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青春Double Side  作者: 南乃太陽
夏休み編
15/38

洞穴の怪人

奏音に呼び出された京助は学校誌のオカルト特集を作るために樹に協力を要請される。

奏音のおねだりに絆された京助は樹と後輩達に協力して、とある心霊スポットに向かう事に。

だがそこにはジャガックの基地があり、更に新しい幹部であるパテウ・シャローが潜んでいた!

京助と奏音はお互いに正体を明かさず、なおかつ友人と後輩を助け出すことが出来るのか⁉


 サイとの二度目の戦いが終わった翌日、白波博士をはじめとしたクインテットのバックアップ担当班はスーツの記録の確認や事後処理班からの報告等を受けていた。

「ついに連中の実態が明らかになったか……」

「それにしてもジャガックが犯罪組織とは」

「予想していた中で最悪ですね」

「交渉するわけにもいかないからな。まあそういうののやり方はある程度予測できるがね」

「しかし目的が分からない以上まだまだ油断はできませんね」

 これまで財団は様々な存在と戦って来たが、宇宙人の犯罪シンジケートがわざわざ発展途上の星のそれも一つの街を狙い撃ちにする意図は全く分からない。

「なぜ地球なんだ、なぜ真鳥市なんだ」

 いくら頭を捻ろうが、自分たちで納得いく答えは出せないでいる。

「次の戦いであのサイと名乗る傭兵が情報を出すのを待つしかないという訳でしょうか?」

「結局我々は後手に回るんですね……あの子たちに面目が無い」

「そんな発言はいただけないな、我々は出来る事を十全の力でやるしかない」

「そうですね、失礼しました」

 その時背後の扉が開き、事後処理班の班長が二名の班員を連れてやって来た。

「失礼します博士」

「ああ班長、どうかしましたか?」

「一昨日の報告は覚えていらっしゃいますか?」

「一昨日ですか……」

 タブレットを操作して一昨日の報告書に目を通す。

「ええ、一応目は通しましたが。何かあったのですか?」

「我々処理班が拾得した項目にその他とありますね」

「ええ、そうですな。たしかにその他と振り分けられているものが一つだけ」

「その事についてです。机をお借りしても?」

 白波博士の部下が道を開け、班長は持っていたジュラルミンケースを机の上に置くと指紋認証でキーを突破し、ケースを開けて中のものを取り出す。

「財団内部の研究機関に簡易的な検査を通し、ほぼ無害であることが証明されました」

 特殊ガラス製の円筒状のケースの中身を見て、一同は目を見開いた。

「これを……これを回収したんですか⁉」

「確かにあんなことになってはいたけど……回収していたとは」

 〝それ〟に対する反応は、思わず後ずさる者、唖然として動けない者、むしろ近寄ろうとする者と様々であった。

「内部の研究機関での簡易検査中に面白い結果が出まして、これが秘めているエネルギーはC-SUITのエネルギーと似ていることが分かったのです」

「……それは本当ですか」

「ええ、よって我々はあなた達に渡した方が最も有効的に活用してくださると思い、これを持ち込みました」

 白波博士は自然と緊張した面持ちになっていく。

「マグナアウルの腕、どうか有効に使ってくださいね」

 ひんやりとした特殊ガラスの円筒ケースに触れ、白波博士は焦茶と藍の装甲を持つ切断された腕を眺めるのであった。


 その同時期、かつてのその腕の持ち主は、新しく生えた腕で頭を押さえていた。

「えーっとさぁ……いくつか質問してよろしいか」

「うん、いいよ」

 夏休みの慧習館高校の部屋の一室、奏音に呼び出されたかと思えば京助はなぜかここに連れて来られたのである。

「一つ目、なんで俺がここにいるのか。二つ目、イインチョ以外のこの子たちは誰なのか」

 奏音の瞳がクラスメートの学級委員である樹の方を向き、樹が申し訳なさそうに切り出した。

「ごめんね千道君、どうしても千道君の力が必要なの」

『これ夢か?』

『あなたは覚醒しています』

 能力のことがバレたのかと思ったが、そうではないらしい。

「私達さ、学校誌作るの頼まれたんだよね」

「そうなんだ。学校誌ってあのピロティの掲示板に貼り出されて、ちっちゃくなったのが配られるやつ?」

「そうそう。それでね、せっかく夏休みだから豪華版を作ろうってなったんだよ」

「うんうん」

「四つの班に分かれてそれぞれ特集を組もうって事になってね、私達の班はホラーをテーマにした特集を組むことにしたんだ」

 京助はここでようやく自分の役割を理解した。

「それで俺にお鉢が回って来たって事ね」

「そう! お願い協力して!」

「お願いします千道先輩!」

「あ、君たち後輩だったのね」

「ホラーキング先輩お願いします!」

「ちょまてコラ、それはイジってるだろ」

「スティーブン・キング先輩お願いします!」

「誰がホラーの帝王だ。てかだいたいなんで俺なんだよ、ユメリンゴで良かったじゃねぇか」

 樹が「それが……」と言いながら、SNSのダイレクトメッセージが表示されたスマホを差し出してきた。

「えっと……『うーん、誘ってくれてありがとさん。でもウチより適任が居ると思うよ、そいつなら喜んで協力すると思うから。推薦状書いとくね』ってあいつ俺に押し付けやがったな、てか推薦状届いてないんだが」

「実はその推薦状が私に来たんだよね。だから連れて来たの」

「いや本当に意味が分からない、何で俺に送らないんだよ」

「お礼はするからさ、樹ちゃんと林檎ちゃんが」

「え⁉ 私がするの⁉」

「当たり前じゃん」

「飛び火したユメリンゴに涙を禁じ得ない」

 と言いつつ思わぬしっぺ返しを喰らった事へのシャーデンフロイデ(メシウマ)を覚えたのか、京助は清々しいまでの満面の笑みを浮かべていた。

「まあ取材協力だけでいいからさ、編集とかはこっちでやるから」

「ああそうなの? てっきり俺も作らされるのかと思った」

 しかしほぼ騙されて連れて来られた形ではあるので、京助の腰は重かった。

「それでもダメ?」

「いやダメかと聞かれるとだね、首を横に振りにくいわけでござんして」

 口をムの字に結んで腕を組む京助に諦めムードが漂っていたころ、奏音が京助の手を取って上目遣いにアヒル口、そして猫撫で声でこう告げた。

「ねぇ~え、おねがい。協力してあげて」

 気難しかった顔はバーナーで炙ったチョコレートのように一瞬で溶けた。

「う~ん、わかった、何だってする。法も犯す」

 急に始まったのろけに辟易しつつ、とりあえず協力を取り付けることが出来た事に喜んだ。

(あ~恥ずかしかった……)

