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青春Double Side  作者: 南乃太陽
激闘編
35/37

悪魔の島パラクスモウォート

イダムが呼び出した島型巨大宇宙船パラクスモウォート、そこはジャガックが蠢く悪魔の島だった。

クインテットはたった五人でそこに乗り込み、イダムへ立ち向かうべく敵を倒していく。

そして明らかになるサイとイダムの因縁。

京助ことマグナアウルはどう立ち向かうのか。

物語はクライマックスへ向かって行く!

 これまでの青春Double Side激闘編は。

 大侵攻以降、様々な作戦を展開して真鳥市を手に入れようとしてきたジャガックだが、マグナアウルとクインテットにより悉く失敗に終わっていた。

 そんな中ジャガック最古参幹部にして京助の両親の仇であるイダム・ジャム=ガトローダがついに動き出し、部下を率いてマグナアウルとクインテットに正面切って戦いを挑む。

 憎悪と激情に駆られたマグナアウルが全力を挙げて挑むも完全敗北し、戦闘不能に陥ってしまう。

 サイの介入で一時的に事は収まるも、イダムはクインテットに〝ゲーム〟の開始を宣言し、島を丸々一つ船に改造したパラクスモウォート島へ誘い込む。

 マグナアウルが動けず他の助けもあまり期待できない中、クインテットの五人はパラクスモウォート島へ乗り込んでいく。

 果たして五人に待つのは、強大な敵か、それとも恐ろしい罠か。

 そしてマグナアウルは二度と立ち上がることがは出来ないのか?


 無重力ジェットを切り、五人はついにパラクスモウォートに降り立った。

「ついたね」

「地雷とかは……とりあえずここには無さそう」

「しかしこれ……」

 ルナが周囲に広がる光景を一瞥して呆れたように呟く。

「街だよね、もはや」

 ある惑星にあった島を丸々改造したとだけあって、見渡す限りは完全に空飛ぶ街であった。

「ちょっと見えたんだけどさ、奥の方に海なかった?」

「疑似的な海まであるのか……多分何か潜んでそうだな」

 とりあえず進む分には安全が確保できたため、五人がパラクスモウォートを探索して何か手掛かりを探しに向かおうとしたその時。

「あっ!」

 四機のドローンが飛来し、イドゥンが咄嗟にライフルで撃とうと構えるが、何かを感じ取ったアフロダイがそれを制止した。

「どうして?」

「ちょっと見ててください。これただの攻撃用ドローンじゃありませんよ」

 イドゥンは銃口を下げるもいつでも攻撃できるようにターゲットマークだけはしておき、他四人も武器を取る手に力が籠る。

 ドローンはこちらへ飛んで来て五人の目線の高さでホバリングすると、ホログラムモニターを形成した。

「おお……」

「やっぱりそうですね、ゲームだというのにGM(あるじ)からの説明が一切無いのはおかしいと思ってたんです」

 どうやらドローン達はここパラクスモウォートで行われるゲームの説明の映像を見せに来たらしい。

 しばらくすると、何処かの部屋にいるイダムが映し出された。

『やあ、クインテットのお嬢ちゃん達! よくぞ来てくれた、その勇気は称賛に値する!』

「御託はいい、早くこのふざけたゲームのルールを教えて」

『いいだろう、ルールっつっても簡単だ! この島の中には俺の部下やオートマタとかが滅茶苦茶隠れてる! それを倒してポイントを貯めていく、ただそれだけだ!』

「ポイント溜まると何か貰えんの? 宇宙旅行とか要らねーけど」

『一定値溜まると俺と戦う権利が与えられる!』

「なにそれ」

「全く嬉しくないね」

『たぁ~だぁ~しぃ! このポイントは徐々に減っていく! 減っていって数値を下回ると……』

 あの片頬だけを吊り上げる不気味な笑みを浮かべながら機械製の手の爪を打ち鳴らすと、別の映像が投影される。

「!」

「あっ!」

 パラクスモウォートの船体下部と側面からせり出した砲台がレーザーを放って街を焼き尽くす様子を映し出していた。

『真鳥市がこうなる』

 背筋がヒヤリとしたが、どうやらこれは以前パラクスモウォートを使った時のものらしい。

『こうなりたくないだろ? 安心しろ、減りかけたら知らせるシステムがあるから。まあ頑張って敵倒して俺に挑んで来てくれ! せいぜい楽しませてくれよ! じゃあな!』

 映像が終わると同時にドローンが去って行ったが、イドゥンは正確に四機のドローンを撃ち抜いて憂さ晴らしをする。

「敵を倒して幹部を倒そう! ってか……ふざけんじゃねーよ」

「卑怯ですね、始めから消耗させる気満々ですよ」

「そんな手を使って来るのなら……こっちにも考えがある!」

 そう言ったミューズに皆が注目し、何事かと思っていると白波博士に連絡を取り始めた。

「もしもし、博士?」

『ああ、大丈夫か? 急に予報にも無かった豪雨が降って来て晴れたと思ったら、今度は巨大な島? 宇宙船? が飛来したようだが』

「ええ、雨の方はもう大丈夫です。今私達はその島型宇宙船に居るんです」

『島型宇宙船……ともかくそこに居るんだな、何か協力できることはあるか?』

「人工衛星でこの島全体をスキャンできますか?」

 他四人は何を言っているのか首を傾げたが、イドゥンはミューズの真意に気付いて思わず手を打った。

「そうか! 衛星でスキャンして敵の位置をリアルタイムで割り出すんだ!」

「ああ! 成る程!」

 これには皆も舌を巻き、ミューズはマスクの中で笑って頷く。

「聞きましたね?」

『わかった、AR機能でミニマップを表示しておくから、安心して戦ってくれ』

「ありがとうございます」

『健闘を祈る! 必ず戻ってこい!』

 白波博士の通信が切れた数秒後、ミニマップが表示されて敵の位置だけではなく敵の種類も詳細になっていた。

「おお! こっちにも映ってる!」

「よし、これで戦いやすくなったね。行こう! 持ち点が減っちゃうよ!」

 五人は駆け出し、地図を頼りに無数の敵と罠が潜む広大なパラクスモウォートに足を踏み出すのだった。


 その頃、パラクスモウォートの中心に鎮座する巨大な城塞の中で、イダムは連れてきたザザルからサイによって折られた腕の治療を受けていた。

「お前さんを連れてきて良かったよ」

「私は全く良いとは思わんよ」

「大丈夫だって、お前の命に危険があればすぐ帰れるようにしてあるから。それにこれ終ったら帰っていいって言ってるだろ?」

「多少は戦えはするが、私は頭脳と技術労働担当であって前線に出るタイプではない事を忘れないでほしい……指を動かしてみろ」

 無数の配線と機材に繋がれたイダムの腕の指先が動き、それを確認したザザルは自分の〝体〟の微細な作業用の小型アームを駆使して微調整をした後、配線を外してカバーを取り付けてから普段使い用のアームでイダムの肩を叩いた。

