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第六話~転院する、変化する~

「やべぇ!!!入院の荷物渡してきてないじゃん!!!」


 これに気が付いたのが転院当日、説明を受けることが出来ず釈然としないまま家に帰ってからである。

 何となくトランクルームがガタガタというので開けてみるとそこには先ほど台車が使えず渡すことのできなかった入院に必要な荷物一式がそのまま取り残されていた。


 これには流石に焦った。

 仕事に行く時間も差し迫っている中、この荷物を届けている暇はあるだろうか。

 時計を見て時間を計算して、今から行動すれば時間はギリギリ間に合う。そう信じて行動を開始。

 制服に着替えて、食事をとって、身支度を済ませ、戸締りをして家を出る。


 リハビリセンターについたらもう迷ってはいられない。

 受付で台車を散々確認して借りて荷物を搬入。なんとか仕事には間に合う時間で終わらせることが出来た。

 その間、一応様子を見よう。あわよくば説明が終わっているなら父を連れて帰ろうと思い先ほど通された部屋へ行ってみると、ぽつんと一人座る父が。

 ちなみに、時間は12時少し過ぎである。


「あれ?12時からの説明じゃないの?」


「そんなわけねぇべ、大体医者ってのは人を待たせるのが仕事だ。間違いなく13時頃になるさ」


「おおう・・・朝早かったし飯も食ってないだろ、大丈夫か?」


「大丈夫だ、まずお前は仕事行ってこい」


 と、父親に言われたので心配ではあったが、この日は出勤した。


 この日は21時までの勤務だったので、17時頃に休憩になったため妻に連絡。


『帰ったら親父の様子見ておいて』


 妻は18時までの勤務だったので私よりも早めに帰ってくる。

 丁度私が休憩を開けるころに店を出て徒歩で帰るため18時30分には自宅に戻るため父の様子を確認してもらえれば、とお願いしておいた。


 予想通り18時過ぎに既読と『分かった』という返事があり、私は安心して仕事に戻った。

 運転をする仕事の都合上、これ以降終業までスマホを確認することが出来なかった。


 終業後、私はスマホを確認すると、そこには妻からの連絡が。


『お父さん、調子悪いみたい、ずっと寝てる』


 すぐに妻に連絡し、状況を確認する


「今見たわ、親父どうした」


「うん、なんか気持ち悪いって。調子悪いって寝てる。熱はないみたいだから大丈夫だと思うけど・・・」


「まじか。ご飯は?」


「食べてないと思う、一応おかゆとか出したけど手つけてない」


「分かった、すぐ帰るから」


 電話を切って、仕事の後始末もそこそこに急いで家へと向かった。


 家に帰ると、父と母親が生活していた部屋の前で心配そうな妻が。

 ひとまず確認のために扉を開けると、体調が悪そうな父親が布団で寝ていた。


 まだまだこの頃は新型コロナウィルス全盛期。

 感染症の可能性もあるので体調が悪い、というのは正直この時結構怖かった。


「どしたよ、親父。調子悪いって?」


「んだ。ほら病院で説明きいてきたけど、あれの説明始まったの結局14時でよ。飯も食わねでずっと待ってたから帰ってきてから気持ち悪くなって寝ったったんだ」


「は?12時からとか言ってなかった?」


「けーっきょく14時からで帰ってきたのも16時すぎ位だ」


 まじかー・・・となった。

 そもそも最初の時間の約束すら守ってないのにそのあと遅れに遅れて14時から説明開始だったらしい。

 その間あの部屋でずっと待っていたという父。正直この辺りで病院への不信感が私の中で高まっていった。

 いくら何でも流石に待たせすぎだろう。

 やはり無理にでもあの時説明を早めて貰えばよかった、と後悔した所である。


 結局この後父親は暫くの間調子を崩し、新型コロナでは無かったもの2~3日寝込んでしまった。



 そして来る12月。繁忙期。

 日にお歳暮やクリスマスなどのイベントが重なり、しかも今年は大手通販サイトも挙ってセールを行ったため、配達量が例年の倍以上となったため、地獄の日々が続いた。


 そんな中、私たちは入院した母親と一人になった父という生活の変化もあり仕事でも家庭でも地獄を迎えることとなった。


 平日は仕事、休日になれば買い出しと共に病院へ行って洗濯物を受け取り、それを洗濯。次の日搬入という休日でもゆっくりできるのが寝ているときと日中4時間ほどという生活が続いていった。


 そこに来て迎えたのが、食料品の物価高騰と、燃料費の高騰である。

 私が住んでいるこの地域は雪国だったので暖房はもちろん、冬の間は除雪機が稼働しガソリン代もかなりの値段掛かってくる。

 流石に父一人だけとはいえ、私たち二人の収入だけでは賄えない。

 そのことを父に相談すれば


「んじゃぁお前ださ、おらだの年金の管理任せっから、そっから降ろして生活費にしてけろ」


 と言われたのでそこから父母の年金の管理が増えた。

 管理、といっても妻と話し合い「必要最低限しか引き出さない」「出来るだけ我々二人の収入で賄う」という事を決めもし引き落とした時はその明細を父に見せ、いくら落としたか、残りはいくらかというのを必ず説明するということにした。


 出来るだけ使わない・・・という方針にしたのも、母親の入院費の事も考えてであった。

 この時の私はすっかり忘れていたのだが、リハビリセンターからの説明に「どのぐらいの入院期間か」というものが含まれていたはずである。

 それを説明されていなかった私は、母がどのぐらいの間入院するか分からなかったので出来るだけお金を残しておきたかった。という考えがあった。


 今考えてみると、やはり説明不足というのは不安でしかない。

 入院の際の説明は本当にしっかり聞いておかないとダメなんだと痛感する。


 この時点で、私個人の事情になるが「転職」と「母の入院」と「父の介助の一本化」というこの3つの事情の変化が重なったことで生活が一変し、それまで趣味だったゲームや、アニメなどに一切手が付けられないほど日々疲弊していった。


 正直、私自身この変化についていけず精神的に参っていたのかもしれない。

 母の入院、という転機は、我が家の生活を一変させたのだった。

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