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紋章都市ラビュリントス *第四巻構想中  作者: 創作
幕間_平凡な日々

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五十記_仲よし

 楽しげば笑顔を浮かべるイブと香織さん。

 第一印象が悪かったのにここまで距離が縮まっているのは何故か。

 俺は気になって傑さんに一度断りを入れてから彼女のいる方へ行くと、イブがこちらに気づいて手を振ってくる。

 「あ、お兄ちゃん」

 手を振り返しながら、香織さんに話しかける。

 「どうしたんですか…?」

 「実はね、私が作業してたんだけどさ。この子気になったみたいで」

 「香織に聞いたの、『なーに』って」

 初めは怖いお姉さんという認識からか、遠目に見ていたらしい。ただ徐々に自分の興味が勝り香織さんに話しかけたみたいだ。

 「それで今、魔石とか鉱石とか宝石とか見せながら話してたんだ。イブちゃん、他の子みたいに勝手に触ったりしないからさ。助かるよ」

 「これもらったの」

 イブが首にかけている紐を摘むと、胸元で煌びやかな石が光を反射した。

 「いいんですか、もらっても」

 「ああ、それ。いいの、いいの。今朝カッティングの練習で使っただけだから」

 テーブルに転がっているものにイブが興味を持ったことからそれを細い紐で編んでペンダントにしたらしい。

 そして、ここぞとばかりに俺は聞いた。

 「イブ、香織さんに君の髪を切ってもらおうと思ってるんだけどいいかな」

 「うん!香織にやってもらう〜」

 「よしきた!じゃあ、イブちゃん散髪の準備しよっか」

 イブはそれに頷くと香織さんの膝の上から降りる。その時、右肩を大きな手が覆った。振り返ると傑さんとシャーロットさんがこちらにきているのがわかった。

 「新、お前も採寸な」

 「それじゃ、イブ」

 「じゃ〜ね」

 俺たちは案内されるまま別々の部屋へ。どうやら宝飾を取り扱う区画と扉を隔てるとそこが美容室になっているらしい。シャーロットさんはイブに付いて行った。俺は傑さんに連れられて以前と同じ、鎧ひしめくあの部屋に案内された。

 「…おお、ちょっとデカくなったか」

 洋服から鎧を着る時のインナーに着替えると早くも採寸が始まる。

 「…まぁ。ここ一ヶ月ぐらいは筋トレもしていたので」

 「たまにいるんだよ。新みたいな一足飛びに強くなるやつ。前見た時は『こんな細いのがヤれんのか』なんて思ったけど、案外強くなるモンだよな〜」

 受け答えをしながら、彼は鉛筆でメモして着々と作業を進める。大体の測定が終わると既存の鎧で似た作りのものを試し、防具の形を決める工程に移った。

 「…新は剣士型なんだけど、所々細剣士(フェンサー)入れた方が良さそうか?いや、ここは…」

 傑さんはブツブツと呟きながら俺に武具を着せては感触を聞き、首を傾げる。それを繰り返しているうちに床は鎧で足の踏み場もないような状態になる。

 …前はすんなり決まったのにな

 「不思議か、新。前よりだいぶ時間かかってるだろ?」

 顔に出ていたのか、傑さんは鎧を他所へと放り投げながら話しかけてくる。

「…前に渡したのは『ビギナー用』。いっちまえば、ある程度決まってるわけだ。でも今回は違う。今から作るのはオーダーメイドだ。新、お前も気づいてんだろ。三ヶ月も戦ってれば、嫌でも癖が出てくる。それに合わすのも俺らの仕事なわけよ」

 その後、防具が体に沿うようになると今度は実際に動かしてみての感覚を詰めていく工程に差し掛かる。狭い部屋の中でやるわけにもいかないので店の一角を片付けることになった。その時、傑さんは「もっと店がデカけりゃな〜」なんて口に零していた。

「…どうだ新」

「大丈夫だと思います。可動域も確保出来ていますし、防具の形から何か違和感を感じるなんてこともありません」

 取り出していた剣を鞘に納めて、再度腕を回したり屈伸をしたりして鎧を感覚的に確認する。すると傑さんは口角をクイッと上げて、満足そうに声を上げた。

「よし、よし。出来るまではダメそうなところはウチの鎧貸すからな。とりあえず、籠手と胴回り、っと」

 傑さんが一度あの鎧部屋に消えたかと思うと中から外に複数の防具が投げられた。

 「とりあえず、探索行く時はそれ着とけ。ああ、別に壊したらとか気にすんなよ。お前が怪我する方がやばい。いつも通りで大丈夫だ」

 彼は大きめの木箱を持って例の部屋を出ると、武具をそれに入れてこちらに持ってきた。

 「ありがとうございます。何から何まで」

 「おうおう。そう思ってくれんのなら、今後も店を贔屓に頼むぜ」

 それから鎧の転がったあの部屋を二人で片付けていると店内に大きな声が響いた。

 「お兄ちゃ〜ん‼︎」

 イブの散髪と髪染めが終わったようで香織さんの宝飾店、その奥の扉が開く。店内のソファに座っている俺を見るや駆け寄ってくる。

 「見てみて〜」

 「似合ってるね」

 徐に彼女の頭に手を伸ばすがその手は空を切った。イブはが素早く身を引いたのだ。

 「触ったら、ダメって香織が言ってた。髪質?っていうのによくないんだって」

 手持ち無沙汰になった右手を引いて、再び膝下に戻す。

 …それにしても赤毛か

 夜闇色が好きなのかと思っていたがそんなこともないらしい。小さい子に関わらず、気変わりが早い人はいるし…もしかしたらイブはそういう子なのかもしれない。

 眼前で飛んだり跳ねたりしながら、全身で嬉しさを表現する彼女を注視していると遅れてシャーロットさんと香織さんが奥の部屋から出てきた。

 彼女が香織さんと会話する折を見て、鎧のことを話すとオルトロスの遺骸売却から解体手数料とイブの美容室代を引き、残った残金を受け取って店を後にした。

 「次はイブさんの生活用品ですね…」

 シャーロットさんは歩きながらポケットから四つ折りにした紙と取り出して、あらかじめ書き記した『必要なものリスト』に目を通す。

 「ねえねえお兄ちゃん、お姉ちゃん何見てるの?」

 何となく繋いでいた手を引いてイブは俺に話しかけてくる。

 「ほら、今からイブの服とか食器とか椅子とかそういうのを買いに行くからさ。それの確認をしてるんだよ」

 危うく『生活用品』と雑把にまとめそうになったのを言い直してイブに伝える。その時、どこからか腹の虫が聞こえた。気持ちが早っていても胃は正直らしい。若干先行していたシャーロットさんは足を止めると別のポケットから懐中時計を取り出して開くと再び仕舞う。

 「お洋服屋さんの前に先にお昼にしましょうか」

 「……うん」

 あまりに大きな音がしたからか、イブは頬を赤らませて頷いた。

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