それは疑い様も無い、真実だったから。

後にも先にも、そんな嘘を吐いたのは、それきりだった気がする。

寡黙で有り、雄弁で有った。

多くを語らず、確実な事だけ、話す事が多かった。

時には冗談の様な事も、した。

それでも、自分という者は、こうだと示してくれて居たと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