「終わりだ」

「良い腕だ。前より気に入ったかもしれない」

 爪を伸ばしたり、手の甲や手首から出るアサシンブレードを出して一通り楽しんだ後、ワープ装置を潜って帰ろうとするザザルを見送るべくイダムは立ち上がった。

「ああそうだ」

「どうしたザザル」

「マグナアウルは何故お前を執拗に殴った?」

「……なんでそんな事を聞く?」

 ザザルが自分の仕事以外の事に関心を向けるのは全く以て稀なのだ。

「いやあ六か月前にクドゥリがマグナアウルに負けて帰ってから少し気になっていたんだ。奴は自分を復讐の化身と言っている……ではなぜそうなったのか」

 ザザルの本体の魚型の生命体だけがこちらを向く。

「直接的な仇はお前なんじゃないのか?」

 そう言われたイダムは爪で自分の頬を掻きながら何かを思い出すかのように天井を仰ぐ。

「お前がマグナアウルを生み出した、そうなんじゃないか?」

「そ~お……かもな」

「心当たりはないのか? マグナアウルの正体に」

「……」

 しばらくイダムは考え込んでいたが、ふっと吹き出して手を広げて肩を竦めた。

「さーな、この星に来た時俺はそりゃもう地球人を殺しまくった、ジャガックの目的の邪魔になる奴やら歯向かって来た奴やら沢山な。恨みを買ってる奴を集めたら行列が出来るぜ」

「そうか、君からは有益な情報は引き出せなんだか。残念だが仕方あるまい」

「待てザザル。俺の質問にも答えてくれ」

「なんだね?」

「俺が新しい体の感覚を掴むまで引き籠ってた間、そこそこクドゥリを気にかけてたようだな」

「まあそうだな」

「何故クドゥリを気に掛ける? 俺が知るゲブル・ザザルバンなら絶対にそんなことをしなかった筈だ」

「まあ、ゾゴーリ様に忠誠を誓うお前になら言っても良いか」

「はあ」

「クドゥリはジャガックの最後の計画の要なのさ」

「最後の計画の要? どういう事だ?」

 ザザルは〝体〟の録音機能をオフにしてから進行中のある計画をイダムに話し、それを聞いたイダムは最初こそ驚いたものの、すぐに愉快そうな笑みを浮かべて手を叩く。

「流石は俺達のボス! 突っ走らせたら誰にも敵わねぇ!」

「怒らないか」

「なぜ怒るんだ? 手塩にかけた弟子だ、ボスの役に立つならそれで良いってもんだろ」

「そうか、てっきり怒ると思って身構えていたんだがな」

「まあ驚きはしたが怒るような事ではねぇな。フフフフ……俺も見たいもんだぜ、それを」

「まあお前が復帰したことを考えると、最後の計画が発動する事はなさそうだ」

「そうだな、無理に働かせるのも可愛そうだからな。ああそうだ、クドゥリの妹の三人……えーっと、ガディとザリスとジェサムっつったか。あの三人を作ったのもその計画の一環か?」

 そう聞かれたザザルは虚を突かれたかのように目を開き、胸鰭で口元を撫でてから鰭の先でザザルを指差した。

「その案、頂くよ」

「おお、想定外だったみてぇだな」

「やはりここに来て良かったかもしれんな」

「だろぉ? まあいい、早く帰って計画を見直すこった」

「感謝するよイダム。ゲームを楽しんで来るといい」

 ザザルは巨体を揺らしてワープゲートを潜り、それを見送ったイダムはまた椅子に座ってパラクスモウォート島内部の各地に設置された無数の隠しカメラの映像を開くのだった。

「おお、やってるみてぇだな……フフフフ」

 果たしてクインテットは、ザザルの元へ辿り着くことが出来るのか。


 意識が戻るとまたあの混沌とした空間におり、京助は体を起こして周囲を見回す。

「ここは確か俺の心の中……って事は」

 振り返るとやはり居た。

 髪の色の比率が逆転し、赤い目をした自分そっくりな何者かが。

「いよぉ、負け犬」

 京助は眉を顰め、もう一人の京助はニヤリと笑って座っていたドロドロに溶けたガラスのような素材で出来たベンチから腰を上げてこちらに近寄って来た。

「お前何なんだよ」

「分かってるだろ? 俺はお前だ」

 自分そっくりな顔で自分を小馬鹿にするような顔をするこいつが不愉快極まりない。

「だったらお前も負け犬って事になるんじゃないか? お前も俺なんだから」

「ああそうさ、いい迷惑だ。お前のせいで負けちまった」

「やけに他人事だな」

「……まだ気付かないか。俺が何者かを」

 白い髪をかき上げ、もう一人の京助は京助にぐっと顔を近付ける。

「何者かだって? お前さっき俺って言っただろうが」

「まだ気付かないか。こうして大ヒントを与えてるんだがな」

 意味が分からない上に何となく会話がかみ合わない。

 京助が顔を顰めていると、再び意識が薄らいでいった。


「……目覚めたか」

 サイの声とこの天井から鑑みるに、どうやらここはゼバル号の中らしい。

「……お前が助けてくれたのか?」

「ああ、君との友情以外にも、そうするべき理由があったんだ」

「そうするべき理由?」

 サイの顔からいつもの笑みが完全に消え失せているのを見た京助は、何やら只事ではない雰囲気を察知した。

「な……なんだよ」

「君のご両親が死んだのは。ボクのせいかもしれない」

「いや……何言ってるんだよ。どう考えてもイダムのくそったれのせいだろ」

 サイは静かに首を振り、京助に取って衝撃的な事を語り始めた。

「イダム・ジャム=ガトローダは……ボクの友だった男だ」

 これには思わず目を見開き、京助は体を起こして全身に激痛が走る。

『京助、無理なさらずに』

「ああ……ありがとうトト。てかその話……マジなのかよ」

「ああ、本当の話さ。奴と出会ったのは九千年前……その時の奴はジャガックのある幹部の用心棒で、着かず離れずといった関係だった」

 当時のイダムとジャガックの関係は呼ばれれば来るような感じだったらしく、呼ばれていない間のイダムは傭兵業や超能力の鍛錬をしており、サイともそのつながりで知り合ったのだ。

