第5話 鍛錬の1ヶ月
入学試験までの1ヶ月間。僕と花と実は、ほぼ毎日鍛錬を積み重ねた。個人鍛練、稽古、個人鍛練、休憩...となかなかのハードスケジュールだ。
個人鍛練では何をしているのか聞いてみると、花は「最強の剣士になってやるのよ!」と言って能力と剣術を合わせた鍛練をしていた。彼女の能力の「時間停止」はその強力な効果ゆえに発動できる時間が短いという弱点がある。ゆえにその弱点を補うために身体能力を高めているらしい。
実は「てきとーに強くなるよー」と言って自主鍛練しているらしいが、実情は教えてくれなかった。実はところどころ秘密主義なところがあり、誰にも自身の能力を教えていないらしい。そもそも使っているところさえ見さていないのだとか。本当は使えるが、体力を消耗するらしく、面倒くさくて使っていない、と言っていた。
まぁ、心配はいらないと思う。実はやる時はやるタイプ(多分)だし、能力が無くてもある程度実力はあるのだ。僕がそう思う理由、それは令さんとの稽古の時のことだ。
...
令さんの身体能力が高すぎて有効な攻撃が当たらないことは前の稽古の時にも再確認した。その令さんに攻撃をを当てたことがある人がいるのだ。それが件の実だ。
その日は僕と花、実、令さんの4人での稽古だった。
僕と花「やっぱり当たらない〜」
僕たちの攻撃は全て避けられるかいなされてしまっていた。その様子を離れて見ていた実は、
実「お兄さん、ちょっとそのナイフ貸してくれる?」
と言ってきたので貸してあげると、
ビュンッ...!!ガンッッ!!
そんな鈍い音が響き渡ったのだ。音の方向を見てみると同じくナイフを構えた令さんに攻撃を打ち込む実の姿があった。僕と花はその様子に唖然とし、思わず目を見開いた。
令さん「早い、ですね...!この私が武器を使って受けなければならないとは...!!」
実「これ、結構本気出したんだけどなー。受けられちゃうなんて。」
実のあんなに真面目な姿は見たことがなかった。そのまま次の攻撃に移るのか、と、思ったのだか、
実「あー久しぶりに疲れちゃったー」
と言ってそのまま大の字で寝てしまった。いや、自由すぎるな。そんな姿に僕たち2人はまた唖然としたのだった。
...
...と言うことで、花、実と来たら次はこの僕だろう。僕の鍛練はズバリ!瞑想とイメージトレーニングだ!...待って待ってちゃんと説明するから。
僕が能力を使えないのは周知の事実だろう。それはこの世界では死活問題だ。令さんや実も能力を使わないが、僕とは大きな差がある。僕も身体能力は高いほうだが、それでもあの2人には遠く及ばないのだ。故に、僕は花のように能力を使えるようになるのが強くなるための最短ルートだと考えた。そのための瞑想とイメトレだ。噂によると能力はイメージ力が大事なものがあると言われている。どんな能力かわからない今、いろいろなパターンを想像しているのだ。
僕(手から火を出して敵を焼き払う...敵の背後に瞬間移動して静かに仕留める...)「フフフ...」
想像が捗り、思わずにやけてしまった。そんな僕のところに、
花「お兄ちゃん!ご飯だって!行くよ!」
実「お兄さん、ご飯食べに行こう?」
と妹たちに呼ばれたのだった。
続く