「わかりました、協力しましょう! 真鳥市で一番ホラーに詳しいこの(わたくし)千道京助が加わればピューリッツァー間違いなしです!」

「ピューリッツァーは別に目指してないかなぁ」

「目指せよ。まあいいや、とりあえず後輩クン達の名前が知りたい」

「俺木山です」

「私宮沢です」

「私が石崎です」

「えーっと、唯一の男子君が木山ちゃんで、メガネの子が宮沢ちゃん、んでホラーキングが石崎ちゃんね」

「お……覚えられてた」

「千道君って結構根に持つタイプだからね~、夏休み明けにホラーキングって仇名つけられて広められてるかもよ」

「それか夜に寝てたら金で雇われた闇の仕事してる人達がやってきて攫われて中東か中南米に売られて……」

「ひぃ! ごめんなさい! 何でもします! 靴舐めます!」

「そんなことしねぇよ! 全く人の事を器の小さい奴だとか反社みたいに言いやがって」

「ゴメンゴメン、機嫌直して」

 気を取り直して、取材の為の会議が開始された。

「まあ一応確認しとくけど、今回の特集はホラーなのね」

「そうね、決まってるのはホラーって事だけ」

「まあホラーって一言で言っても色々ある訳でな。どんな風なのがやりたいのか、そういう路線を教えてくれると俺もやりやすいかな」

 この一言により、樹達は路線を決めるための案を出すことになった。

「ちょっとべタベタだけど、この学校の七不思議はどうですかね?」

「校舎新築してから聞かなくなったらしいよ」

「なんていうか、この学校ならではっていうか、他にない感じにしたくないですか?」

「たしかに、ネットにあるようなものを作っただけじゃ千道君(せんもんか)を呼んだ意味がないよね」

 十数分の会議の末、二つの案が上がった。

 一つは『鳥人間』及び『忍者軍団』の考察、もう一つは慧習館高校周辺地区のホラースポットの現地取材。

「やっぱ真鳥市と言えばこの二つは外せないよねぇ」

 今ではすっかり奏音も『マトリの謎』のフォロワーである。

「うーんちょっといいですか?」

 唯一の一年男子の木山がおずおずと手を上げる。

「ああ意見があるの? どうぞどうぞ積極的に言って」

「まあ鳥人間と忍者軍団もすごくホットな話題ではあるんですけど、でも結局この二つの情報って殆ど『マトリの謎』から来てるわけじゃないですか。それじゃ結局さっき言ってたネットにあるようなものを作っただけになるのかなって思うんですよね」

「でも千道先輩の考察があるわけだし、オリジナル要素はあるとは思うけど」

「でもそれじゃ少し弱くない? 考察って言っても結局は乏しい情報から色々形作らなきゃいけないからどうしてもオリジナリティは生まれないよ」

「宮沢の言う通りだと思うね。鳥人間と忍者軍団やるより、俺達六人でホラースポットに行った方が新鮮でいいネタになると思うんだ。一応近辺て縛りがあるから身近になると思うし」

「うーん、たしかに新鮮さならそっちが上か」

 ここでしばらく黙って後輩達の議論を聞いていた樹が身を乗り出して切り出した。

「もしさ、もしもだよ。ホラースポットに決まったらさ、誰かが私達六人がそのホラースポットに行く様子を撮影してさ、リンク公開限定にしてYouTubeにアップしてさ。レポートと千道君の考察を交えたのを記事にして、んで端っこにQRコードを乗っけたらさ……すごく斬新で面白いんじゃない?」