「同じ超能力者で戦うのが好きなボク達は互いに切磋琢磨し合えるいい関係だと……少なくとも当時はそう思っていた」

 だが純粋に〝戦闘〟という行為自体に楽しみを見出したサイに対し、イダムは相手を甚振って打ち負かす事のみを求め始めた辺りから小さなすれ違いが始まり、ジャガックに本格的に入った辺りで頻繁な交流はなくなった。

 そして五百年前のある出来事が切っ掛けで、サイはイダムと縁を切る事を決意する。

「ちょっと待てよ、五百年前って……確か前に言ってたクドゥリの師匠は!」

「ああ、奴の事だ」

 これには開いた口が塞がらない。

 なんという運命の巡り合わせだろうか。

「その出来事って何だ? お前に縁を切られるって相当な事やったんじゃ……」

「奴は黒の力に手を出してその力を我が物にしたんだ」

 黒の力。

 クドゥリを大きく強化させ、自分にも気が付いたら備わっていた謎めいた破壊の力。

「だから目が赤く……あっ」

 この力を使った者は殆ど目が赤く光っている。

 クドゥリもそうだし、パテウと初めて戦った時に怒りに駆られて生身のまま力を使った時そうだった。

 今ようやく気付いたが、もう一人の自分は赤い目をしていたのだ。

「あいつまさか……」

「ん? どうかした?」

「ああいや、なんでもない。それでなんであいつは黒の力を?」

「奴の通り名はボグフズ。日本語だと蹂躙する者って類の意味なんだが、奴は力を誇示して徹底的に痛めつける戦い方を好んだ。だがそれは臆病さの裏返しだった、故に奴は手っ取り早く強くなる方法に縋ったのさ」

「それで……」

「その時のボクはそれはそれは激怒したよ。口論の末に戦い、ボクは奴を下したが仮にも友人だった男だ、だから殺しはしなかった……だが逃した先で奴が君の……済まない」

 サイは京助に頭を下げ、対して京助は何と声を掛ければよいかわからなかった。

 サイのせいでないのは理性で分かっている、だが心のどこかにもっと何とかならなかったのかと思ってしまう自分がいる。

「いいんだ……お前を責めたって……仕方ないだろ」

「本当に済まない」

「いいって……それよりも今は、やつをどうぶっ殺すかを考えるべきだ」

 少し心配そうにこちらを見るサイに、京助は少し苛立ったように聞いた。

「なんだよ」

「難しい話かもしれないが、強い負の感情を抱くのは……止した方がいい」

「はぁ? 何言ってんだよ」

 クドゥリに敗れて顔を見られた時、サイには何故戦っているか語った。

 だったら今自分が抱えている思いは想像できるはずだろう。

「わかる、言いたいことはわかる。だがね、君の体はイダムの黒の力に侵された事で、君自身の黒の力も活性化したんだ」

 あの時イダムの手の拘束が緩んだのは一瞬黒の力を自分が使ったからだったのかと、今更になって納得した事で京助は少しだけ冷静になれた。

「見ていたら分かると思うが、あれは強い感情――特に負の感情と結びついて増幅させる。このままだと呑まれるぞ」

 それでもいいじゃないか。一瞬そう思ったが、マグナアウルを破壊の徒にする訳にはいかないし、何より守るべき人々に累が及ぶ可能性が高い。

「そっか……暴走するわけにはいかないからな、俺がもし暴走したら誰も止められないだろうからな」

 意図して深呼吸を何度も繰り返して落ち着かせるも、やはり怒りを抑えるのは難しい。

「やっぱり無理そうだ……すまない」

「そうか、ちょっと待ってろ」

 サイはゼバル号の奥へ引っ込むと、大量の護符のようなものの束を渡してきた。

「これは?」

「黒の力に当てられた時、これを身に着けておけば身代わりになってくれる。まあ君みたいに体や魂そのものに根付いてる場合はどうなるか分からないけど、気休めにはなるだろう」

「そうか、ありがとう。受け取っておくよ」

 京助は上半身を脱ぐと護符を纏めていた長い組紐を使って体に護符を結び付け、その上から再び服を着る。

「これで準備は整ったな、んでだ。あのくそったれがどこに居るか心当たりはあるか?」

「ああ、あの阿呆は君に説明する前に沈めたのか。全く何がしたいのやら」

 サイは呆れながらパラクスモウォート島について説明し、今クインテットがそこで戦っている事も話した。

「は⁉ ヤバいだろそれ! 俺ってどれくらい寝てた⁉」

「あの子たちが飛んで行ってから四時間かな」

 まさに青天の霹靂、こうして呑気に昼寝している場合ではない。

「行ってくる」

「あっ、待て! 今は……」

「うぐぅっ!」

 立ち上がろうとした所を全身の痛みに抑えつけられ、京助は床に倒れ込んで更なる痛みに苛まれる。

「うぅ……くそ……」

 上手く立てない、僅かな筋肉の動きですら全身に痛みを伝播する刺激となる。

「言っただろ、奴の黒の力が君の体を侵食したと。あれは宇宙の根源に関わる全てを超越した理不尽な力なんだ、そんな力に侵された君の体はもうボロボロなんだ」

 理を超えた力だから問答無用で相手を次元降下させるキングフィッシャーも無効化され、さっきから全身にかけているヒールも意味をなさないのかと、京助の胸の内に少しばかり悲観的な感情が鎌首をもたげる。

 だが京助は諦めなかった、諦める事が出来ないのだ。

「それでも……行くしかないんだよ……前からずっと……いいや既にもう……俺はずっと……傷だらけでも走って来た! だから今日も……今この瞬間も! どうなろうと俺は進んで……行くんだよ」

