或る少年の話
或る少年がいた。今日はテストの出来が一人だけ悪く再テストを受けていた。テストを解き終わり、気づくと日が傾いている。紺色のランドセルに日が当たり赤色に染まっている。 この日は夏特有の熱気と謎の肌寒さが混じり合って気持ち悪い。
いつもと変わらない日々と帰り道。なのでいつもは右を曲がるところを左に曲がり遠回りして帰ることにした。
「どうせどっちから行っても帰れるしね。」
普段行かない道に少しだけ戸惑いながらも今までなかった景色を楽しみながら歩く。その時、家と家の間に細道があることに気づいた。何故かこの道が気になって仕方がない。ただの20m位の道なのに。
少年はこの道に入ることにした。何処にでもあるような普通の道なのに吸い込まれるように歩いてしまう。日は確実に落ち始めている。
少年は無意識に歩いていたが、ようやく異変に気付いた。どれだけ歩いても向こうに着く気配が無いのだ。もしかして寝ぼけていただけかも知れない。後ろを振り向くと地の果てまで1本道が続いていた。どんどん暗い空が迫ってくる。
少年は前へと走り出した。走れば出れるかもしれない。少年は走り続けた。ずっとずっと。
少年が消えたのは24年前、まだ家には帰っていない。