 これには後輩三人だけではなく、奏音と京助も目を見開く。

「採用」

 樹の鼻先に指を突きつけ、何故か京助が決定を下した。

「めっちゃ面白いじゃんそれ、俺らの学校スマホ持ち込みOKだし、誰だって見れるからグッドアイデアだぜ!」

「まあまあ、私達が呼んだとはいえ千道君一人の意見を通すわけにはいかないからね、とりあえず多数決取るよ! じゃあ『鳥人間と忍者軍団の考察記事』がいい人」

 六人中誰も手を上げない。

「……じゃあ『慧習館周辺のホラースポットの突撃取材』がいい人」

 これには全員が手を上げた。

「じゃあ決まりだ!」

 早速六人は木山が持ってきていた編集用のノートパソコンを開き、ここ近辺の地図を開いた。

「ここが学校だね」

「千道君、ここらへんに何かそれっぽいところある?」

「結局そこも俺頼りなのかよ……どれどれ、貸してくれないか」

 木山からノートパソコンを借り、マウスを動かして近辺を見て回る。

「ここ知ってる?」

 京助がマウスカーソルで指したのは、近辺で有名な工場跡地だった。

「ここ有名ですよね。お父さんも言ってました」

「でも廃工場入るのは色々マズくない?」

「まあそっか、土地の権利持ってる人居そうだしなぁ、連絡入れるにしても誰に許可取ればいいのって話だし」

「でも京助マネーでどうにかならない?」

「ハハハハッ、あのねぇ奏音。それは日本銀行券(しぶさわえいいち)を過信しすぎてるよ」

 限定公開とはいえ慧習館高校の生徒として動画を撮るのである、法的に良くない行為をするわけにはいかない。

「じゃあウチの高校近くで、なおかつ入っても咎められないであろう場所(心スポ)になってくる訳か……なかなかに難しい注文するね君達」

 樹が申し訳なさそうに手を合わせる横で、京助は左腕で頬杖をついてマップ上を東奔西走する。

「まあどの程度を〝近く〟と定義にするかだよな」

「校区内……はさすがに狭い?」

「さあ、そもそも校区の範囲が分かんねぇし」

 マップ内を走り回っていると、ふと京助が動きを止めた。

「何か見つけた?」

「ちょっと待ってな」

 自分のスマホで何かを調べた後、すぐに位置を調整してある山を拡大し始め、皆の方を振り返った。

「ここだ!」

 京助が指したのは一見何の変哲もない山であった。

「ここがホラースポット?」

「そう、噂が立ったのは最近なんだけどな。この学校の近くでなおかつ入っても誰からも怒られなさそうなお誂え向きな場所だぜ」

「どんな噂なの?」

 京助曰く、ここの山では人魂が頻繁に目撃されており、その上奇妙な音や幽霊と思わしき怪しい人影、そしてUFOの目撃情報まであるらしい。

「人魂に幽霊にUFO、よりどりみどりだね」

「でも一つの場所でこれだけ事象が集中してるんだぜ? なにかあってもおかしくないとは思うんだ」

「……もし突撃かけて何もなかったら?」

「何もなかったら無事帰ってこれましたよでそれで良し、何かあったら本物を収めることが出来て万々歳。どっちに転んでもオイシイ訳だな、こぉら売れるぞ」

「一時間前まで全然乗り気じゃなかった人間の言葉じゃない……」

「なんか言ったかホラーキング」

「いっ! いいえ! 何も言ってません! 靴舐め……」

「舐めなくていいって」

 パソコンを閉じ、椅子の背もたれにもたれかかって後ろを向いた京助は皆に問うた。

「行くところ、ここでいいよな?」

 結果、今日の七時に学校前に再集合し、必要な装備を整えて目的地である山に向かう事になるのであった。


 時と場所は移って地球の衛星軌道上、ジャガック基地艦の幹部エリアにて。

「おや」

 開かれた自動式扉から入って来たのは、いつもの正装をして杖を突いているクドゥリだった。

「もう動けるのか?」

 ルゲンが気遣いとも取れる言葉をかけたのを珍しく思いながら、クドゥリは小さく笑って椅子に腰かけた。

「戦闘はまだ無理だが執務だけなら問題ない。リハビリも兼ねての復帰だが」

 高貴な印象を受ける杖を収納し、溜まっていた雑務を消化し始める。

「その目はどうした?」

「うん? ああ、これか」

 クドゥリの右目には眼帯が取り付けられていた。

「ザザルは治せなかったのか?」

「いいや、治さなかっただけのこと」

「非効率だろう?」

「私には効率よりも取るべきものがあったんだ」

「理解できんな」

「それで結構だ」

 しばらくの間、他者が居たのならば耐えられないほどのぎすぎすした空気が漂っていたが、そんなこともお構いなしにクドゥリは口を開いた。

「パテウはどうした?」

 パテウ・シャロー、ザザルの口から語られた新進気鋭のジャガック幹部である。

「一週間ほど前に一度だけここに顔を出した。相変わらず五月蝿い奴だったな」

「ということはもう地球に居るのか? 報告は?」

「上がっていない、財団にもマグナアウルにも上手く隠れながらいつもの酔狂に熱を入れ上げているのだろう」

 クドゥリはパテウと最後に出会った三百年ほど前の事を思い出し、今のパテウが当時とどれぐらい変わったかに思いを馳せた。

「あいつ、どうなってた?」

「もはや顔の原形すら消えていた、しかも肩に物騒なものを生やしていたよ」

「とうとう全身にまで回ったか。フフフフ、会うのが楽しみだ」

 クドゥリやパテウが重んじている〝武〟はルゲンには理解しかねるものである。顔を顰めながら自身の体を背から生えたパワードアームで持ち上げて去ろうとしたその時に、何かを思い出したクドゥリに呼び止められた。

「なんだね?」

「ゾゴーリ様がジェノサイドカプリースを雇ったらしいな」

「……ああ、あんな連中に頼るとはこの私ですら予想外だった」

「奴はここに来たのか?」

「いや、一度もこちらに来ないばかりか、寄越した報告は二つだけ」

 ルゲンは携帯ホロ端末でデータを送り、クドゥリがファイルを開いてその内容を確認した。

「どれ、『着いた』『見つけた』。何だこれは?」

「交戦したんだろうな。よくわからんが」

 ここでクドゥリはある事実に気付き、左目を見開いて思わず立ち上がった。

「な……何事だ」

「着いたと見つけた……サイはそれしか送らなかった」

「それがどうした?」

「つまりまだ殺していないという事だ!」

 クドゥリの瞳の奥の光が目に見えて増し、意図せず吊り上がる口角を手で押さえる。

「ククク……まだあいつは生きている、どんな手を使ったか知らんが気紛れなる虐殺の化身ジェノサイドカプリースを退けたんだ。面白い……」

「そんなにまた奴と戦いたいのか?」

「ああ、再び奴と私のどちらが上か証明できるのだぞ? 楽しみで仕方がない」

 ルゲンは呆れた様に溜息をつき、程々にしろと言い残して去って行くのであった。


 そして午後七時、山登りに適した格好に着替えた六人が校門前に集合した。

「よーし、持ち物確認するよ! まず懐中電灯は?」

「はい!」

「これでいい?」

「俺もあるよ」

 石崎は頭につけるタイプ、奏音は災害用の少し大きい角ばったもの、そして何故か京助は警棒型タクティカルフラッシュライトを持ってきていた。

「え、なにそれ?」

「ごっつ……」

「先輩それもうバットじゃないですか」

「いやでもほら」

 やたらと強力な光の束が校舎に差した薄闇を蹴散らした。

「うわすげぇ」

「一応二本あるよ、誰か持つか?」

「なんでそんなの持ってるかとか以前に何でそんなもの二本も買ったのよ……」

「千道君ちょっと貸してよそれ……うわぁ……」

 それは懐中電灯というにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く、そして……。

「大雑把ではないね、ちゃんとした作りしてる」

「泥棒対策にと思って八本買って家の至る所に置いたたんだよね。んでこの二本は俺の部屋に置いてたやつと、玄関の靴箱に隠しといたやつ」

「あんたの家に入る勇気ある泥棒なんていないって」

「はいはい、とりあえず持ち物確認に戻るよ」

 京助の警棒型タクティカルフラッシュライトを振り上げ、樹は更に続けた。

「カメラは?」

「はい! この木山太一がしっかりと皆さんをカメラに収めさせてもらいますよ!」

「一応さ、懐中電灯の光はあるけど暗視モードってある?」

「もちろんっすよ! ちゃんとした高いの持ってきましたし、SDカードだって特別なやつ用意してきたんですからね!」

「特別ってぇと?」

「なんと二テラバイトの大容量です!」

「木山すっごく有能じゃん! えらいよぉ~!」

 樹に頭と頬を撫でられ、木山はわかりやすくでれでれとした顔になる。

「あとはそうだなぁ、虫よけスプレーとか殺虫剤は?」

「持ってきました!」

 宮沢が二つのスプレーを掲げ、念のため虫よけスプレーを全員の服の上から塗布しておいた。

「なんか懐かしいなこの独特な臭い」

「な、虫よけスプレーとか中学入ってからまず見ねぇし」

「あと一応これを」

 そう言って宮沢が取り出したのは二振りの金属製トンファー型警棒と電動エアガンだった。

「ベレッタM93F、なんでそんなもの持ってきたんだよ」

「いや~山の中に野犬とか猪とか居たら怖いじゃないですかぁ」

 エアガンはともかく何故トンファーなのか、いろいろよく分からないがとりあえず準備は整ったため、正門前で樹と石崎と奏音の三人で並び、オープニングを撮影することに。

「ゲストのホラー博士の千道京助先生です!」

「え~どうも、ご紹介に預かりました千道です」

「千道先生、今日はどうぞよろしくお願いします」

 無時ワンテイクでオープニングトークを撮り終え、一行はスポットに向かって出発した。

「ここ撮らないの?」

「そうですねぇ、到着したら撮ろうと思います、この間は編集入れようと思うんで。あ、山の近くでスポットの説明欲しいんで、そこで一回さっきの四人立ち止まってちょっと喋ってもらいますね」

「俺が説明やる感じ?」

「お願いしますよ先生!」

「任せろい!」

 