 常人であれば立つ所か会話すらままならないだろう痛みに苛まれている筈だが、臥薪嘗胆の日々を過ごした京助は足を震わせながらも立ち上がった。

 そうしないと、そうでもしないと、きっともう二度と走り出す事が出来なくなってしまうから。

「大した精神力だ……上手く行くかは分からないけど、力の引き抜きで何とかなるかもしれない」

「そうか、そっちはやった事なかったな……ふっ!」

 京助は自分の全身に向けて精神を集中させ、そこから張り巡らされている経絡を想像し、体からそれを抜き取るイメージで腕を前に少しずつ出していく。

「おっ? おお!」

 指先に黒い炎が一瞬だけ燃え盛り、それをサイが一瞬のうちに紅蛇で切り裂いた。

「やるな、上手く行ったかい?」

 完全に痛みが消えたわけではないものの、かなりマシになっており、激しく動く分には問題ないだろう。

「ああ、これなら飛べそうだ」

「そうか、もう行くかい?」

「当然だ」

 ゼバル号を降りると、森の中からでも真鳥市に物々しく不気味な影を落としながら浮かぶパラクスモウォートを確認することが出来た。

「一目でわかった、あれだな」

「そうだ、あそこにで今、彼女らが戦ってる」

 耳を澄まさずともクインテットが使うビーム兵器の音や、ジャガックのものと思われるミサイルや機銃の音が聞こえてくる。

「行くぞ」

 京助は右腕を突き出してアウルレットを出現させ、手を翳して次元断裂ブレードを展開する。

『次元壁、断裂』

「招……来‼」

 京助の体にマグナアウルの輪郭が重なり、戦いの化身(アバター)へ京助の姿を変えていく。

「ふっ!」

 マグナアウルがマントを広げて飛ぼうとしたところに、サイに呼び止められた。

「最後にこれだけ、何のために戦うのか……絶対に忘れるなよ」

 マグナアウルは深く頷くとパラクスモウォートへ向かって、音速を超えた速度で飛び立って行くのであった。


 クインテットがパラクスモウォートに足を踏み入れて二時間、つまり京助が目覚める二時間前の事。

「居る! あっち!」

 先頭を歩いていたルナが小声で皆に建物の影に隠れるように指示し、全員敵がどこに居るかを確認する。

「隠れてんな」

 二軒先のビルに強化ジャガック兵が少なくとも十人は居る。

「爆弾ある?」

「あるけど、なんで?」

「先手必勝ってやつ」

 イドゥンから小型接着爆弾を三個受け取ると、デメテルはそれを自分のナックルアームに取り付けてからロケットパンチを放った。

「ああ……」

 ナックルアームが再生成されると同時に接着爆弾付きナックルアームが大爆発を起こし、爆発に煽られた強化ジャガック兵が吹き飛んで地面へ転がる。

「なるほどね」

「ナイスデメテル! いよっ!」

 イドゥンは腰のスイッチを押し込んでエネルギーを小型接着爆弾にチャージすると、爆発に煽られて転がった強化ジャガック兵へ投げ込んで追い打ちをかける。

「はっ!」

 ルナもエネルギーをチャージして太刀から斬撃を飛ばし、次々にこちらへ向かおうとしたジャガック兵を撃破する。

「これである程度ポイントも溜まりましたかね」

「思ったんだけどさ、これ敵ってどこから来てるの?」

「うーん、確かに……前戦った場所に行ったらまた居た事もあったよね」

 イドゥンはスコープを倒して透視モードに切り替え、先程爆弾で破壊した建物を覗く。

「ははーん、ビンゴだ」

「何か見つかりました?」

「やっぱ思った通り地下がある。いいモンがあったよ」

「いいものって?」

「ついて来て」

 五人はまだ粉塵が舞う建物の中に入っていき、ミューズのハルバードの回転刃で床に四角形の穴を開けて下へ(くだ)る。

「あ……」

「ああ、なるほど」

「言ったっしょ? いいモンって」

「たしかにこれは」

 五人の前にあったのは、最新型と思われる中型歩行戦車(ウォーカー)であった。

「いいものだね」

「みんな乗ろう!」

「今回も操縦はウチにお任せ~」

 イドゥンはウォーカーのコックピットに入ると無線侵入装置を繋げて操作系統をジャックし、AR機能で操作できるように設定を書き換えた。

「よぉし! 動くよ! 皆乗って!」

 全員が後ろに乗り込んでハッチが閉じられたのを確認し、イドゥンはウォーカーを操作して天井を壊しながら飛び上がって再び地上に向かう。

「出発進行! 味方側の兵器に撃たれる恐怖を味わうがいい!」


 それから数十分後、退屈紛れと体力温存の為に仮眠を取っていたイダムが目覚め、なんとなく監視用モニターを見ると、驚くべき光景が広がっていた。

「あいつらなにやってんだ⁉」

 クインテットが自分たちのウォーカーを使って敵を撃破している。

「ほほぉ、こりゃ面白い」

 ジャガック側が兵力補強のために置いたウォーカーをジャックして使うとは予想外だったが、逆にイダムの心は燃えていた。

「なるほど、これまでの戦いに生き残って来ただけはあるな」

 正直なところ、自分がチューニングした一般兵士に苦戦していた様子からあまり大した強さではなく、自分の元へ来ることすら叶わずどこかのタイミングで殺されるだろうと考えていた。

