7話
「じゃあ、なるべく早く委員会を終わらせて部活来いよ」
「わかったよ、また後で」
ついに運命の委員会がやってきた。今後、明るい未来が送れるかどうかはこの委員会にかかっていると言っても過言ではない。
まずは彼女に話しかけなければならない。できれば一緒に集合場所まで行きたい。
彼女に視線を向けると、ちょうど友達と分かれて一人になったところだった。
チャンスだ、今しかない。
震える手と声を抑えるために深呼吸をした。
「あの、梅田さん」
「あ、はい」
彼女と目があった。
思わず体温が上がる。
「俺、同じ保健委員の杉原。もしよかったら、一緒に保健委員の教室まで行かない?」
俺にしてはいい感じで誘えたと思う。でも、もしここで断られたら俺の高校生活の全てが終わってしまう。
頼むから断らないでくれ、と神様に願った。
「ああ、うん、一緒に行こう!私、三年生の教室ってどこか分からなかったんだ」
もしかして神様は俺のことが好きなのかもしれないと思った。
心の中で全力でガッツポーズをしながら教室を出た。
「梅田さんは、確か写真部だよね。放課後は部活とか大丈夫なの?」
「うん、部活って言ってもほとんど活動してないんだ。カメラは貸してくれるんだけどね」
「あ、そうなんだ。俺は写真あんまり詳しくないんだけど、興味はあるんだ」
「そうなの?面白いよ、カメラって」
想像していたよりも随分自然に話せている。
一年前に一目惚れした相手と、会話をしながら廊下を歩いている。
一年前の俺が見たら、泣いて喜ぶのかな。いや、流石に泣きはしないか。
「これからよろしくね、杉原くん」
優しい笑顔で俺の名前を呼んでくれた。前言撤回する。きっと一年前の俺が現状を見たら、泣いて喜ぶだろう。
もう今すぐにでも泣いてしまいたいぐらいだが。
三年の教室には既に担当の教師や他の学年の生徒がいた。
黒板に書かれた座席へ向かい、座った。梅田さんの隣に座れるなんて夢みたいだ。
委員会では、今後の具体的な活動内容や他の委員会メンバーの紹介で終わった。
話は何も頭に入らなかった。というか、もう今日は梅田さんの話以外頭に入れたくなかった。
「杉原くんは、このあと部活?」
「うん、部活に少しでも顔出さなきゃいけなくて」
「そっか、じゃあ部活頑張ってね」
そう言って梅田さんは教室を出ていった。
余りにも儚い時間だったな。
想定していたよりは話せた気がする。だが、だからこそもう少し一緒にいたいという気持ちもあった。
ずっと上がっていた体温が下がっていく感覚。まだ夢のようにふわふわしている。
もう少し、もう少しでいいから、話してみたい。