 四十分程で山の麓に到着し、四人は再びカメラの前に立った。

「はい、というわけで問題のスポットに着いたんですけども……千道先生」

「はいはい」

「こちらのスポットにはどんな曰くがあるんですか?」

 京助はカメラに向かって曰くありげな顔とゆったりとした語り口で、何故ここが心霊スポットと呼ばれるようになったのかを説明した。

「人魂に怪しい影にそしてUFO、にわかには信じがたいですが、先生はここ一帯で何が起こっているとお考えですか?」

「私の見立てで一番あり得そうなのは宇宙人が何かしらの実験を行っていて、その影響が怪奇現象として目撃されていると、そう考えております」

「……」

 一般人ならばこんなものは戯言として片付けられてしまいそうなものだが、京助と奏音は実際に起こりうる事象であることを知っている。

「無事に何事もなく帰還できると良いのですがね」

 意味深にカメラを凝視する京助の顔を撮影してから木山のカットがかかり、一同砕けた雰囲気に戻った。

「いや~京助の語りでなんかゾワ~ってしちゃった!」

「そうですよ! 千道先輩めっちゃ怖かったですもん!」

「自分にもこんな才能があるとは思わなかった、講談師か怪談師になろうかな。それか落語家に弟子入りするか」

「どこの一門に行くの?」

「うーん、林家か三遊亭かな、もし三遊亭に弟子入りしたら俺が圓生を次いで……」

「烏滸がましいわ!」

「圓生はダメかさすがに、じゃあ八代目の……」

「八代目圓楽もダメよ、二代目楽太郎も」

「ダメか、てかイインチョめちゃくちゃ落語に詳しいんだね」

「小学生のころからよく聞いてたんだよね~」

 先程の恐ろしげな雰囲気はどこへやら、京助と樹の落語の話で皆は何を言ってるのかよく分からないながら、雰囲気はとても和やかなものになった。

 尤も奏音は樹に対して僅かながら嫉妬心を抱いていたのであるが。

「よっし……いい加減行くか!」

「そうだね!」

「ふぅ~……気合入れてこ」

「怖くない……怖くない!」

「殿はカメラマンの僕が!」

「何言ってんの、横に私がつくよ」

 先頭に京助、その後ろに奏音と樹、三列目に石崎、最後尾にカメラを持った木山とエアガンを持った宮沢がついた。

「今から行くけど、キツかったらいつでも言っていいからな」

「はーい」

「それじゃあスタートだ」

 京助と樹の二振りのタクティカルフラッシュライトと奏音の災害用懐中電灯が山林に蠢く夜闇を蹴散らし、その光の束を頼りに六人は道を進んでいく。

「なんかもっと……暗い中を怖がりながら進もんだと思ってたけど」

「すっごい明るいね」

 しばらくの間虫や埃が僅かな影を作る以外は何も無かったが、突然開けた場所に出た。

「あれ、変だな」

「どうしたの?」

「一見そうでもないように見えるけど、ここら辺すっごい整備されてるぞ」

「そうなの?」

「ほら、木山ちゃん来て」

「え、あっはい」

 京助が指さした前方にカメラを向け、次に後方へカメラを向ける。

「な?」

「いや京助……な? って言われても分かんないよ」

「いや不自然なんだよ明らかに、まるで手が入ったかのようにここ等一帯綺麗に木が無くなってる」

「考えすぎじゃない?」

「そんなことは無い、だって見てみろよ。切株すら無いんだぜ」

 そう言われてみればなんだが不自然に思えてくる。

 先程までのどこか和やかな雰囲気はどこへやら、一転して全員不安に包まれる。

『トト、ここ等一帯に何かあるか?』

『検索中……微弱ながら地球外由来のエネルギーを検知しました』

『本当か?』

『ですがその反応もほんの僅かなものです。もしかするとジャガックではないかもしれませんし、以前ここに来ていた地球外の飛行物体の残留物かもしれません』

『万一奴らだとしたら』

 緊張した面持ちの四人を見回し、最後に強張った顔をした奏音を見る。

『絶対に知られず完璧に奏音を……皆を守らなきゃならない』

『サポートしますよ。私の探知能力を常時発動しておきます』

 京助は大きく深呼吸すると、皆に聞いた。

「もしかしたらこの先マジで何かあるかもしれない、それでも進むか?」

「……うん、進むよ。もし何かあったら守ってよ」

「当然さ、他の皆は?」

 同調圧力も多少あるだろうが、皆進む意思を示したため、再び京助は前進することにした。

(さてと……いざって時どうするかな)

 頭の中で万一の可能性を何重にもシミュレートし、京助は自分のタクティカルフラッシュライトに目を落とした。

(武器になるもの持って来てて良かったな)

 京助が出せる全開の膂力でこれを振れば確実に壊れるだろうが、今のうちに念力か物質変化で表面をコーティングしておけば、何とか耐えうるものにはなりだろう。

「まあ緊張するのもわかるけどさ、楽しくやろうぜ!」

「楽しくって言ったって……」

「こういうぐらついて弱気になってる時に怪異は浸け込むんだよ! まあ浸け込まれて怪奇現象の一つや二つ起こればそれはそれで絵的にオイシイかもしれないけど――とにかく心を強く持っておけば怪異は寄ってこない!」

 それはホラービデオの撮影者としての在り方的にあまり良ろしくないだろう心構えではあったものの、確かにこのムードをぶち壊す効果はあったようで、幾分か皆の緊張は解れていた。

「そうだね! しりとりでもする⁉」

「いいかもね! 乗った!」

 楽しく談笑する中で、奏音は上着のポケットの中で秘かに自分の転送鍵の通信機能と位置探知機能をいつでも使えるようにしておいた。


 そうして二十分、開けた場所を進むが何も見つからず、しりとりも惰性で続けるだけになっていく。

「ガゼル……ガゼル……ルーマニア」

「それ言ったでしょ」

「えぇ、言ったっけ?」

 後ろで木山が口を尖らせて「る」から始まる言葉を探している様子を聞いていると、京助と奏音が同時に足を止めた。

「あれ?」

「ん?」

 お互いに顔を見合わせて何かに気付いた事を確認する。

「見た?」

「ああ、見た……気がする」

「見たよね? でも何を見たの?」

「分かんねぇ、でも何かおかしかったよな」

 何を見たかは分からない。だが京助も奏音も確実におかしなものを捉えていた。

「変だな……一瞬すぎてわからなかったけど、でも何かがおかしかったんだよね」

「目に映るもの……一瞬映るもの」

 さすがに他の四人も二人の様子が変なことに気付いていた。

「何か見つけたの?」

 樹がこちらを向いた瞬間、京助は素早く振り返った。

「あっ! 今だ! 何かおかしい事が起こってる! いや起こっていたんだ! 一瞬すぎて見逃した! 奏音!」

「私も見た! けどまだ分からない!」

 不安が波及するのもお構いなしに京助は忙しなく歩き回り、フラッシュライトの光の束が暗闇を蹴散らして回っていく。

「俺達はここに来て、前を行ってた俺と奏音が何かに気付いた!」

「それで樹ちゃんが振り返った時にも同じ事が起こった!」

「そうだ! 俺と奏音とイインチョに共通してるのは――してるのは」

 京助と奏音の視線が徐々に落ちていく、正確には自分の手元に。

「……そうか」

 生唾を飲み込む奏音に京助は顔を寄せてニヤリと笑うと、フラッシュライトの明かりを消した。

「お前達、よく見てろよ」

 なんとある一点にライトを向けてスイッチを入れると、光の束が一瞬だけ歪曲し、すぐに元に戻ったではないか。

「⁉」

「木山ちゃん!」

「撮りました! 今の撮りましたよ!」

 何度か試してみても、他の懐中電灯でも同じ結果になる。

「これは……」

「どういう事?」

 奏音が光が湾曲した場所に向かおうとしたその時、数多の修羅場を潜り抜けて育まれた京助の第六感が割れ響く鐘のように警報を鳴らし、殆ど反射的に奏音の腕を掴んだ。

『ワープ反応! 警戒して……』

 トトが言い終える前に六人の周囲を突然現れた無数の人影が包囲し、銃を突きつけられた。

「両手を上げろ」

 樹と三人の一年生たちはこの状況に軽度のパニックを起こしていたが、京助と奏音は冷静に状況を見ていた。

(あの装甲とヘルメット……)

(ジャガック……京助の言う通りだった)