 だが敵兵器を利用するというこの強かな状況適応力を見て、彼女らもまた長年ジャガックを妨害する者なのだとイダムは認識を改めざるを得なかった。

「そろそろポイントも溜まって来たことだし……」

「うおおおおおおお!」

 どこからか馴染んだ大声が聞こえ、イダムはニヤリと笑って部屋を出る。

「おうおうどうした武器男、イライラしてるのか?」

「フーッ!」

 向かった先の別の部屋には、少々荒れた様子のパテウがいた。

「おいイダムよ! 俺様はいつになったら出れるんだ!」

「すまんすまん、寝てたもんでな」

「寝てただと⁉」

 呑気なイダムに地団駄を踏み、荒れているパテウを見てイダムは片頬を吊り上げて笑う。

「ふざけるなよ! もしぐーずか寝てる間に襲撃でもされたらどうするんだ⁉」

「落ち着け落ち着け、こうして起きたから大丈夫だ」

 イダムの余裕に当てられてか幾分かパテウも落ち着き、語気も少々穏やかになる。

「やけに余裕だな!」

「余裕そうか? まあ余裕かもしれんな」

「だとすれば認識を改めろ! 奴らはこの俺の装甲すら破るぞ!」

「へぇ。まあ確かに、これまで生き残って来たのには理由があるはずだからな」

「油断すると痛い目に遭うぞ!」

「そう言うお前は油断した事があったのか?」

「そうだ忘れもしない! マグナアウルにばかり気を取られていた俺達は大侵攻の際に痛い目を見た!」

「ふんふん……確かあの日を境にスーツが強化されたんだっけか」

 今更ながらクインテットを甚振るのが楽しみになってきた。

「クインテットに復讐したいか?」

「ああ! クインテットを焼き尽くした次はマグナアウル! その後にジェノサイドカプリースだ!」

「それはダメだ。奴は俺がやる……まあお前じゃ奴には敵わないが」

「なにぃ⁉」

 パテウがイダムを睨みつけ、イダムは手を振ってからパテウの後ろを指差す。

「だったら俺に見せてみな、お前がどれほど強くなったかを」

 パテウは素早く背後とイダムを振り返り、顔を綻ばせてイダムへ近寄った。

「行って良いのか!」

「ああ、行ってこい」

「うほほほほう! 良いのか! 良いのか! 待ってたぞ! ハハーッ!」

 巨体を揺らしてパテウを見ながら、イダムは腕を組んで笑う。

「良いんだな! 行って良いんだな!」

「ああ、援軍は送るから暴れて来い!」

「ダァーッハッハッハッハッハ!」

 あの大笑いを一つ響かせてパテウはエレベーターに乗り込んだ。

「行って来るぞ!」

 イダムが手は振ってパテウを送り出し、自分の部屋に戻ってから邪悪な笑みを浮かべる。

「まあ……勝てんだろうな」

 パテウではクインテットには勝てない。確かにパテウは圧倒的な火力を誇るがただそれだけだ、クインテットの連携力と臨機応変な適応力の前には通用しない。

「勝敗は決まってるだろうが、どう戦うのかは気になるからな。見させてもらうぜ」


 パラクスモウォート内でクインテットを乗せたウォーカーは爆走し、次々とジャガック兵を倒しながら進んでいた。

「十時の方向! オートマタ!」

 自律殲滅オートマタがこちらに向かって迫り、まず主砲を放って牽制してからデメテルがロケットパンチを放って吹き飛ばし、高火力ビームで薙ぎ払う。

「誰か運転代われる?」

「私がやるよ」

 ルナがイドゥンと操縦を代わり、アフロダイと共にハッチを開けてウォーカー出てきた。

「さてと、行くよアフロダイ!」

「ええ! 一機残らず撃ち壊します!」

 イドゥンは早速肩にミサイルキャリアを展開して連射し、そこへ転送したミサイルマシンガンで弾幕を張る。

「すぅ……はっ!」

 アフロダイは三日月状の鏃を形成して弓を引き絞り、鏃を肥大化して放って複数のオートマタを切り裂き、そこへイドゥンがミサイルマシンガンで畳み掛ける。

「多いねぇこいつら」

「じゃあ一発撃っとくか! そらっ!」

 主砲が再び炸裂し、宙に舞ったオートマタへアフロダイが無数の矢を浴びせてまとめて粉砕する。

「粗方片付けたね」

「いいや、第二波が来るよ!」

 今度は中型ウォーカーとパワードアーマーの集団が出現し、それを確認したミューズはハッチを開けて外部へ出ると、ルナが放った主砲と同時にハルバードの回転刃を飛ばして牽制する。

「この量だと直接戦ったが早いんじゃない?」

「確かにそんな気がしますね」

「わかった、ウチに操縦戻して」

「了解、行くよデメテル!」

 ルナとデメテルもハッチを開けて外に出て、ミューズと共に三人で敵へ向かって行く。

「よし、遠隔操縦モードにしてと……よっしゃ」

 イドゥンはウォーカーの上に立ったまま遠隔で操縦を続け、アフロダイの弓と共にロングライフルで全線で戦う三人を援護する。

「はっ! てあっ!」

 ルナが撃ち込んだ凍結弾で凍った敵をデメテルが殴って粉砕し、デメテルの高火力ビームをハルバードで受けたミューズが回転切りで周囲の敵を薙ぎ払う。

「バーストとチャージ縛りってのもなかなかキツイな!」

 今後のイダムとの戦闘を見据えた時に、エネルギーは温存しておきたい。

 いくらスーツがバージョンVになって使用できるエネルギーが大幅に増えたとはいえ、この圧倒的アウェイの戦場で万が一にでもエネルギー切れになる訳にはいかないのだ。

「何が何でも持たせるしかありません!」

「そうね! 何が……何でも!」

 アフロダイの矢のエネルギーをミューズが受け取り、思い切り地面へハルバードを叩きつけて舗装された道路を破壊し、その余波で周囲の敵を一掃してしまった。

「ふっ……これで終わりかな」

「うん、みんな乗って! もっと敵を探しに行くよ」

 ポイントが溜まればイダムと戦えるとのことだったが、どの程度溜まっているかは分からない為、とにかく手当たり次第に敵を倒していくしかない。

 再びウォーカーに乗り込んでしばらくすると、突如ミニマップに反応があったと同時に、イドゥンが突然アクセルを全開にしてウォーカーを跳躍させた。

「うわっ!?」

「ぐはっ!」

 後方に乗っていた四人は前方と真上に掛かったGによってバランスを崩し、揺れる車体の中で揉みくちゃにされる。

「ちょっと!」

「いきなり何⁉ どうしたの!」

「なんかすっごい嫌な予感がした!」

 ジェットの噴射を利用して急降下して地面に着地し、急カーブしてマップの反応があったモノを正面に捉える。

「ああん? なんか今この状況で一番(いっちばん)会いたくない奴のシルエットが見えたぞぉ……」

 ゆっくりとハッチを開けて外を見たミューズの目に映ったのは、確かにイドゥンが言う通り今一番会いたくない奴の姿だった。

「ダァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ‼」

 今一番会いたくない奴が今一番聞きたくない笑い声を響かせたのを聞いた五人は心底うんざりした気分になる。

「久しぶりだなクインテットォ! 再び会う時を楽しみにしていたぞぉ!」

「こっちは会いたくなかったよ……特にあんたとは」

 これまで何度もパテウと戦ってきてその度に撃退して追い返してきたが、バーストモードを使ったりマグナアウルや突然現れた飛翔戦士達と協力しての戦闘であり、今この状況で戦うとなるとかなり厳しい戦いになるだろう。

