2.邪神の選定
深い闇に包まれた空間。光はなく、ただ静寂だけが広がる。
アルト・ヴェルナーは膝をつき、荒い息を吐いていた。
彼の前には黒き玉座がそびえ立ち、その上に邪神ルシアが優雅に腰を下ろしている。
「……やっとここまで来たのね、アルト・ヴェルナー。」
ルシアは薄く微笑んだ。その笑みには慈愛も冷酷さも混ざっている。
「貴様が……邪神ルシアか。」
アルトは鋭い目つきで彼女を睨む。しかし、ルシアは動じることなく、まるで彼を試すように言った。
「あなたは何を求めてここに来たの?」
アルトの脳裏に、燃え盛る村の光景がよみがえる。
父と母の叫び声、妹の泣き声――そして、全てを奪った人間たちの冷笑。
「俺は……復讐を果たすためにここに来た。」
拳を握りしめ、低く呟く。その言葉に、ルシアの瞳が妖しく輝いた。
「ならば、私の力を授けましょう。ただし――」
ルシアは玉座から立ち上がり、アルトの額に指を当てる。
「私の意思に従うこと。それが代償よ。」
アルトの身体が黒き光に包まれ、未知の力が流れ込んでくる。
「契約は成立したわ。これであなたは、私の“選ばれし者”よ。」
邪神ルシアの祝福を受け、アルト・ヴェルナーは新たな力を手に入れた。
だが、その先に待つ運命は、決して安易なものではなかった――。