 奏音は京助の方を見た後、懐中電灯を持ったまま両手を上げた。

「言う通りにしよう、宮沢ちゃんはエアガンを床に置いて」

 奏音の言う事に従い、全員両手を挙げるのであった。


 祈るような気持ちでジャガック兵の次の行動を待っていると、兵たちは六人を近くの洞窟へと連れて行った。

『天然の洞窟に基地を隠していたのか』

『探知システムに引っかからない訳です』

『さてと、みんなにバレずにこの場を切り抜けないといけない訳だが……どうしたもんかね』

 そんな京助の後ろで奏音は、自分たちを取り囲んでいる見張りのジャガック兵の目を盗み、ポケットの中の転送鍵の緊急(レッド)コードの送信スイッチを押し、何食わぬ顔で平静を装ったものの、ポケットから手を出す瞬間を見られてしまった。

「おい! 全員止まれ!」

 叫んだジャガック兵に他の兵たちが注目する。

「どうした? 何かあったか?」

「そこの二列目の小娘、さっき何をしていた?」

「は?」

 奏音に声を掛けられた事で、京助は思わず振り返った。

「別に……何もしてないけど?」

「じゃあポケットの中に何を隠した?」

「おい、さっき持ち物は全部渡しただろ」

「お前は黙ってろ!」

「ぐっ!」

 見兼ねて制止しようとした京助は頭を銃底で殴りつけられ、思わず膝をついてしまう。

「京助!」

 額から出血した京助の方へ目を見開いて駆け寄ろうとした奏音に銃口が突き付けられ、たまらず樹が悲鳴を上げた。

「何を隠した?」

「それは……」

「そうか、言わないならこれはどうだ?」

 銃口の向く先は自分から京助へ向き、奏音の呼吸が早くなり、樹と宮沢と石崎が限界を超えて泣き出した。

「はっ……はふっ……」

 京助を助けなくてはならない、それなのに何もできない今の自分が情けなくり、自然と涙が込み上げてくる。

「泣くぐらい怖いのか? だったら大人しくポケットの中身を……」

 周囲の音が遠くなる、それと同時に京助の内側から黒いものがマグマのように吹き上がってくる。この感覚は力に目覚めた時に感じた憎悪を超えた怒りに似ていた。

「……殺す」

 誰にもわからない程小さく呟いて京助の目が不気味に赤く光り、ブザーのような低音が響くと同時に洞窟内部を照らしていた照明が全て落ちる。

「何だ⁉ うわっ!」

 ジャガック兵が暗視モードに切り替えるよりも早く、強烈な閃光によって立て続けに目を潰され、何が起こったか把握する前に鈍器で頭を殴られ、全員意識を手放してしまった。

「……なに?」

 再び電気が通った時に奏音が見たのは、倒れたジャガック兵のすぐそこに立つタクティカルフラッシュライトを持った京助だった。

「京助!」

 血に濡れた横顔で一瞬睨まれ、奏音は小さく悲鳴を上げる。

「っと!」

 京助は血を拭いながら顔を揉み、奏音の肩を持って額にキスをして抱きしめた。

「ゴメン、悪かった。大丈夫だったか? 怖かったよな?」

「……あっ、ごめん。頭の怪我大丈夫?」

「ちょっと切っただけさ、なんてことない」

 背後からする足音に気付いた京助は、ジャガック兵が取り上げた荷物を奏音に渡すと、諭すように言った。

「いいか、後で絶対合流するから先に行け」

「待ってよ! あんたは⁉」

「今来てる奴らを引き付ける」

「バカ! 殺されるよ!」

「大丈夫だ、絶対に後で行くから」

「でも――」

 奏音が何か言うより先に、京助が奏音の唇を奪った。しばらく唇を重ね合い、落ち着いた時に離れて肩を抱いてしっかりと目を見つめて言った。

「約束する。絶対に後から行くから先に行くんだ」

「……約束だよ」

「ああ、みんなを頼む」

 奏音は放心状態の四人を揺り戻し、今来た道の反対方向へ駆け出して行った。

「よし……」

 それを見届けた京助が首を曲げると、額に出来た痣と傷跡があっという間に消失し、大きく息を吐いてフラッシュライトを肩に乗せた。

「お前ら許さねぇ。全員ぶっ殺してやるよ」

 振り下ろしたライトの先に、黒い炎が僅かに灯る。


 時折物影に隠れながらジャガック兵たちをやり過ごしつつ進んでいると、奏音の転送鍵がポケットの中で震えた。

(来た!)

 奏音は振り返り、タクティカルライトを木山に渡してから皆に言った。

「実はさっきね、通報しておいたの」

「つ、通報?」

「このあとすぐに皆は保護されると思う。だから行って」

「かっ……奏音ちゃんは⁉」

「京助を連れ戻しに行く。絶対に振り返らないで!」

「でも……」

「いいから行って! ダッシュで早く‼」

 奏音の大音声に体を震わせた四人は出口に向かって走り、それを確認した奏音は転送鍵を取り出し、キーを展開して上に掲げる。

「一番装着! GO! クインテット‼」

 黒いスーツを纏った奏音(ミューズ)は深呼吸すると、京助を探すべく走り出した。

「こいつは!」

「クインテットだ!」

 ミューズは溜息をつくとグリップを取って二つに折り、手斧と拳銃に変形させて構えた。

「一筋縄で行かないって事か……掛かって来い! 全員ぶっ飛ばす!」


 そして京助はライトと超能力を駆使し、ジャガック兵に対して無双の限りを尽くしていた。

 光線銃のビームは全て寸前で静止し、謎の力で関節を逆の方向に拉がれ、その上で遥か彼方に吹き飛ばされる。

「なんだこ――」

 そう言いかけたジャガック兵はライトが出す光が収束した光条に焼き切られた。

「うわああっ!」

 逃げ出したジャガック兵達の方へ飛び込み、順番に撲殺していると、とうとう限界が来てライトが粉々に壊れてしまった。

「チッ」

「……へっ! どうやらオモチャが使えなくなったらしいな!」

「武器が壊れればこっちの――」

 調子付いてナイフを取り出して近寄った雑兵の腹に京助の右ストレートが突き刺さり、数秒遅れてまるで紐が解ける様に雑兵が()()されてしまった。

「へっ?」

 困惑する他の兵士の前で右腕を上げると、次元断裂ブレードが展開されたアウルレットが装着されていた。

『次元壁、断裂』

「招来ッ‼」

 自分たちの敷地にのこのこ入って来た哀れな小僧が、突如として最も恐れている存在に変わった事で雑兵たちはパニックを起こし、それにも構わず無慈悲にもマグナアウルは鉤爪で次々と兵達を屠っていく。

ウッドペッカー(ハンドガン)

 拳銃を生成すると遠くへ行ったジャガック兵を全員撃ち抜き、壁を粉砕しながら基地内部を歩き回ってジャガック兵を見つけ次第撃ち殺して回っていると、ある地点で背中に何かがぶつかり、反射的に拳銃を向ける。