「最後に貴様らと戦った遊園地! あの時は飛翔戦士とかいう邪魔が入ったが今回はそうも行かん! それにマグナアウルも今はここには居ない! さあ貴様らと俺の勝負だ!」

 イドゥン以外の四人がウォーカーを降り、イドゥンは少し遠くにウォーカーを置いてレールガンを装備して合流する。

「さてと! 揃った所で始めようか!」

「ええ、あんたも倒してポイントに変えてやる!」

「ハァァァァアアアッ!」

 無数のミサイルをパテウが放ち、全員広く展開してそれを回避し、イドゥンのレールガンとアフロダイの光の矢がパテウに突き刺さる。

「ごはっ! ふんっ!」

 抉れた体表を即座に回復させ、パテウはハルバードを振り下ろすミューズに蹴りを入れる。

「うぐっ! ううっ!」

 吹き飛ばされたミューズがそのまま回転刃を飛ばし、パテウはそれを機銃で相殺し、後ろから斬りかかって来たルナの刃を腕で防いだ。

「これって!」

「フーッフッフッフ! ダァーッハッハッハッハッハ! 見よ! これが俺の新しい力!」

 パテウはルナを押し返し、エネルギーブレードに変形した腕を振り回して天へ向かって突き付ける。

「ショックエッジだ!」

「近距離に対応して来た!」

 パテウは高火力なミサイルやビームを無限に飛ばす戦法を得意とするが、それ故に懐に潜り込まれると極端に弱くなる、だが今やその弱点も克服されてしまった。

「バカでも対策は考えられるようになったみたいね」

「なにィ~⁉」

「フン、近距離武器を得た位で我々に勝てるとは思わない事です! あまり地球人を舐めるな!」

「生意気を~! 貴様らにこいつの恐ろしさを見せてやる! 喰らえィ‼」

 パテウはショックエッジを思い切り地面に叩きつけ、それにより周囲一帯の地面へ凄まじい衝撃波が迸った。

「うわああっ!」

「ぐわっ!」

「あああっ!」

 クインテットを吹き飛ばして地面に蜘蛛の巣状のヒビを入れる留まらず、割れた地面の破片が捲り上がって吹き飛んだ五人の体を打ち据える。

「いたぁ……」

「ってぇな」

「ダァーッハッハッハッハッハ! まだまだ続くぞ! そぉれっ!」

 両腕をショックエッジに変形させて鋒を向けるとビームが発射され、めくれ上がった地面の欠片ごとクインテットを吹き飛ばす。

「うわっ!」

「こんの……調子乗んなァ!」

「今だあああああっ!」

 イドゥンが視界不良と無数の障害物の最中でパテウの左腕のショックエッジの根元を狙い撃ち、ミューズも咄嗟にグリップから生成した拳銃から拘束弾を発射して右腕のショックエッジを包み込む。

「んあ⁉ がああああっ!」

 ビームを撃ちまくっていた時に左腕のショックエッジを破壊された事でエネルギー暴走を起こし、更に右腕の方もエネルギー放出を塞がれたことで風船のように膨らんでから爆発し、パテウは胸から上を吹き飛ばされてしまう。

「やっぱバカで助かった……みんな大丈夫?」

「ええ……なんとか!」

「ううううっ! ハァ!」

 超回復能力ですぐに回復したパテウは、またもやしてやられたことに地団駄を踏んで悔しがった。

「この俺様をコケにしやがって! もう本当に許さん! ダァッ!」

 体から無数のミサイルキャリアや機銃、ビーム砲を生やしたパテウはだが、更に体を震わせると下半身がより強固なものに変形し、更に多数の兵器が登場した。

「とうとう本気を出したみたい」

「いよいよロボットだね」

「俺は一番……ロボットと言われるのが……ムカつくんだァァァァァアアアアアアッ!」

 無数のミサイルやビーム砲が舞い、第二ラウンドが始まるのであった。


 その頃パラクスモウォートの近くに、一つの黒い影が音速を超える速度で迫っていた。

「奴らやってんな」

『どう侵入しますか?』

「決まってる……いつも通り壁をぶち破る!」

 マグナアウルはマントを体に巻き付けると超高速で旋回しながらパラクスモウォートの外壁へ迫り、小惑星を軽々破壊することが出来るビーム兵器をも弾く装甲を突き破って中へ侵入する。

 マントを広げて周囲を確認すると、地上に上がっていないのにも関わらず一面に街や電車が走っており、どうやら地下街に来たらしい。

「ゲームか……お前の衒いにあえて乗ってやる! 来やがれ! 死にたい奴から掛かって来い!」

 マグナアウルの宣言と共に無数のジャガック兵や自律殲滅オートマタに大中小様々な大きさのウォーカー、そして自分より四周りは大きな巨大ロボットが一気に転送されてきた。

『よう! 生きてるとは大した奴だ』

 巨大ロボットから投影されたホログラムのイダムがこちらに向かって笑顔で手を振る。

「ああ、お前を殺すまでは俺は死なん」

『まあいい、ルールの説明を……』

「殺せば殺すほど、壊せば壊すほどポイントが溜まり、お前と戦う権利が得られる。だろ? さっさと終わらせたいんだ、始めさせろ臆病者」

 臆病者と言われたイダムの頬が一瞬引き攣ったが、すぐにいつもの調子に戻った。

『そうか、では始めようか。幸運を祈る』

 ホログラムが消えたと同時に転送されてきたジャガックの戦力達は武器を振り上げて一斉にこちらへ向かって走り出し、マグナアウルもマフラーを靡かせて走り出して迎え撃つ。

「うおおおおっ! しゃあっ!」

 開始早々の打点の高い飛び蹴りが炸裂して直撃した中型ウォーカーはもちろん周囲のオートマタも吹き飛んで大爆発を起こした。

「ハッ! タアアアアッ!」

 両腕を広げて高純度のサイコエネルギーを発生させ、腕を重ねてそれらをスパークさせてソリッドレイに変換し、三百六十度全方位を薙ぎ払う。

 これにより殆どの戦力は爆散したが、フォースフィールドを備えていた大型ウォーカーや巨大ロボットはそれに耐えていた。

スワロォォオオオッ()! |レイヴゥゥゥウウウンッ《サブマシンガン》! |ブラックスワァァァァアアアアアン《ショットガン》!」

 剣と合体銃を手にしたマグナアウルは大型ウォーカーから放たれた実体砲弾を踏み台にして銃を乱射しフォースフィールドが弱まった所に半物質化した鋒を突き刺し大型ウォーカーを一機まるごと切り裂いてしまった。

