スキル『自動蘇生』しか与えられなかった俺は死を司るという美少女を(死にながら)幸せにする
「え、新しいパーティを探してる? いやぁ、ウチはちょっと……」
なんて。断られるのが常になってきた今日この頃。
他の冒険者たちと組んで大きなクエストを受けたいところだが、誰にも相手にされない。
理由は単純。戦力として貧弱すぎるからだ。
俺が持つスキルは『自動蘇生』のみ。魔法は使えないし、出来る事はせいぜいダンジョンで先頭を歩くことぐらいだ。
(腹が減った。死なないけど)
俺、神代 叶翔は今日も一人で出来る簡単なクエストを探す。なんだかんだやることはある。
さて、何があるかなと掲示板をみると、ドクロのスタンプがたくさんついたクエストを見つける。それだけ死人が出た、ということだ。
内容は……とあるダンジョンの探索、だけ? なにがそんなにヤバイのだろうか。
クエストの紙をもって受付にいく。
「ああ、このクエストは……。あなたでも大変、かもしれません」
俺の自動蘇生は少しは有名だった。なんだかんだ帰ってくるのでそれで覚えられた感じだ。
「行くというなら止めませんが、お気をつけて」
そう言われてさっさと行くことにした。さて、何が待っているやら。
* * *
件のダンジョンに到達した。いたって普通のダンジョンに見えるが……さて。
冷気をもった風が奥から吹いている。広いんだろうか。
なんのためらいもなく進んでいく。どうせ死なないし。
歩くことかな~り。相当深くまで進んできたと思うのだが。——と。
「ウボァー! 落とし穴ー!」
まんまと罠に引っかかる。しかも底に針が仕掛けられている。ゴブリンらの仕業だろう。そして抜けないし。
そこへ気が付いた、やっぱりゴブリンが群れを成してやってくる。
自分の辿る道を悟る。このまま殴り殺されて金品その他ひん剝かれて、死体になったらどっかに捨てられるんだろう。
「いて、いてぇ」
ゴブリンのこん棒で殴られる。即死じゃないのが辛い所だ。打撲が出来て、そのうち骨が折れて、出血をして動けなくなる。そんな感じだろう。
(ああ、意識が――)
意識を失い倒れそうになった。——その時だった。
冷たい、体の芯から凍るような冷気を感じた。
振り返るとそこには白銀の雪の様を思わせる白い少女がいた。
「俺の、ことはいいから――」
どうせ死なないし、という意味で言ったのだが。その少女は持ち前の冷気と圧力でゴブリンたちを洞窟の奥へと退却させた。
「——可哀そうな人」
その少女はこちらを見てそう言った。そう言ったのち、こちらの頬に手を添えると――。
「ちめたい」
「——すぐに終わるから」
そう言って彼女は――。
俺に口づけをした。
* * *
「よし、元気いっぱいです」
「う、うそ……」
口づけをされた後、気持ちよくスーッと意識が無くなった。過去最高の気持ちのいい死に方だった。そして死んだという事を自覚したころには現世に帰ってきていた。
「な、なんで死なないの?」
「俺、そういうスキルがあるんだ。死んでも生き返れるっていう」
ついでにこのスキルについて、分かっている範囲で伝える。……と言っても、本当に蘇るだけなのだが。
「……だからこんな能天気なのね」
「ああ~。自覚はあるけど傷つくわぁ~、心が傷つくわぁ~。心の傷は治らないのに~」
「え、ええと……」
困惑する少女。どんな顔してもかわいいな、こいつ。
色白、というか血の気がないのような白い肌を持ち、小柄で控えめな体つき。美しいシルクのような髪が背中に流れている。服装は幻想的で蝶のような柄をしている。なにか礼装的な効果もあったりするのだろうか。
「で、君は何者なの? なにか特殊な能力を持っているようだけど」
「私は――」
「ていうかキミかわいいね。どこ住み? 今日この後は?」
「……はぁ、調子が狂う」
俺は死なないこともあって多少頭のネジは外れていた。
「どうせ、名乗っても意味がないわ。覚えた所で――」
「相手が死ぬから?」
相手の能力は察しがついていた。口づけをされた時の、全身の血流が止まっていく感じ。多分命を奪うかんじの能力だろう。
「俺が自己紹介するね。俺は叶翔。死んでもすぐに生き返るだけの一般人だよ」
「カナト……。生き返る……?」
「うんうん。だからどんな能力だとしても……」
彼女の両手を握る。
「ダ、ダメッ!」
「う~ん、もはや冷感グッズのような……ぐう」
触れて五秒で死んだ。でも一秒で復活した。
「とまあこんな感じで」
「信じられないわ……、こんなことが……」
言葉は困惑のそれだが、雰囲気は少し柔らかくなった気がする。
「ほら、今度は君の番」
「わ、私は……」
困惑が見えるが、なんとかなりそうだ。きっとそんな能力を持っているからコミュニケーションを取るのが苦手ってだけで。
「フィリーネ、って呼ばれた気がする」
「気がするって。こんなところにいるから?」
「だれも来ないし、覚える人もいない。そんな名前に意味があるとは思えなくて」
うんうんと頷く。俺も似たようなもんだ。誰からも必要とされなくなっていったら、自分の名前すらおぼろげになるものだ。
「そういえばなんでこんなところにいるの?」
「それは……、私がここに封印されているから」
「封印、ねぇ。具体的にはどんな感じなの?」
と聞いて、カクカクシカジカ。
「……つまりその要石てきなモノを壊せばいいんだな?」
「私には壊せないし……私は、外の世界に出ない方がいいだろうから」
「う~ん。それはつまらないな」
「え……」
俺は語った。自分の生まれ、この世界に来ても不遇な扱いを受けた。でも今はこうして運命的な出会いが出来た。
「世界って広いんだ。だから……ここから出てみよう」
そういって、教えてもらった要石に向かう。
「これを破壊すればなんとかなあばばばば」
電気的な防衛魔法に身を焦がされる。これまた即死じゃないのが辛い。
「や、やっぱり無理よ。これ以上は……」
「あ~……。もっかいキスして欲しいな……」
「な、なにを……」
「なんていうか、リーネの口づけは優しく死ねるから。気持ちいいんだよね」
「え、え~……」
そんなこんなでビリビリとちゅっちゅを繰り返すことしばらく……。
——パカラ……。
「わ、割れた……」
「どんなもんよ。これでリーネも自由か?」
リーネはそっと結界の外へ足を出す。……なにも起きない。
「成功?」
「え、ええ! 私が、外に……!」
感動しているようだ。いままでどれだけ閉じ込められたのか分からないが、大きな一歩であることに違いない。
「じゃあリーネ。どこに行きたい?」
「——どこへでも。カナトと一緒なら」
なんかいい雰囲気になったので手を握る。指を絡ませた、恋人つなぎ。
「……ぐぅ」
「カナト!?」
相も変わらず俺は死ぬが……——。
俺は、そんな少女を笑顔にしてやりたいと、そう思った。