「ん?」

「あれ、マグナアウル?」

 なんと銃を向けた相手はクインテットのミューズであり、両者とも向けていた武器を下ろした。

「お前確か……ミューズで合ってるよな?」

 スーツの肩に刻まれた『MUSE:Ⅰ』という表示を確認する限り、このマゼンタカラーの彼女がミューズであることは間違いないらしい。

「そう、私ミューズ。やっと呼んでくれたね」

「こう何度も顔を合わせていると嫌でも覚えるさ。ところで高校生ぐらいの集団が居たはずだが、見なかったか?」

「私達が保護した、でも一人ここに残ったって子が居るみたいなんだけど、知らない?」

「さっき見かけたよ、彼の家を聞いて送り届けた後で記憶を消して解放した」

「消せるの?」

「容易い事だ。見た所一人みたいだが、お前の仲間は?」

「すぐ合流する、それまでにこの基地を……」

 その時、モニターに何か紋章のようなものが浮かび上がり、やたらと大きな声が響いた。

『やっとカメラが復旧したと思ったらこんなものが釣れるとはな! 会えるのを楽しみにしていたぞマグナアウルにクインテット! こんな狭苦しい場所でやるより外でやろうじゃないか! 待っているぞ!』

 殆ど音割れしているやかましい大声を聞きながら、ミューズはまた変なのが出てきたと内心で思っていると、隣のマグナアウルが上を向くと同時にマントを広げて天井を粉砕しながら外へと飛び去って行った。

「そうだった、このフクロウに扉って概念は無いんだった……」

 

 ミューズは背中のロケットパックで跳躍して後を追って地上へ出るも、そこにはマグナアウルが居るだけで敵の姿は見えない。

「一杯食わされたか?」

「もしかしたら待ってるのかも。私達全員が揃うのを」

 ミューズはヘルメットの側面に手を当てて連絡を取り始める。

「みんなまだ?」

『今保護が終わった、すぐに行くから!』

「わかった! 待ってるね」

 マグナアウルが腕を組んで貧乏ゆすりをしていると、残りの四人が走って現れた。

「お待たせ……って一緒だったの?」

「うん、洞窟の中で会ったんだ」

「なんだかイライラしてない?」

「……(エモノ)が来ない、いつまで待たせる気だ」

 いっそのこと黒翼乱舞で自分の真下を撃ち抜いてやろうかと考えていると、あのやかましい笑い声が周囲一帯に響き渡った。

「ダァーッハッハッハッハッハ! よくぞ集まってくれた我らがジャガックの宿敵達よ! 場所が割れたのは予想外だったが、ここで会ったが百年目! いざ勝負と……」

 とうとう苛立ちが頂点に達したマグナアウルの口元の装甲が展開し、牙の生え揃った嘴(クラッシャー)が開くと同時にここに響き渡る以上の大声が発せられた。

「ごちゃごちゃうるさいんだよさっきから! 能書き垂れ流してないでさっさと出て来い‼ ぶっ殺してやるからこれ以上待たせるんじゃねぇ‼」

 木々や地面が揺れ、C-SUITの音量調整機能も間に合わず、五人は反射的に耳を塞いだ。

「お……お前の方が……うるさいっての……」

「もう音波兵器だよこれぇ……」

 口元の装甲が元に戻ると同時に再び周囲に声が響く。

「な! よくも演説を邪魔したな! 許さんぞ!」

 すると上空にワープエネルギーが発生し、人型の影が出現した。

「おぉ、これはなんというか……」

「また強そうなのが出てきましたね」

 その人型は二メートルの大柄な体格でなおかつ全身が金属質な鎧に覆われており、それは顔面にまで及んでいた、そして何より目を引くのは、両肩に設置された巨大な砲門であった。

「お初にお目にかかる我らが宿敵達よ! 俺様の名はパテウ・シャロー! ジャガックの新進気鋭のぉ~幹部だァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 金属質の体を仰け反らせて大笑いし、パテウは六人の方へ向き直る。

「さて宿敵諸君! この俺に最初に挑む勇気ある者は……」

 喋っている途中のパテウの前に猛スピードでマグナアウルが迫り、胸部へ左ストレートを見舞い、金属同士をぶつけた時のような激しく鋭い音が響いた。

「……ってぇ~っ!」

 しかしパテウは少しよろめいただけで、逆にマグナアウルが拳を痛めてしまう。

「おお! 俺をよろけさせたのは流石だ! お返しに吹き飛ばしてやろう!」

 腕と指から銃口が覗くと、複数の弾丸がマグナアウルに向けて射出され、跳躍して回避するも流れ弾が次々と爆散して夜の山林を煌々と照らした。

「そういうタイプか! みんな距離取って攻撃するよ!」

 手斧と拳銃を合体させて戦斧に変えながらミューズは指示を飛ばし、それに従って全員がばらけながら各々攻撃を加え始めた。

 アフロダイの光の矢とミューズの光弾がパテウに刺さるも、パテウの硬い装甲はそれらを容易く弾いてしまう。

「ダァーッハッハッハッハッハ! 痒いわ! 撃つならこれぐらいはやれい!」

 胸と膝が変形してガトリング砲が出現し、上半身と下半身を逆方向に回転させながら周囲の物全てを薙ぎ払う勢いで銃弾の雨を浴びせた。

「うわっ! なにあれ⁉」

「ビームじゃない……実体弾だ!」

「何だよあの動き、まるでロボットのおもちゃじゃん」

「重さには重さだよっ! だあああっ! 喰らえっ!」

 デメテルが腕を回して遠心力をつけたロケットパンチを放ち、それはマリーゴールドカラーの光の軌跡を描いてパテウの頭に命中し、これを喰らったパテウは仰向けに倒れてしまった。

「あれ?」

「倒……した……のかな?」

 数秒の沈黙の後、背中から生やしたジェットで起き上がると、まるで駄々をこねる子供のように地団駄を踏み始めた。

「やったなぁ! やってくれたなぁ! 全員爆殺だぁっ!」

 その宣言通りパテウの体のありとあらゆる場所から砲門やミサイルキャリアが生え、それらから無数の弾丸を射出し、クインテットは無我夢中で回避した。

「何なのあの火力は!」

「弾切れを狙いたいけど……隠れる場所無いからそうも言ってられない!」

「やっ!」

 ルナが斬撃を飛ばして弾丸を切り刻むもこの弾幕では一時凌ぎにしかならない。

「どうしよ、一時的に森の中に誘い込んで……」

「|ヘロォォォォォォオオオオオンッ《ガトリングキャノン》! おおおおおおっ!」

 クインテットが作戦を立てようとした時、拳を痛めて一時離脱したマグナアウルがどこからともなく現れて、やたら銃身が長いガトリング砲を持ち出して全方位に銃弾やミサイルを撒き散らすパテウに突っ込んでいった。

