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第四話~手術する、準備する~

 手術翌日からは日常生活へと戻っていった。

 私は大手運輸会社で配送の仕事をしていたので流石に4日間も仕事を休むと上司から連絡が入り翌日からは通常勤務に戻らざるを得なかった。

 寝不足のこの状態で仕事をするのはどうかと思ったが、上司からの圧と仕事をすることで私生活を忘れたかった、何も考える事も出来ないほど疲れてしまえばいいという考えから私自身も望んで仕事に戻った。


 ただ心配だったのは私と妻が仕事に出ている間、家で一人になる父の事だった。

 ここで木辺父について軽く紹介しよう。

 年齢は77歳。

 私が小学校の頃に緑内障を発症。その後頸椎の病気や腰椎の病気など様々な個所に病気を患い何度も手術。

 視力の低さから全盲というわけでないが弱視ということで障がい2級となっていた。

 その後たばこの吸い過ぎでCOPD発症。前立腺にも癌を抱えている。


 私は弱視の父のサポートを幼い頃からやっていた。やらざるを得なかった。

 今でいえばヤングケアラーという奴だろうか、重度ではないとはいえ体の自由が利かない父をサポートするのは現代以上に大変だった。


 まぁ、そのことはまた別の話なので割愛するとして、そんな父を一人家に残す。というのは本当に心配だった。


 幸い、自分の事は自分で多少やる。と思っていたのか自分で炊飯器に米を入れて炊いたりお風呂を溜めて一人で入ったりとそれなりに日常を一人で行っていたようなので心配ではあったがそこまでではないかな?と思っていた。


 母親が入院し、ようやく1週間がたったころ、またも問題が発生した。


 前記の通り父親は体に様々な病を抱えている。

 その為、数か月に一度様々な病院へ通院していた。

 かかりつけになっている市内の個人病院から総合病院、他市の大型病院にも通っていたのだが、これが奇跡的に全て同じ月に集中していたのだ。


 しかもどれもこれも定期通院で日付をずらそうと思って連絡しても


「流石に定期での検査ですので、出来れば通院していただかないと・・・」


 とどこもかしこでも言われる始末。

 今までは母親が運転出来ていたので基本は母が、都合が悪い時のみ私が休んで通院していたが、こうなると私一人で送迎しなければならない。

 しかも病院別で5日間もあった。

 惑星直列かなにかかよ!!とつい叫んでしまうほどには驚いた。

 既に休みを頂いている身としては言い出し辛い。

 上司が上司ってこともあったが・・・転職してまだ1年経っていなかったのでどうしようか本当に悩んだ。

 ちなみに、妻は免許は持っているがペーパードライバーで車の運転は一切行っていない。

 それに私の暮らしている地域は雪も降る。

 慣れない運転を、しかも雪道で運転して病院へ連れていけというのは無理な話である。


 これも悩みに悩んだのだが、結論ははっきりしているので休みを取った。当然上司には良い顔をされなかったが。


 配達という仕事の性質上、丁度年末の繁忙期を迎えようとしていたこともあり私のストレスはここらへんで既にマックスに近かったと思う。


 それでもなんとか、母親が帰ってくるまでだ・・・と自分に言い聞かせ日常を取り戻そうと頑張っていた。


 入院から1週間経過したころ、病院から連絡。

 リハビリセンターへの転院予定日の決定と、それに伴ってリハビリセンターから私の方へ説明を行いたいので連絡してほしいといった内容だった。

 ちなみに転院の日はなんとか私が公休の日でお願いしたかったのだが、病院側から頑なに断られ仕方なく午前中のみ休ませて貰う形をとった。


 仕事が忙しいこともあり、電話でソーシャルワーカーに連絡し転院の説明を受ける。

 主だったところは病院とあまり変わらず、転院の日までに誓約書や必要な書類を郵送するので記載してほしいということだった。

 それと同時にリハビリセンターで必要になるものを聞くとこれがまぁ・・・病院よりも多かった。


「まず病院での入院と違い、週2回の入浴日がありますのでそれに合わせてバスタオルとフェイスタオルを必要枚数だけご持参ください。あと、ティッシュペーパーや歯ブラシ、コップや櫛、鏡などの日用品も病院とは違いご家族様ご自身で用意していただく必要があります。リハビリする際の動きやすい服装、夜寝る際のパジャマも必要数ご用意していただく必要がございます。後は・・・床ずれ防止の保湿ローションや紙おむつなどの消耗品のご準備をお願いします」


 正直電話越しで聞いたのが馬鹿だったと思うぐらいの量のものが必要だった。

 必死にメモを取ったが、抜けている可能性があったので誓約書を送る時に一覧にしたものを送ってもらえることになった。


「着替えもタオルも「必要数」って事なんですが具体的にどのぐらいってありますか?」


「入浴日の後に洗濯物が出ますので、そちらをご家族様で回収して洗濯していただいてそれをまた持ってきて頂くという形をとっていますので・・・ご家族様が回収に来ていただける頻度にもよるとしか言えないですね」


 ははぁ・・・となった。

 確かに頻繁に回収して洗濯→搬入出来ればそんなに枚数を用意しなくてもよいがそれが出来ない場合は多めに持っていかないといけないわけである。


「なお、受け渡し時間ですが・・・ご家族様から患者様に荷物を渡すのは9:00~17:00から可能なのですが患者様の荷物をお渡しするのは14:00~17:00と限定させて頂いております」


 これには流石に「えぇ・・・」と不満が声に出た。

 この3時間の間に取りに来なければ洗濯物を回収できない、ということは普通に考えれば平日のこの時間は働いている人が多いだろう。

 ということは実質回収可能なのは休日しかない、つまり週1回の回収になるのだ。

 そう考えれば、自ずと転院の際に持参する荷物の量が決まる。

 バスタオルは週に2~3枚使うとして、フェイスタオルは汗を拭くのにも使うだろうということで6~7枚。

 着替えは7日分用意して荷物を準備した。

 そのほかにも必要な日用品は100均で揃え、家にあった部屋着だけでは到底回せないので所謂スウェットという奴を何着か購入。

 受け渡しには蓋つきにバケツを使うということだったのでバケツも購入した。

 なお、ここで使った金額がガチャ100連分ぐらいだったと思う。


 ちなみにこれも恐ろしいのは、病院から連絡が来たのが転院5日前。

 仕事もあってリハビリセンターへ連絡したのが2日後だったので3日間の間で用意しなければならなかった。


 なお必要書類は本当にギリッギリで送られてきた。

 封筒で入りきらなかったのだろう、段ボールの小さな箱に入って届けられたのだった。


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