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ふたり
「これ、なあに?」
相手が触れてくる。
「左の目」
「これは?」
「右。でも要らない」
「なぜ?」
「だって、涙も枯れたもん」
「これは?」
「鼻も要らない。匂いを嗅ぐこともないし」
「これは?」
「口もね。もうキスできないから」
「これは?」
「耳も。声も聞けないから」
「全部必要なくなったのね?」
「うん。何もかも」
「じゃあ、いい?」
私は頷く。
「いいよ」
すぐに、相手の顔が苦痛で歪みだす。
同時に私の……
鏡の中の私の顔も……