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紋章都市ラビュリントス *第四巻構想中  作者: 創作
第二幕_手の届く理想
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百七記_一年半越しの来訪者

 「さ、新くん。料理し始めようか。僕もさばくのは手伝うよ」

 それを発端にバロンの意見を参考にしながら、シャーロットさんと今日の献立を考え始める。話の合間でいつの間にか楠木がいなくなっていることに気づき、辺りを見回すと調理場に彼の姿を発見する。ちょうど薪に火を焚べ、熾火を作り始める所だった。よく見る光景だ。楠木は自身が手持ち無沙汰だとよく他のことを手伝ってくれていた。

 視線を卓上に戻し、シャーロットさんとの話し合いをした結果、「バジルペーストを塗った白身魚焼き」と「レタス、パプリカ、玉ねぎ、ビーツのサラダ」それに主食の「バゲット」を加えた献立に決定した。それが決まると机の上に食材を用意、またその半分でまな板を敷いて魚を捌けるようにする。シャーロットさんとバロンが魚の捌きを、イブがバジルペーストを作っている間に俺は二枚の金網を持って楠木のところまで行く。

 「楠木、ありがと。今日焼き魚だからコレ」

 「おう」

 彼は受け取ると金網に折りたたまれている脚を展開して丁度いい位置につける。

 「頃合い見て、魚持ってくるから」

 一言そう言うと楠木は頷きを返してくる。その目は火を見やっており、熱さから額には汗がにじんでいた。右横には幾らか薪が積まれており、既に火消し壺の用意もあった。用心深い彼らしい。

 「それじゃ、頼むよ」

 「あいよ」

 彼の背に言葉をかけてからテーブルの方に戻ると、俺は付け合わせのサラダの作成やバゲッドを食べやすい大きさに切り分けたり、ケトルで湯を沸かしたりしながら、卸された魚にバジルペーストを塗ってから楠木のところに届けるなど雑事に時間を費やした。

 それからしばらく食卓の準備を終えて席に着く。一年半同じ食卓だったに来訪者がいるのは新鮮だった。

 「「いただきます」」

 「いただきまーす」

 「いただきます!」

 「……」

 挨拶するや否や、がっつくイブと楠木。バロンは両手を組んで目を瞑り、それから手を解き、食事し始める。

 「そういえば昨日から思っていたけどさ、君たち…少なくとも楠木少年と新くんは日本人だよね。和食はあまり取らないのかい?」

 そこで俺は首を傾げる。思い出すのは洋食の食事ばかりだった。ラビリンスに来たばかりの頃に洋食を食べる習慣がついて割と現在に至るままでそのままだ。上層域七層にある穀倉地帯で米を買ってはいるものの、イブに『和食』をせがまれた時に使った記憶しかない。

 「あんまり食べない…かな。ラビリンスはパンの方が物価が安いから」

 「そうなんだ。…因みに作れたりするかい?」

 覗き込むようにいうバロンに首肯する。

 「まあ、一応は。一人暮らしてたから大抵は大丈夫」

 「じゃあ、今度お願いしてもいいかい?実は僕、日本食食べたことないんだよ」

 俺の答えに彼は顔をぱっと明るくする。よほど興味があるらしかった。

 その食事中、バロンから『レジスタンス』の詳しい状態と今後の計画を共有したいという話があり、片付けをしてからその席を設けることになった。


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