「ふっ! RURURURU……」

 着地したマグナアウルは(ヘルム)(クラッシャー)を展開し、口へとサイコエネルギーを収束させる。

「RUUUOOOOOOOVAAAAAAA‼」

 マグナアウルの口から凄まじい咆哮が響き渡り、特殊超音波によってウォーカーや巨大ロボットのフォースフィールドが一瞬で崩壊し、その隙をマグナアウルは見逃さなかった。

「飛燕黒翼……大乱舞!」

 剣を黒翼乱舞で押し出し、強烈な推進を得たマグナアウルの剣は大型ウォーカーを次々と切り裂き、ついに残るは巨大ロボットのみとなる。

「うおっ!」

 自分一人となった事で焦ったのか、ロボットは巨体を利用した踏みつけ攻撃を仕掛けてきた。

「図体だけで俺に勝とうって? 随分と舐めた真似してくれるな!」

 青い火炎弾を投げつけて牽制してからマグナアウルは跳躍する。

「よっ! せあっ!」

 そのまま飛行形態になり、マグナアウルは半物質弾の雨を巨大ロボットに浴びせにかかる。

 無数の半物質弾を喰らって巨大ロボットはのけ反るも、すぐに腕からビームを放って避けたマグナアウルを撃ち落とそうと腕を振り下ろすが、マグナアウルは複雑怪奇な軌跡を描いて回避し、その勢いのままフックチェーンを巨大ロボットの体に引っ掛けて巻き付ける。

「だああああっ!」

 全速前進でマグナアウルは巨大ロボットを引っ張り、転倒したロボットを引きずり回す。

「最後だ! 全弾発射ァ!」

 大中小ミサイルと無数の半物質弾が巨大ロボットへ降り注ぎ、爆散したロボットを背にマグナアウルは着地した。

「こんなもんかよ、準備運動にもなりゃしない」

 そう吐き捨ててマグナアウルは次の敵を追い求めて進むのであった。


 クインテットが全力を出したパテウの一斉射撃に苦戦していると、突然パラクスモウォート全体が大きく揺れ、一瞬だけパテウの砲撃が止む。

「しゃっ!」

 アフロダイはその隙を見逃さず、ナギナタのブレードを合体させた弓で強化された光の鏃を形成し、特に猛威を振るっていた巨大光弾砲に向けて矢を放った。

「があああっ!」

 エネルギーが収束していた所に光矢が炸裂し、ミサイルへ連鎖爆発を起こしてダウンした所に、ミューズとデメテルが畳み掛ける。

「うおおおおおりゃあああああっ!」

 ミューズのハルバードがパテウの巨体を両断する深く大きな傷をつけ、そこへデメテルがドリルユニットを装着したアームを押し付ける。

「ドリルロケットパァァァアアアアンチッ‼」

 押し付けたドリルナックルアームはジェットと高火力ビームの推進力を得て両断されかけたパテウの体を完全に引き千切り、更にルナが千切れて宙に舞ったパテウの半身に冷凍弾を撃ち込む。

「刻み……つけるッ!」

 ルナが旋回しながら太刀と逆手に持ったブレードが何度もパテウを斬りつけてズタズタにし、とうとう下半身と頭を残して細切れにされてしまった。

「ぐううっ……あがあっ!」

 残った頭が地面を転がり、必死に体を再生させようとしていると、突如ワープゲートが出現した。

「え?」

「嘘でしょ……」

 なんとワープゲートから出てきたのはイダムであり、ゆっくり歩きながらこの状況を確認すると五人へ拍手を贈る。

「何の拍手?」

「おめでとう、君達()()は俺と戦う権利を得た」

「六人?」

「まさかさっきの揺れって!」

「ああ、今地下で大暴れしてる奴に感謝しな。あいつが一瞬のうちに大量のポイントを獲得してくれた」

「良かった……彼は無事だった」

「ああ、ホントにそう」

 クインテットの五人全員の心の片隅にあったマグナアウルの安否はこれで解消された。

 だがこれから更なる問題が待っている、マグナアウルすら無傷で圧倒して見せたこの怪物(イダム)をどうやって五人で倒すのか。

「まあいい、本気のこいつ相手に生き延びて逆に倒してしまったお前達の実力は確かなようだし、少しは楽しめると思う……」

「おいイダム! 待て!」

 頭だけのパテウにイダムは心底冷めた目線を送る。

「まだ決着はついてない! 俺はまだ……」

 パテウの頭を念力で引き寄せると、イダムは片頬を吊り上げて牙を見せて静かに言った。

「邪魔だ、大人しくしてろ」

 イダムが爪同士を弾いて音を出すとワープゲートが展開され、そこへイダムの頭を投げ込み、残った下半身も地面から出現した手の実像に押し出されてワープゲートに吸い込まれてしまった。

