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ゲルニカ①

まるで真っ暗な海に突き落とされたかのような深い空間にて私は溺れていた。

私は死んだのか。

ならば此処は地獄か。

暗い=地獄というのも存外、安直な考え方だと私は少し笑った。


パンの匂いがする。

よく焼けたパンの匂いだ。

私はベッドから目を覚ました。

「あれ?おはよう」

目の前に見たことのない女の子が朝食を運んできた。香ばしく焼かれた食パンに目玉焼き、そして熱々なベーコン。

私はよだれを垂らした。

「私はゲルニカ、あなたの名前は?」

「私はリカ、原谷リカ、あなたゲルニカって。あの白い怪物と同じ名前?」

ゲルニカは少し微笑む。

冷たい、凍りついた笑顔だった。

私とゲルニカは対面したまま、少し年期の入った木製のテーブルにて食事を始めた。

「そうよ、リカ。私は災害の化物ゲルニカよ。大量の人々を喰い散らかした。史上、類を見ないであろう。最低最悪の殺人鬼」

目の前の目玉焼きをほうばる可愛らしい姿とはあまりにもギャップがあり、簡単には信じがたい。

「ここはあなたの家?」

ゲルニカは食パンに苺のジャムを塗りたくる。甘い匂いがする。

「そうね。厳密には兄さんの家かな。家賃とか兄さんが払ってるし」

兄がいるのか。

私は朝食を終えたら、ゲルニカと一緒に皿洗いを始めた。こう見ると普通の女の子である。

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