「はぁ? あんなものまで持ってるの?」

 このガトリング砲は本来飛行形態で使うものだが、緊急時と判断したため無理矢理生成したのである。

 青白い半物質弾がパテウが生成した弾幕を削ぎ、それに気付いたパテウも負けじと全ての火力をマグナアウルへ向け、距離を詰めながら火力勝負が始まった。

「ダァーッハッハッハッハッハァッ! 大した火力だ! だが現在二百九十八の砲門を使う俺と一つの砲門しか使わないお前! 果たしてどちらが勝つかな!」

 パテウがそう挑発した直後、射出した銃弾やミサイルが空中で静止し、それを見て困惑している隙にマグナアウルはガトリング砲をその場に捨てた。

「そうだな、この場合一本のメイスを持った俺が勝つ。ルースターッ(メイス)!」

 ホームランを打つ要領でパテウを殴りつけ、後退した隙に空中で静止させた弾丸やミサイルの数々を操作して全てパテウにぶつけた。

「ぎゃあああああっ! ずるいぞ! それはずるいぞぉぉぉおおおおっ!」

 絶叫しながらのたうち回るパテウを見て、アフロダイがぽつりと漏らした。

「同意します。あれ殆どずるですよ」

 だがしかし放った弾幕をあれだけ浴びたと言うのに、当のパテウはまだ立っている。

「ダァーッハッハッハッハッハ! 自分の攻撃で倒れるバカがどこにいる!」

「撤回します、このブリキロボットもどきも大概ずるです」

「だっ⁉ 誰だ今ロボットって言ったのは! 許さんぞ! 俺様はロボットと言われるのが一番嫌いなんだ!」

「そりゃそんな見た目してる方が悪いだろーが!」

「好き好んでその姿になったんでしょっ!」

 デメテルのロケットパンチがエナジーアンプリファイヤとなってパテウの腹に張り付き、腰のスイッチを二度押し込んでフルチャージしたミューズとイドゥンの光弾とアフロダイの光矢がそこに吸い込まれ、ダメ押しの一撃にチャージしたルナが斬撃を飛ばしてパテウを吹き飛ばしてしまった。

「キィィィィ! 許さん! 許さんぞ貴様ら! もう俺様は怒った! この二百九十九番目と三百番目の新型砲の餌食にしてやる! ハァァァァアアアアッ!」

 パテウの体が赤く輝いて浮き上がり、肩の砲門の先端に電気を帯びた赤褐色のエネルギー球が形成されていく。

「これ結構まずいかも⁉」

「イドゥン!」

「了解!」

 ミューズの戦斧のスパイクとロングライフルから同時に光弾が放たれ、それは広がってドーム状のバリアになった。

「そんなこと出来たの?」

「拘束ビームの応用だよ、あれ相手に持つかは祈っといて」

「ちょっと祈るって……あんたね!」

 ルナが文句を言おうとした直後、パテウの新型砲から赤褐色の光球が射出され、それらは数百個に分かれてクインテットとマグナアウルに降り注ぐ。

「くっ!」

「お願い……もう少し耐え――」

「うっ……だあっ!」

 デメテルがナックルアームでバリアを生成してドームバリアを補強した。

「これで少しは……持つからっ! 割れたら全力で走ってっ!」

 正確には二十七秒後、粉々に砕けたドームバリアから蜘蛛の子を散らすようにクインテットが飛び出した。

「なにこれ! 地面が穴だらけ!」

「そんなこといいから走って!」

 ようやっと砲撃の雨が止み、スーツの補助機能有りでも疲れが回ったのか全員その場に膝をつく。

「はぁ……ふぅ……」

「ムリ……もう走れん……」

「待ってください……あれを……見て」

 そんなに逃げ惑う自分達が面白かったのか、パテウはまた大笑いして次の一撃を発射しようと再びエネルギーを収束させ始めた。

「サイアク……」

「これからどうしようか」

「ところで、マグナアウルはどうしてるの?」

 周囲を見回すと黒い球体が一つ地面から生えていた。

「なにあれ?」

 するとその球体が勢い良く()()し、中からマントを広げて剣と戦斧を構えたマグナアウルが出てきた。

「あっ!」

「飛燕斬・穿ッ‼」

 鎧の各部が青白く輝き、それと同時にマントで全身を覆ってドリル状になると高速旋回しながら空中のパテウに突っ込んでいった。

「なななな⁉ 今は来るな! 今来ちゃ……ぎゃあああああああっ!」

 エネルギー球ごと貫かれたパテウは爆散し、空中での爆発を背にしてマグナアウルはマントをはためかせるのであった。

「ハァ……」

 振り返ったマグナアウルへ近くに居たデメテルが小走りで近寄った。

「すごかったねぇ今の」

「そうか? 色々あってイライラしたんで力が入りすぎた部分はあったがな」

「でもすごい! ジャガックの幹部を倒すだなんて」

「……確かに」

「ダァーッハッハッハッハッハ! 誰が倒されたってぇ⁉」

 クインテットどころかマグナアウルも身を震わせて素早く周囲を見回すと、舞い上がった粉塵が一点に集まって徐々にパテウの姿を形成し、ついに最初に会った時そのままのパテウが再び地に足をつけた。

「なんで……確かに入ったはず!」

「再生機能付きの新型サイボーグって事⁉」

「そこが思い違いだ! そもそも俺はサイボーグなどではないし! 断じてロボットでもないのだよ! 聞いて驚け見て笑え! ジャガック幹部のこの俺はァーッ!」

 足を一歩前に出して見得を切ってパテウは自らを誇示して見せた。

「超能力者なのだ! ダァーッハッハッハッハッハ!」

「……そうか、今合点が行った」

「じゃあ、あいつはあなたみたいなアバター使いって事?」

「違う、恐らく奴は……過剰回復能力者だ」

 マグナアウルの指摘を受けパテウは大きく頷いて続けた。

「その通り! 俺様はいかなる負傷からでも蘇る! それに加え武器や金属を取り込むことでこの素晴らしい体を作り上げたのだ!」

「弾切れしないのは撃った瞬間に()()()()()()()()()()()()するからか、そうまでなるのにどれほど武器を取り込んだ? イカれてやがんなお前」

「何とでも言え! 伊達に幹部をやっていないのだよ! さて続きと行こう!」

 マグナアウルが武器を構えたその時、頭の中で声がした。

『京助! 強大なサイコエネルギーの反応があります!』

『それは今重要か?』

『重要です! 奴が来ます!』

『奴って誰だ⁉』

 クインテットとマグナアウル、そしてパテウから少し離れた所に何かが()()し、それは粉塵の中でゆっくりと姿を起こして、真紅の具足のような姿を現した。

『サイです!』

 カプリースは粉塵を吹き飛ばして完全に姿を見せ、そこへイドゥンは真っ先にロングライフルを向けた。

「ホンットにサイアク、アンタにだけは今一番会いたくなかった」

「ひどいなぁイドゥンちゃん。ボクは君達に会いに来たってのに」

「私達は会いたくなかったけどね」

 ルナから太刀を向けられ、カプリースは首を振って大袈裟に肩を竦めて見せる。

「おお! お前は確かゾゴーリ様が雇ったという傭兵気紛れなる虐殺の化身ジェノサイドカプリース!」

「なんだか楽しそうだったから来ちゃった、ここしばらく君達に会えず体の疼きが止まらなくてね」

「今取り込み中でな……帰ってもらえると助かる」

「ひどいなぁ、せっかく来たのに追い返すだなんて」

 焦るクインテットとマグナアウルを見てパテウは体を仰け反らせて大笑いし、太い腕を差し出して告げる。

「ちょうど良い所に来てくれたジェノサイドカプリース! さあ共に手を取り我々二人でジャガックの宿敵を潰してやろうではないか!」

 ヘルメットの中で冷や汗をかきながらカプリースの出方を伺っていると、顔に手を当てて仮面を剥がす仕草をし、アバター態がステンドグラスのようになってからすぐに粉々に砕けて中からサイが現れた。

