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紋章都市ラビュリントス *第四巻構想中  作者: 創作
第四幕_THE GIRL OF HOLY GRAIL

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五十六記_発掘屋

 ——ニ〇ニ四年八月二十三日、大和支部、歩夢宅

 オルトロスとの戦闘で飛躍した冒険者スコアのこともあり、基準を大幅に超えた層は生態系の把握と各種敵生体との戦闘勘の修得など要所のみを押さえて先に進んでいる。現在の攻略ペースは一週間に一層。すでに四層、五層と下っていた。今日から潜るのは上層域第六層である。

 「イブさん準備は大丈夫ですか。カードホルダーは持ちました?マイヤさんは…私たち待ちですね」

 「お姉ちゃん、毎日確認しなくてもイブ、大丈夫だよ」

 「だそうです。シャーロットさん、俺も構いすぎは良くないと思いますよ」

 しかし、この光景は歩夢と彼女のやりとりを思い出す。シャーロットさんは昔から世話焼きだった。もしかしたら歩夢が日々色々出来なくなっていくからそうなったのかも知れない。

 「じゃあ、お姉ちゃん、お兄ちゃん。行ってくるね」

 感慨に耽っているとイブの可愛らしい声が響いた。

『歪曲の紋章よ、理の外に存在せし獣を今一度解放し、眼前に彼ノ地へ続きし扉を開かん』

 イブが口上を口にすると空間にひずみが生まれ、それが大きくなっていく。これは岬武具店と連結している紋章だ。イブを預けることが決まったその日の帰りに渡されたものである。

 「マイヤ、行くよ」

 イブの声に反応して、猫さんは彼女の元へと歩いていく。足元まで来るとイブに抱き抱えられた。

 「じゃあ、行ってきます」

 イブが亜空に踏み込むと、空間を円形に歪めていたそれはふつと消えた。

 「私たちも出かけましょうか」

 「はい」

 俺は左手に宿る新しいグローブを強く握る。右手と同じようにオルグに刻印してもらった紋章が手の甲のスリットに収まっている。そう、随分前に頼んでいた『水の紋章』だ。

 グローブとカードホルダーを確認すると二人で家を出て冒険者組合に向かった。

 「『鳴門支部』に足を運ぶのは聖堂事件以来ですか」

 「そう…ですね。あれからもう一ヶ月ですか」

 天を仰ぎながら応答する。オルグに紋章作ってもらって、三層に進出して、その日に黒狼とオルトロスと戦って。イブにあって保護して、それから歩夢宅の改修があって、四層、五層を踏破して…。

 …並べて見るととんでもないな

 一、二層を行き来していた一ヶ月間と比べると密度が桁違いだ、

 「そういえば、今日はオルグの言ってた発掘屋(テリア)?でしたっけ。その人も一緒に探索するんですよね」

 唐突に思い起こしたことを口にする。

 「そうです。私も探さなければとは思っていたのですが、伝手もなく手も回らなくて…。オルグさんが気を利かせてくれて助かりました」

 発掘屋(テリア)。元は冒険者に付き添って落とし物や古代人の遺物を拾って生計を立てる人々を指す言葉だったらしい。しかし、時代に則してあり方は変わり、今では冒険者をサポートする万屋(よろずや)という認識になっているようだった。

 「でも、テリアって今いるんですかね」

 オルグの説明を思い起こしていると疑惑が生まれた。正直、これまでの探索で手が足りないと思ったことがなかったからだ。

 するとシャーロットさんは手の仕草を用いながら丁寧に話してくれた。

 「新さまの言う通り今は必要ありません(・・・・・・・)。基本的に探索自体、日を跨いでやるようなこともありませんから。主に発掘屋(テリア)が必要になるのは中層に下ってからです。ただ急に必要となって連携が即座に取れるでしょうか」

 …なるほど

 つまりは必要になった時に連携が取れるように上層域にいるときから一緒に冒険をしておくということだ。そっちの方が互いに信用も信頼もできる。

 「納得がいきましたか。急ぎましょう、相手はもう着いているかも知れません」

 「そうですね」

 俺たちは会話を終えると、足早に冒険者組合に向かった。


 「おそらく、この辺りだと思うのですが…」

 シャーロットさんは不安そうに呟く。オルグに聞いた集合場所は冒険者組合「大和支部」の噴水前。冒険者の待ち合わせの場所としては定番で、今日も賑わっているものの待ち人の姿は見られなかった。

 …もう九時。約束の時間…だけど

 その時だった。

 「おいっスー。新くんにシャーロットさんスね!」

 背中には胴を埋めるほどの大きさのリュックサック。だが、それをモノともしない軽い足取りでその人は呑気のんきに手を振りながらやってきた。

 「ども。発掘屋テリア見習いやってます、楠木晴人(はると)です。今日からお世話になりますっス」

 …軽い

 始めに受けた印象はそれだった。悪い人のように見えないのだが、どうもいい感じを抱けない。ただこのタイプでもデキるやつは存在する。偏見は良くない。

 「オルグさんから紹介されていますと思いますが…、改めて。私は彼の指南役のシャーロット・ローレンス。彼は…」

 「俺は山神新。よろしく、楠木」

 …しまった

 そう思った。それとなく年が近そうに見えるからか初対面にも関わらず、タメ口を使ってしまった。

 「よろしくっス。シャーロットさん、新くん」

 しかし、それは取り越し苦労だった。彼は特段気にせずに順に俺らと握手を交わす。あまり形式的なことにこだわるタイプではないみたいだ。

 「それで、今日はどこの層っスか」

 合流後、冒険者組合の転移広場に向かう最中、雑談もそこそこに本題に切り込んできた。

 「上層域六層です」

 「あ〜了解っス。…もうそこまできたんすね。オルグさんから話は聞いてたっスけど…」

 シャーロットさんが素早く答えると少々天を仰ぎ、何やら考え事をするような間を置き、驚いたような表情を浮かべた。その後二、三身の上話をしながら、冒険者組合の転移広場へと向かった。

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