「……さて、邪魔者も消えた事だし最後の意思確認だ。俺とやるか?」

 この怪物に勝つことが出来るのか、そんな一抹の不安こそあれど、五人の心は互いに確認せずともすでに決まっていた。

「ええ、やるに決まってるでしょ」

「あんたを倒して、ついでにこのふざけた島もぶっ飛ばす!」

 大切な人を守る為、この世界を守る為、あるいは友と共に進む為に彼女らは戦っているのだ。

 戦いから逃げるという選択肢は最初から存在しない。

「そう来なくちゃな……」

 イダムは片頬を吊り上げながら心底楽しそうに笑い、構えを取る。

「さあ来い! 地球の守護女神たちよ!」

 ミューズとルナが同時に突っ込み、イドゥンとアフロダイが後方支援でイダムへ狙いを定めた途端、下からせり上がって来た手が二人を押し上げて建物に叩きつけた。

「うわああっ⁉」

「クソッ……」

「イドゥン! アフロダイ!」

「俺相手に余所見とは……」

 寸での所で避けたものの、イダムの拳から射出された拳の実像は後ろの建物を粉砕し、その威力に気を取られている隙を見逃さず蹴りを繰り出してルナを吹き飛ばす。

「このっ! えええっ!」

 イダムはハルバードの回転刃を手で受け止めて弾き飛ばし、更に腹部へ掌底突きを叩きつけてミューズを吹き飛ばしてしまう。

「どうした終わりか? おっとっと!」

 背後から殴り掛かって来たデメテルの一撃を避け、イダムは蹴りを繰り出すもデメテルは電磁シールドでそれを受けて足を取られてひっくり返されてしまう。

「すぅ……」

 直伝の構えを取るデメテルを見て、イダムは着地して低くなった姿勢のまま笑いながら構えを取る。

「サイバスか……面白れぇ!」

 イダムの低空跳躍を跳躍したデメテルはハンマーユニットを転送してロケットパンチを放ち、イダムはそれを手の実像で防御し、更に放たれる高火力ビームも同じく実像を形成して防御する。

「ハハハハ……はぁっ!」

「くっ! うぐはっ⁉」

 イダムはデメテルの真下から足の実像を発生させ、デメテルはこれを避けるも今度は真横から拳の実像が飛んで来て、それに殴られたデメテルは地面へ叩きつけられる。

「えあああああっ!」

 穴の開いた建物から巨大な三日月型の鏃が飛来してイダムへ向かうも、イダムはそれを腕で弾き、間髪入れず跳躍して斬りかかって来たアフロダイのナギナタの刃を防御する。

「面白い武器だな」

 そう言われた途端ナギナタを分割してもう一方の刃で斬りかかるアフロダイだがこれも難なく防がれてしまい、その上直蹴りを受けてまた建物の方へ叩きつけられる。

「ああ、そうだ」

 イダムが穴の開いた建物へ手を向けると、光弾が屋上を突き破ってあらぬ方向へ飛んでいったと同時にイドゥンが建物から引きずり出されて地面へ転がり落ちてきた。

「おいおい、こんなもんかぁ? アクビが出るぜ」

 やはり強い、ミューズはハルバードを杖代わりにして立ち上がろうとするも、腹への打撃がかなり響いているようだ。

「まだまだこれからに……決まってるでしょ……そっちこそ気を抜かないでよね」

 再び立ち上がるミューズに鼓舞されたのか、他の四人も立ち上がるべく力を入れる。

「へへぇ、まだまだ楽しめるってか面白れぇ……いいぜ、いつでもどっからでもかかって来な。叩きのめしてやるぜ!」

 クインテットを同時に相手取り、そして瞬時に返り討ちにして見せたイダム。

 果たして五人に勝機はあるのか。


 その頃地下では、マグナアウルが次から次へと襲い来る敵を次々と返り討ちにしていた。

「奴はどこに居る! イダムを出せ!」

 道行く敵にそう言うも、誰も何も答えず苛立ちが募り、武器を握る手に殺意と力が籠っていく。

『京助、感情が昂っていますよ、冷静に』

「冷静にって! ……すまない、少し落ち着こう」

 曲がり角に居る敵を半物質弾で撃ち抜き、頭を冷やすために少し立ち止る。

「とりあえず地上に上がるか……いや、念のため索敵しておこう」

 マグナアウルは手首を打ち鳴らして超高音の音波を発生させ、反響を確かめた。

「ん?」

 今まで一切気付かなかったが、真上に何かが居る。

「真上に何か……」

『京助ッ!』

「がはっ⁉」

 胸に走った強烈な激痛を感じると同時にマグナアウルは前のめりに倒れた。

『京助! しっかり!』

 だが完全に倒れ切ることは無く地面から五十センチほど浮いており、それにより今自分に何が起こっているかようやく把握することが出来た。

(槍で……刺された⁉)

 二股の槍が自分の背を貫き、その穂先が自分の胸から突き出ていたのである。

「一歩遅かったな、クククク……」

「お前ッ……」

 この声は以前清桜の小学校を襲撃を主導した幹部であるルゲンの声だった。

「散々お前には手を焼かされた。だがもう終わりだ」

「ふざけた事言ってんじゃ……うぐはっ⁉」

 痛みが更に倍増した。どうやら槍の中の〝かえし〟が展開されたらしい。

「流石のお前でも苦しいだろうな、そらっ!」

 槍から電撃を流されてマグナアウルは四肢を痙攣させ、(ヘルム)の隙間や刺されて広がった傷跡から血が噴き出る。

「くっ……がっ……」

「さてと、お遊びはこれぐらいにしてこれまでの返礼をしなければな」

 ルゲンはそう言うと懐から薬液が入ったカプセルを取り出し、槍に装填してスイッチを入れ、マグナアウルは何か異物が入ってくる不快感を味わい、微かに動く指を意地でも動かそうとする。

「何を……しやがった!」

「私のとっておきをくれてやったのさ、お前の為に特別に調合した……猛毒をな」

「なんだって……ああっ……クソが……」

 なんだか手足が痺れてきて、それと同時に槍を指された場所を中心に全身に激痛が行き渡る。

「この毒はお前達地球人類で言う海馬と偏桃体と前頭葉に作用する。不快感と怒りと痛み、そしてそこから想起される人生全ての記憶に苛まれながら……死ぬがいい!」

 かえしを展開したままルゲンは槍を引き抜き、苦しむマグナアウルを満足げに一瞥しながらこびりついた肉片を槍を振って落とすと、そのまま背中のパワードアームを展開してどこかへ去って行ってしまった。

『京助! しっかりしてください! 京助!』

 脳に直接響くはずのトトの声も、遠くの方へ向かって消えて行く。

(俺は……こんな所で……終わり……なのかよ?)

 マグナアウルの装甲は徐々に色褪せたセピア色に変わっていき、ついに京助(マグナアウル)は意識を完全に手放してしまった。


 かつてない強敵に挑むクインテット、そして死に直面したマグナアウル。

 果たして真鳥市の運命はどうなるのか。


To Be Continued.

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございますと言ったのにも関わらず、こんな陰鬱で衝撃的な終わり方でいいのかよと突っ込みたくなる気持ちはわかります。

果たして京助はこのまま死んでしまうのでしょうか?

それとも何か活路があるのかな?

次回、激闘編最終回です。

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ではまた来週お会いしましょう。

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