「戦闘アバターを……解除しただと⁉」

「おお! そうか! さすが血の嵐を呼ぶ者と呼ばれるだけはある! こいつら程度アバターを使わずとも余裕という事だな!」

「チッ」

 あの笑顔を浮かべたままサイは舌打ちし、細めた横目でパテウの方を見る。

「さあやろう! 共に虐殺の限りを……」

「――んだよ」

「ん! 何か言ったか!」

 次にサイが繰り出した言動は、この場にいる全員が予想だにしなかったものであった。

「うるせぇつってんだよ」

 口元には笑みを浮かべたまま目には怒りを宿した奇妙な表情を浮かべたサイは、なんとパテウに向かって手を翳し白い電撃を放ったのだ。

「なっ⁉」

「何をす……」

「うるせぇつったのが分からないのか、ちょっとで良いから黙ってろ」

 そのまま続けざまに冷気を放ってパテウを氷漬けにし、吐き捨てるようにサイは言った。

「有象無象の分際でボクに話かけるな、殺されなかっただけありがたいと思え。さてと、はははっ、邪魔虫が消えたし話をしようか」

「話ってお前……」

「そんなことしていいの?」

「んふふ、ボクは気紛れな先触れの風だから。まあいい、話をさせてくれ。今から五千年前にボクが出会った敵の話さ」

 背中に吊った刀を取りながらサイは続ける。

「ボクは完全なる無痛症の回復能力を持つ奴と戦った、奴は痛みを知らないしその上怪我もすぐ治るから数日がかりの長期戦を強いられると覚悟した。だけど勝負は意外とあっさりと着いた、なんでだと思う?」

 知るかそんな事と内心思いつつ、この何をしでかすか分からないトリックスターを前に思わず考えてしまう。

「ヒントはボクは道具を使った。凍った金属の塊だね、最終的に奴は心臓が砕けた。さあ君ならどうする」

 無痛症の回復能力者にサイは道具を使って打ち勝った。つまりそこにヒントがあるという事。

「……ああ、そうか! そういう事か!」

「おお、気付いたようだね。じゃあもうやるべきことはわかったね!」

 サイのフィンガースナップと共にパテウが氷漬けから解放され、先程以上の大声でサイに抗議を始めた。

「貴様ァ何を考えている! 依頼主である我々に牙を剥くとは何事だ!」

「楽しみにしてるよマグナアウル、君があのブリキの木偶の坊をどう料理するのか」

「話を聞け! 無視をするな!」

ピーコック()オストリッチ(強化装甲)

 右腕に強化装甲を装着し、左腕に盾を構えると、盾をクインテットの方に向けた。

「お前達、全力でこれに攻撃しろ」

「え、正気?」

「作戦だ、これであいつをどうにかできる。ただしくれぐれも俺には当てるなよ」

 五人は首を傾げつつ、フルチャージを発動して斬りつけ殴り撃ち抜いて、思いつく限りの攻撃を盾にぶつけた。

「これでいいの?」

「上等、お前らの攻撃、俺が届けてやるからな」

 仲間にも敵にも無視され続けたパテウの堪忍袋はもはや細切れ。雄叫びを上げると全身全ての砲台を出現させ、無差別砲撃を始めた。

「許さん! もう怒った! 俺様を怒らせるとどうなるか思い知るがいい!」

 宙を飛び交う無数の弾丸の軌道は全てマグナアウルの念力によって操作され、正確に盾へ吸い込まれていく。

「全く、半端に強いアホってのは一番始末に悪い。そうは思わないか?」

 世間話をする調子でいきなり話を振られたクインテット達は首を傾げるしかない。

「こんなもんか! セイッ!」

 一瞬砲撃が止んだ隙に投擲された盾がパテウに張り付き、そこに強化装甲を纏ったマグナアウルの右拳が突き刺ささるも、パテウは微動だにしなかった。

「!」

「これは……まずい?」

「入らなかったのね……」

 しばらくマグナアウルもパテウもそのままの姿勢だったが、正確には三十五秒後、一際の大音声が周囲に木霊した。

「アアアアアアアアッ! いてええええええっ! なんだこれはあああああっ!」

「あいつらの攻撃とお前の砲撃、そして俺の強化された正拳突き、その全ての威力が全部お前の体の中に浸透したのさ。これはお前を砕く技じゃない、内側から痛めつける技だ!」

 パテウは全身を掻きむしりながら地面を転がり、恨めしそうな目で三者を睨んで怒鳴りつけるように吐き捨てた。

「覚えておけ! 宿敵よ! そしてジェノサイドカプリース! 貴様もタダで済むと思うなよ!」

 パテウが簡易ワープ装置でどこかに去ったのを見届けたマグナアウルは、心底嬉しそうに笑うサイの方を振り返る。

「これで正解だろ? お前はその敵の体に〝凍った金属片をぶちこんで〟倒した」

「ご名答! よくやった」

「う……うーん、どういう事かな?」

「回復能力の原理は新陳代謝の加速、だから凍ればそれが止まる。マグナアウルはそれから着想を得て、硬い外装の内側に留まり続ける衝撃を送って倒したって事?」

「ルナちゃん百点満点~! よくできました~!」

「やめて馴れ馴れしい」

 相変わらず笑顔のサイに強化装甲を外して投げ捨てながらマグナアウルが聞いた。

「なんで助けすようなマネを?」

「えぇ? 君達が強くなると僕も楽しいからさ」

「答えになってない」

「そう? じゃあまあ、気紛れって事にしといて。フフン」

 指をくるくるとまわし、エスニック風のゆったりとした布地を靡かせてくるりとその場で一回転すると納刀状態の刀を肩に掛けた。

「さてと、ボクはもう行くよ、依頼主に金額を見直すように要求するつもりさ。じゃね」

 手を振るとサイは瞬間移動で消えてしまい、残された六人は大きく溜息をついた。

「気紛れも程々にしてほしいものね」

「そうだな……そうだ、一つ言っておかねば」

「ん? 何?」

「高校生の集団を保護しただろ?」

「あ、ああ! そうね」

「感謝する。では」

 それだけ言うとマグナアウルはマントを広げ、星空に向かって飛び立って行くのだった。


 帰りの車の中でぼんやりと外を眺めている奏音に明穂が声を掛けた。

「どうしたの奏音ちゃん?」

「私もマグナアウルにお礼言っとけば良かったって思ったの」

「お礼ってなーに?」

「彼どうも、京助の事を助けてくれたみたいなんだ」

「そうなんだね! じゃあどうやって連絡すれば……」

「でもなぁ、次会った時は当たり前のことをしただけとか言いそうだし……そう考えるとモヤモヤしちゃって」

「じゃあさぁ、帰ったら京助君に連絡してみたら?」

「どうして?」

「まあその……受け売りなんだけどさぁ、人から受けたいい事を別の人に別の形で渡すのっていうのがあるみたいなの」

「……それいいかも、ありがとね明穂ちゃん」

 早く帰って京助と話すのを楽しみにしつつ、奏音は微笑むのであった。


To Be Continued.

我らが委員長(委員長ではない)の波川樹ちゃんが久々に登場です。

そして敵陣で繰り広げられるニアミス、一歩間違えれば互いの正体が割れる所でした。

さて、今回は夏と言えばという事で、少々ホラー風味にしてみました。

散々ホラー好きのキャラが登場しているのでこういうのもやっておかないとね。

でも結局宇宙ギャングとの殴り合いになります、そういう作品なのでご愛敬。

そしてサイはどこへ向かうのでしょうか?

感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメをよろしくお願いします。

ではまた来週お会いしましょう!

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